Mome Wonderland

Ethl
エセル
夢と言えば夢だよ。だってここには変化がないからね。
振り回してくるものはあるけれど、ずっと変わらない平穏。
だからこそここは自由で幸せだ。さあ、折角だから君に一輪あげよう。
今日一番のものなんだ。君らしいかたちが、ここで見つかるように。――ね?
性別 / 身長 / 外見年齢 / イメージカラー
男 / 178㎝ / 26歳 / Blue rose(#2b6898)
好きなもの / 嫌いなもの
音楽、花、空 / 騒音、煙
ファンタスマゴリアの西方には、柔らかい旋律の歌がどこからともなく響き聞こえる花園がある。その歌に誘われて足を運んだ先には、いつだって一人の男がいた。昼には鼻歌と共に花に水をやり、時にその香りを閉じ込めるように瓶に詰める花園の管理者。花と香りを育てている、といえばいかにも仕事のようだけれど、実際には鼻歌の方が男にとって本分のようなものなので手持無沙汰が板についているだけとも言える。眠そうな面持ちはいつものこと。けれどけれど適当に歌っているような鼻歌はいつだって繊細なメロディラインを奏でているし、その横顔はどことなく楽しげである。そして夜には、澄んだ声で昼間のメロディラインを辿るように歌う。響く歌声は花園にある噴水の水面に注ぐ月光のような透明感のあるもので、まるで子守唄のように優しい幸せな音。昼に眠そうなのは男がつい時間を忘れて夜にも歌ってしまうから、というのが理由だが改善される様子はない。花園の管理も歌も、好んでいるからこそ毎日飽きずに繰り返す日々。好む理由の一つにはどちらにも表情があるからだ、と語る横顔は少しだけ少年のような幼さがある。
深く染み入るような声の持ち主だった。静かな声は決して派手ではないがよく通り、支えるような安心感を与えるもの。クリアな響きの歌声は、主旋律や高音域の評価もさることながら何よりそのハモリ、コーラスの安定感が特に評価を受けている。柔らかな声で歌うバラードは甘く切なく、澄んだ声で青春を歌えば吹き抜ける風に花びらが舞ったような爽やかさ。生まれ持ったその声を活かすように歌を嗜み、いつしかそれが楽しみに変化していけば歌手・青嵐雅月が生まれるのは自然なことだったのかもしれない。けれど持てるものに天は試練を与えるものなのだろうか。掠れる声と喉に違和を覚えた男が医師から受けた診断は声帯腫瘍。完治に至る方法はあれど、場合によっては声を失うこともあると聞かされた時のことは筆舌に難く、酷く男を悩ませた。そして思い悩むその先で、一歩を踏み出すことが出来なかった男はふとこう思ったのだ。いっそ生を手放してしまえば、と。ファンタスマゴリアではやわく注ぐ月光のような白銀の髪も、現実世界では黒髪である。それ以外の差異は然程なく。敢えて上げるのであればその声の表情と印象は豊かであるのに対し、実際の表情変化はあまり大きくないことが現実ではより顕著である、というくらい。
♪ 青嵐 雅月(せいらん かづき)
♪ロールサンプル:A
(このファンタスマゴリアは、誰かが作ったハッピーエンドの先なのだろう。幸せになりましたとさ、と締め括られた物語その先は例えば読み手の自由だけれど、ここでは誰もが想像しうる幸せな平穏が描かれている。空模様はいつだって穏やか。星月もうつくしいばかり。自分ではない誰かが約束してくれた世界の平穏は、揺らぐことない不変の秩序であると誰もが思っている。自分も含めて。だからおとぎの国の日常に飽きることなく、繰り返すようでいて少し違うばかりの日々を当たり前に過ごしているのだ。昨日はいつもよりついていなかったけれど、今日はちょっと良いことがあった。とりとめもない心の浮き沈みに小さく笑い、好きなことをして気分を変えたら明日は何があるのだろうと楽しみにして眠る子供のような毎日。この男のそれは、花園で花と香りに囲まれながら好きに歌って過ごすこと。昼も夜も、開けば自然とメロディを口遊む唇が花園に音を響かせている。風の音も噴水の音も、葉のささめきも小枝をぱきりと踏む音もすべて伴奏と言ってもいい。うつくしいものを見ると心が動いて歌いたくなるという衝動があるならば、これはきっとうつくしく穏やかなものに囲まれているから溢れるものなのだ、と。噴水のふちに座りながら今日もぽっかりと夜空に浮かぶ月を見上げて歌い、一日の終わりを過ごす。すべらかな外縁を描くはまるみを帯びた曲線。浮かぶ望月が照らす光は柔らかく、周りに散った星屑のきらめきもそれで和らぐよう。見ているといつまでも歌っていたくなる、そんな夜。いつもと少し違ったのは、その月に影が見えたから。ぽつんと、まるで小さな点のようなものに気づいたのがまず最初のこと。)……あれ?(思わず歌う声を止めて不思議そうな声が漏れた。瞬きを繰り返しても消えぬ影は、時折月光を遮る雲とも違う。鳥か何かが横切ったなら影は動くはずだけれど、そんな様子もない。まるでそう、インクが一滴落ちてしまったような。そう思ってじいっと見つめていれば今度は、点が先ほどよりも大きくなっているような。インクが滲みだしたのとも違う明確なシルエットが浮かび上がってきたならば、それは人の形をしているように見える。まさか本当に誰かが落ちてきている?月から?まさか――思わず自問自答してみたものの、実際の瞳に映りこむシルエットはもう人の形で間違いなくて。)空も月も、長いこと眺めてきたつもりだけど……月から人が降ってくるのは初めて見る。(思わず呟きながら腰を持ち上げたのは、いっそ興味に近い。けれど例えば砂糖菓子にふりかけるシナモンのように、ファンタスマゴリアの平穏に降るちょっとしたスパイスなのだとしたら少しだけ触れてみたい。そう思ったのは、月から降るように落ちてくるそのシルエットに、新たな旋律を紡ぐための風を感じたからかもしれない。それが本当かどうかは、月の下に駆けた先に待つ邂逅が教えてくれるはず。)