胡蝶夢譚
For Lia
「あるところに、ひとりの青年がいました。
彼が生を受け、歩むことになったのは、普通の――いえ、普通よりすこし過酷な道を用意された“現実世界”でした。
本来、彼にとっては希望に満ち溢れていたはずの生。たった一度、ただ一度だけ。夢を分かち合い友情を築いていた、少なくとも彼はそう信じていた友の裏切りにより、すべてを絶たれてしまいます。
生きる意味を見失った彼は、ある日願ってしまいます。いのちを棄ててしまいたい、と。
ぼろぼろになった青年の心へ、ささやきかける声がありました。
声の主は夢を介して人の心に触れる夢魔、ナイトメアです。ナイトメアは問いかけました。いのちを手放して、現実とお別れして、本当にいいのかと。
生に疲れ果てていた青年はうなずいて、深い深い眠りについてしまいます。
とはいえ、望みどおりに永眠したのではありません。皆が夜に眠るのとおなじ、ただの穏やかな眠りです。かわいそうな青年に、ナイトメアは猶予を与えました――死んでしまいたいと希うほどに残酷だった、現実世界の記憶にひととき蓋をして。楽しい楽しい夢の世界“ファンタスマゴリア”に避難させたのです。
ただし夢の規律にのっとり、刻限は“月が消えるまで”。
目覚める方法は「ファンタスマゴリアで一番高い時計台から、目覚めたら一番逢いたい人の顔を思い浮かべて、月へ向かって跳ぶこと」です。月が消えてしまえば、もう二度と目覚めることはできません。
“イディオ”となった青年は、目を覚ますことができるのか。愚者と貶めてしまった現実の自分と、もういちど向き合う勇気を持てるのか。
それはきっと、たまたま夢に紛れ込んでしまった女性に。彼の“助けて”を聞き逃さなかった、たったひとりに。
あなたに、懸かっています。」
For Jyun
「あるところに、ひとりの青年がいました。
彼が生を受け、歩むことになったのは、普通の――いえ、普通よりすこし過酷な道を用意された“現実世界”でした。
本来、彼にとっては光に満ちていたはずの生。乗り越えるべき試練と称すのか、或いは悪ふざけが過ぎる天のたわむれか。病魔はあろうことか、美しい歌声を生み出す喉にその手を伸ばしました。
生きる意味の喪失をおそれた彼は、ある日願ってしまいます。いのちを棄ててしまいたい、と。
ぼろぼろになった青年の心へ、ささやきかける声がありました。
声の主は夢を介して人の心に触れる夢魔、ナイトメアです。ナイトメアは問いかけました。いのちを手放して、現実とお別れして、本当にいいのかと。
生に疲れ果てていた青年はうなずいて、深い深い眠りについてしまいます。
とはいえ、望みどおりに永眠したのではありません。皆が夜に眠るのとおなじ、ただの穏やかな眠りです。かわいそうな青年に、ナイトメアは猶予を与えました――死んでしまいたいと希うほどに残酷だった、現実世界の記憶にひととき蓋をして。楽しい楽しい夢の世界“ファンタスマゴリア”に避難させたのです。
ただし夢の規律にのっとり、刻限は“月が消えるまで”。
目覚める方法は「ファンタスマゴリアで一番高い時計台から、目覚めたら一番逢いたい人の顔を思い浮かべて、月へ向かって跳ぶこと」です。月が消えてしまえば、もう二度と目覚めることはできません。
“エセル”となった青年は、目を覚ますことができるのか。生まれた意味さえ奪わんとした現実世界と、もういちど向き合う勇気を持てるのか。
それはきっと、たまたま夢に紛れ込んでしまった女性に。彼の“助けて”を聞き逃さなかった、たったひとりに。
あなたに、懸かっています。」
For Mikoto
「あるところに、ひとりの青年がいました。
彼が生を受け、歩むことになったのは、普通の――いえ、普通よりすこし過酷な道を用意された“現実世界”でした。
本来、彼にとっては光に満ちていたはずの生。たった一度、偶然に本能が重なった出来事により、希望の夢路は唐突に絶たれてしまいました。残るものはただ、焦燥と自己嫌悪からなる負の連鎖のみ。
生きる意味を見失った彼は、ある日願ってしまいます。いのちを棄ててしまいたい、と。
ぼろぼろになった青年の心へ、ささやきかける声がありました。
声の主は夢を介して人の心に触れる夢魔、ナイトメアです。ナイトメアは問いかけました。いのちを手放して、現実とお別れして、本当にいいのかと。
生に疲れ果てていた青年はうなずいて、深い深い眠りについてしまいます。
とはいえ、望みどおりに永眠したのではありません。皆が夜に眠るのとおなじ、ただの穏やかな眠りです。かわいそうな青年に、ナイトメアは猶予を与えました――死んでしまいたいと希うほどに残酷だった、現実世界の記憶にひととき蓋をして。楽しい楽しい夢の世界“ファンタスマゴリア”に避難させたのです。
ただし夢の規律にのっとり、刻限は“月が消えるまで”。
目覚める方法は「ファンタスマゴリアで一番高い時計台から、目覚めたら一番逢いたい人の顔を思い浮かべて、月へ向かって跳ぶこと」です。月が消えてしまえば、もう二度と目覚めることはできません。
“エース”となった青年は、目を覚ますことができるのか。生来の明朗ささえ失った現実の自分と、もういちど向き合う勇気を持てるのか。
それはきっと、たまたま夢に紛れ込んでしまった女性に。彼の“助けて”を聞き逃さなかった、たったひとりに。
あなたに、懸かっています。」
For Naru
「あるところに、ひとりの青年がいました。
彼が生を受け、歩むことになったのは、普通の――いえ、普通よりすこし過酷な道を用意された“現実世界”でした。
さりとて本来は友に恵まれ、こころの拠り所も確固としてある。すこしの憂鬱が時折影を落とせど、生のよろこびを感じるには充分な世界でありました。秘め事が明らかになったあの日、彼のすべてを否定されるまでは。
生きていることさえ耐えがたくなった彼は、ある日願ってしまいます。いのちを棄ててしまいたい、と。
ぼろぼろになった青年の心に、ささやきかける声がありました。
声の主は夢を介して人の心に触れる夢魔、ナイトメアです。ナイトメアは問いかけました。いのちを手放して、現実とお別れして、本当にいいのかと。
生に疲れ果てていた青年はうなずいて、深い深い眠りについてしまいます。
とはいえ、望みどおりに永眠したのではありません。皆が夜に眠るのとおなじ、ただの穏やかな眠りです。かわいそうな青年に、ナイトメアは猶予を与えました――死んでしまいたいと希うほどに残酷だった、現実世界の記憶をひととき預かって。楽しい楽しい夢の世界“ファンタスマゴリア”に避難させたのです。
ただし夢の規律にのっとり、刻限は“月が消えるまで”。
目覚める方法は「ファンタスマゴリアで一番高い時計台から、目覚めたら一番逢いたい人の顔を思い浮かべて、月へ向かって跳ぶこと」です。月が消えてしまえば、もう二度と目覚めることはできません。
“コルネ”となった青年は、目を覚ますことができるのか。もういちど現実世界と向き合う勇気を持てるのか。
それはきっと、たまたま夢に紛れ込んでしまった少女に。彼の“助けて”を聞き逃さなかった、たったひとりに。
あなたに、懸かっています。」
For Koyuki
「あるところに、ひとりの青年がいました。
彼が生を受け、歩むことになったのは、普通の――いえ、普通よりすこし過酷な道を用意された“現実世界”でした。
それでも一度は、希望を見出した世界でした。心の底から笑うこと、他者を楽しませること、それらを生き甲斐として得る喜び。彼のすべてを絶った刃はあろうことか、すべてを訓えてくれたはずの師の裏切りでした。
生きる意味を見失った彼は、ある日願ってしまいます。いのちを棄ててしまいたい、と。
ぼろぼろになった青年の心へ、ささやきかける声がありました。
声の主は夢を介して人の心に触れる夢魔、ナイトメアです。ナイトメアは問いかけました。いのちを手放して、現実とお別れして、本当にいいのかと。
生に疲れ果てていた青年はうなずいて、深い深い眠りについてしまいます。
とはいえ、望みどおりに永眠したのではありません。皆が夜に眠るのとおなじ、ただの穏やかな眠りです。かわいそうな青年に、ナイトメアは猶予を与えました――死んでしまいたいと希うほどに残酷だった、現実世界の記憶にひととき蓋をして。楽しい楽しい夢の世界“ファンタスマゴリア”に避難させたのです。
ただし夢の規律にのっとり、刻限は“月が消えるまで”。
目覚める方法は「ファンタスマゴリアで一番高い時計台から、目覚めたら一番逢いたい人の顔を思い浮かべて、月へ向かって跳ぶこと」です。月が消えてしまえば、もう二度と目覚めることはできません。
“ジェスター”となった青年は、目を覚ますことができるのか。本来の笑顔さえ忘れてしまった現実の自分と、もういちど向き合う勇気を持てるのか。
それはきっと、たまたま夢に紛れ込んでしまった女性に。彼の“助けて”を聞き逃さなかった、たったひとりに。
あなたに、懸かっています。」
For Yume
「あるところに、ひとりの青年がいました。
彼が生を受け、歩むことになったのは、普通の――いえ、普通よりすこし過酷な道を用意された“現実世界”でした。
多くの時間を睡眠に浸食され、抱きたかった希望や夢さえ初めから奪われた生。眠りを厭い、目覚めさえも絶望を齎す。そんな現実と永劫向き合わねばならないなど、如何に耐え難いことであったでしょう。
生きる意味を見失った彼は、ある日願ってしまいます。いのちを棄ててしまいたい、と。
ぼろぼろになった青年の心へ、ささやきかける声がありました。
声の主は夢を介して人の心に触れる夢魔、ナイトメアです。ナイトメアは問いかけました。いのちを手放して、現実とお別れして、本当にいいのかと。
生に疲れ果てていた青年はうなずいて、深い深い眠りについてしまいます。
とはいえ、望みどおりに永眠したのではありません。得たのは彼がなによりも厭って止まない、ほかならぬ“いつもの”眠りです。かわいそうな青年に、ナイトメアは猶予を与えました――死んでしまいたいと希うほどに残酷だった、現実世界の記憶にひととき蓋をして。楽しい楽しい夢の世界“ファンタスマゴリア”に避難させたのです。
ただし夢の規律にのっとり、刻限は“月が消えるまで”。
目覚める方法は「ファンタスマゴリアで一番高い時計台から、目覚めたら一番逢いたい人の顔を思い浮かべて、月へ向かって跳ぶこと」です。月が消えてしまえば、もう二度と目覚めることはできません。
“トロイメライ”となった青年は、目を覚ますことができるのか。現実の自分と、もういちど向き合う勇気を持てるのか。
それはきっと、たまたま夢に紛れ込んでしまった女性に。彼の“助けて”を聞き逃さなかった、たったひとりに。
あなたに、懸かっています。」
For Reika
「あるところに、ひとりの青年がいました。
彼が生を受け、歩むことになったのは、普通の――いえ、普通よりすこし過酷な道を用意された“現実世界”でした。
愛し愛されていた妹の、在りし日の姿をなぞる日々。そうして自他ともに慰めを得たところで、妹そのひとになれはしない。そんな至極当然の事実は、兄であった青年に絶望ばかりを齎しました。
自分が自分であることさえ鎖されてしまった彼は、ある日願ってしまいます。いのちを棄ててしまいたい、と。
ぼろぼろになった青年の心に、ささやきかける声がありました。
声の主は夢を介して人の心に触れる夢魔、ナイトメアです。ナイトメアは問いかけました。いのちを手放して、現実とお別れして、本当にいいのかと。
生に疲れ果てていた青年はうなずいて、深い深い眠りについてしまいます。
とはいえ、望みどおりに永眠したのではありません。皆が夜に眠るのとおなじ、ただの穏やかな眠りです。かわいそうな青年に、ナイトメアは猶予を与えました――死んでしまいたいと希うほどに残酷だった、現実世界の記憶をひととき預かって。楽しい楽しい夢の世界“ファンタスマゴリア”に避難させたのです。
ただし夢の規律にのっとり、刻限は“月が消えるまで”。
目覚める方法は「ファンタスマゴリアで一番高い時計台から、目覚めたら一番逢いたい人の顔を思い浮かべて、月へ向かって跳ぶこと」です。月が消えてしまえば、もう二度と目覚めることはできません。
“ヒュー”となった青年は、目を覚ますことができるのか。もういちど現実世界と、そこに置いてきた誰かと向き合う勇気を持てるのか。
それはきっと、たまたま夢に紛れ込んでしまった少女に。彼の“助けて”を聞き逃さなかった、たったひとりに。
あなたに、懸かっています。」
For Luca
「あるところに、ひとりの青年がいました。
彼が生を受け、歩むことになったのは、普通の――いえ、普通よりすこし過酷な道を用意された“現実世界”でした。
その世界は彼にとってただただ辛く、厳しいものでしかありませんでした。声なき声は掻き消され、ひたすらに他者の従僕がごとく生きる日々。生を受けた瞬間からこころを苛み続けた逆境を、運命と呼ぶのはあまりにも無情です。
生きていることさえ耐えがたくなった彼は、ある日願ってしまいます。いのちを棄ててしまいたい、と。
ぼろぼろになった青年の心に、ささやきかける声がありました。
声の主は夢を介して人の心に触れる夢魔、ナイトメアです。ナイトメアは問いかけました。いのちを手放して、現実とお別れして、本当にいいのかと。
生に疲れ果てていた青年はうなずいて、深い深い眠りについてしまいます。
とはいえ、望みどおりに永眠したのではありません。皆が夜に眠るのとおなじ、ただの穏やかな眠りです。かわいそうな青年に、ナイトメアは猶予を与えました――死んでしまいたいと希うほどに残酷だった、現実世界の記憶をひととき預かって。楽しい楽しい夢の世界“ファンタスマゴリア”に避難させたのです。
ただし夢の規律にのっとり、刻限は“月が消えるまで”。
目覚める方法は「ファンタスマゴリアで一番高い時計台から、目覚めたら一番逢いたい人の顔を思い浮かべて、月へ向かって跳ぶこと」です。月が消えてしまえば、もう二度と目覚めることはできません。
“ヨハネ”となった青年は、目を覚ますことができるのか、もういちど現実世界と向き合う勇気を持てるのか。
それはきっと、たまたま夢に紛れ込んでしまった女性に。彼の“助けて”を聞き逃さなかった、たったひとりに。
あなたに、懸かっています。」