(ワンダーランドに落っこちて、かのひとと出逢い、いずれ連ねたやりたいことリスト。それをこの現実世界でも充実させてゆくこと、減らしたり増やしたりとふたりで満たしてゆくことは、共に生きる上での目標にもなろうか。かのひとが一度は諦めてしまった“生”を取り戻したいま、今後一切あんな思いは抱かせない。それは娘がプロポーズ受けた際、心中にてひっそりと留めた思い。)時間の流れ、色、質感に温度。たぶん私たちふたりでだって違うんだろうけれど、少しでも了一さんと同じものを見たいなあ。私が私で、あなたがあなたであるかぎり――…うん、互いの想いをいつだって、いつまでだって伝え合おう。(夢から醒めてなお共にいられる、これが現実、この先が未来。プラスチックの容器から取り出したピアッサー、斜め読みする説明書、ぱちんと鳴ったふたつの音。夜空と星が耳朶へ咲けばなんだか安心して、この安心感こそが欲しくて、唐突な流れでも穴を穿ちたかったのだと気が付いた。「…了一さんも、ちゃんと似合ってる。」夢の中にあなたがいた証拠、現の世でふたたび出逢えたあかし。ハンドルに手を乗せ慣れた手付きにて車を疾駆させながら、)兄は劇団で、役者をやっているの。だから次の舞台の、通し稽古。………私が、了一さんの家にお邪魔する、いちばん最初のおんなのこ?ええ…うん、それ、緊張しないのはむりだよ…!(ただでさえ恋人の実家へゆくだなんて顔が強張って仕方ないのに、初めてとなればさらに戸惑おう。なるべく落ち着いて、と自分に言い聞かせ「私が職場を転々としていた時に出会って、互いに惚れ込んじゃった、とかかな?」距離が近付き、娘が成人に至るのを待って結婚。その間は婚約者として過ごしておりました――なあんて、式場のナレーション勝手に想像しつつ、暗くなってきた道でライトを点灯。)了一さんも、誓いに賛成でよかったあ。ドレスなんて二度と着る機会はないとおもってたけど…人生の晴れ舞台でまた着られるの、うれしいな。…あ、ちょっと寄り道するよ。(車路肩に寄せればスマホ弄って近くの洋菓子店を検索、言葉通りの寄り道で小さなケーキセット購入し、それについてはかのひとに有無を言わせず、やがて一軒家へ辿り着こう。迎えてくれたお母さまにぺこりと頭下げれば、手土産渡して。)急にお邪魔してすみません、香迷友愛子と申します。(いささか緊張気味に挨拶交わすも、あたたかく、そして人好きのする笑みで迎えてくれたそのひとは、未来の旦那さまに似て非常に優しげな印象だ。誘われた娘は一頻り恐縮しながらも、夕食を頂いてゆくだろう。)わあ、すごくあたたかい。了一さんがとてもおだやかな理由が、わかりました。私は家庭料理に縁がなくて…喜んじゃっても、いいですか。(環境がまるきり違っていて驚き、かのひとの幼少期聞いたりと、家族の団欒とはこういうものかなんて心温めた一時。食べ終えて一息つけばそろそろ辞去をと申し出て。)次のやすみは五日後、そのあとの予定はまた連絡するね。指輪、買うの楽しみにしてる…、…了一さん。じゃあ、またね。おやすみなさい。(もう随分前、このひとのくれた「おやすみ」は何にも勝るやすらぎであった。玄関先にて別れても、これからは何度だって会うだろう。そしてその度、別れ際には次の約束を唱えるのだ。「またね」が「ただいま」と「おかえり」になる、その日まで。)
香迷友愛子〆 2020/03/03 (Tue) 16:26 No.77