Mome Wonderland

Jester
ジェスター
キミはお茶会に必要なものは何か知っているかい?
紅茶に入れるミルク?スコーンにつけるクロテッドクリーム?
フフフ、一番のスパイスはとびきりの笑顔に決まってるだろう!
だからキミも遠慮なく、思いきり声を上げて笑ってご覧よ!
できなかったらボクが魔法をかけてあげる。キミが心から笑える魔法をね。
性別 / 身長 / 外見年齢 / イメージカラー
男 / 177cm / 24歳 / パライバトルマリン(#63A0A5)
好きなもの / 嫌いなもの
笑顔、お茶会 / 泣き顔、静寂
ファンタスマゴリアに響くハープやフィドルの音色に割り込む様な軽快な笑い声が聞こえてきたなら、この男の登場だ。街の入口から王城の天辺まで、どこまでも響き渡る高笑いと共にスキップしながら自由奔放に歩き回る姿はおとぎの国の住人なら誰もが知っている。誰よりも驚きと笑顔を求める生粋のエンターテイナーたるこの男、本来は女王の退屈を慰める役割を与えられた専属道化師のはずなのだが、王城に留まっている事は非常に稀だ。なんでもない日のお茶会が開かれていれば、どこからともなくやってきては堂々と居座る図々しさと人懐っこさを併せ持っており、誰かと出逢う度に挨拶代わりにあちこちで魔法を振り撒く事を楽しんでいる。握手を交わした掌から花を咲かせ、お茶会の席では帽子屋のハットをひっくり返して鳩を羽搏かせるのが日常茶飯事。噂では女王陛下の御前で首を刎ねられた事が有るらしいけれど、頭ひとつになっても自信たっぷりなニヤニヤ笑いを浮かべていたのも魔法の力なんだとか。おとぎの国の住人ではない隣人にとっては何が嘘かまことか信じ難い話だろうが、それでもこれだけは信じて欲しい。男はいつだって皆の笑顔を愛しているし、魔法を揮った後にはいつも周囲に笑顔の花が咲いている。それだけは、嘘でも偽りでもないほんとうのこと。
昔は無口で笑顔も浮かべない子供だった。物心がつく前に両親は離婚、母は息子の為にと昼夜を問わず働いていたため一人きりの寂しさを募らせる幼少期だった。誰も居ない家に帰る気になれず、暮れる夕陽を見つめて公園のベンチに座っていた時、通りすがりの手品師がひとりぼっちの子供を笑わせてくれた。単純なコインマジック、けれど無から有を生むようなトリックに笑顔を咲かせた子供は一瞬で手品に魅了される。やがてクラブ活動や独学で腕を磨いた子供は青年となり、高校卒業時に恩人たる手品師と再会しては弟子入りを志願。プロの手品師を志し、更に腕を磨いていった。元から手先が器用だった事、コツコツと練習を積み重ねる生真面目さを持っていた事が幸いし、短期間で実力を発揮した青年は活躍の場を広げてゆく。ただ、楽しかった。多くの人が驚きを浮かべ、笑顔を宿す瞬間が何よりも輝いて見えた。笑顔と出逢う喜びを知った青年は新しいトリックも次々と発明し、徐々にメディアへの露出も増え、何もかもが順調に思えた頃だ。とあるニュースサイトの記事がSNSで炎上した。顔は伏せられていたが、明らかに恩人と分かる何者かのインタビューだった。”あいつの手品は俺のパクリだ、インチキだ。”根も葉もない中傷と無粋なタネ明かしの羅列で炎上した日から、世界は一変した。──ショックだった。己の手品が盗作だと罵られた事より、師匠に裏切られた事より、観客の笑顔が嘲笑に変わった事が。以来、舞台に立つ度に足が竦んだ。簡単なトリックひとつミスをするようになり、やがて仕事が一つも来なくなった。だからコインでもトランプでも無く、己を消してしまいたいと月に願っただけの話。そんな愚かな道化師の嗤い話。
♪ 黒木 誠十郎(くろき せいじゅうろう)
♪ロールサンプル:A
それでは今夜も良い夢を!グッナイ!(夜の帷が下り、優しい静寂に包まれる刻。男は後方へ振り返ると高く片手を掲げ、しなやかに掌を回転させながら深々と住人達へお辞儀をする。「おやすみ、ジェスター。また明日!」と朗らかな挨拶が聞こえてくれば、顔を上げた男はにっこりと唇を弧の形に変えて彼らへと笑い返していた。天には煌々と輝きを放つ見事な満月が浮かんでいる。ちかちかと瞬く星の音符が穏やかに歌う、美しい夜だった。なんでもない夜のお茶会を終えた男は、星の瞬きに合わせて上機嫌に鼻歌を奏でながら王城へ到る石畳を跳ねてゆく。)フフフ、今宵も素敵なお茶会だったね!(カツカツ、カカカ。響く靴音はまるでカスタネットを鳴らす様に軽やかだった。回想するのは先程まで行われていたお茶会の事。卵男爵が主催だったから大半の時間は彼の自慢話か詩のお披露目だったものの、余興として己の魔法を何度も揮えたのだからとても満足していた。一番満足しているのは沼ウサギの藁の冠を薔薇の冠へと変える魔法だ。紅、ピンク、白、オレンジ。一瞬にして色彩溢れる薔薇を呼び出した瞬間、見ていた皆の驚く様子と言ったら!眼裏に焼き付いている笑顔を思い出すと、男は恍惚とした笑みを浮かべて月を仰いでいた。そう、今夜の天に輝く満月よりも、もっと歓びと煌きに溢れた瞳が沢山こちらを見つめていたね──などと振り返っていた瞬間だった。)……ン?むむむ?あれは一体、何だい?何だい!?(澄んだ光を放つ満月にすっと一筋の影が流れてゆく。夜遊び好きな蝶々が横切ったのかと思ったが、よくよく見ればその影は一つ頭に二つの腕、そして二つの脚を持っているように見えた。つまり、ヒトだ。しかしヒトが月から落ちてくる等、この住み慣れたファンタスマゴリアでは一度も聞いたことは無い。どういう事かと驚きと共に足を止めたのは、ほんの数秒のこと。)ヒトかな。ヒトだろうか?もしそうなら……ようし、確かめに行こうじゃァないか!(落下する影は石畳の道から外れた緑の向こうに消えてゆく。宵色のマントを翻すと、男は影が落ちた先を目指して足を動かしていた。初めは軽やかなスキップを刻んでいたが、やがて急げ急げと駆け出す足は時計ウサギよりも俊敏だったに違いない。きっと心が急いていた。満月から零れたヒトは、言葉を交わし共に時を過ごせる誰かであるだろうか。もしそうであるなら、そのヒトは今どんな顔をしているのだろうか。笑っている?それとも驚いている?まさかまさか、泣いている?溢れ出しそうな程の好奇心とひと匙の使命感を胸に、男は放たれた矢よりも早く駆けてゆく。)キミは笑っているかい?ボクにとって大事なのはそれだけさ!笑っているなら一緒に笑おう、そうでないなら──ボクが沢山、たぁくさん笑わせてあげなくっちゃねェ!(さあ、どんな出会いが待っているだろう。フフフンと奏でる鼻歌は足音と重なって、騒々しいマーチを奏でながらはじまりの舞台へと向かってゆく。そこには一体、どんな初めましてが待っているのだろう。誰も知らない驚きと喜びの予感に煌く笑顔は、今はまだ満月だけが知っていた。)