Mome Wonderland


back


(夜の煌めきを纏い、花は咲く。)
(ワンダーランドの生活には慣れてきた。窓辺に毎朝集う小鳥たちに、昔大好きだったアイドルの歌を聞かせることが恒例となっているのがその証拠である。だから今日も、また。小鳥たちがそろそろ新しい曲をと強請ってきたことに苦笑いを浮かべつつ、非日常が日常へ変わってきた穏やかな時間を過ごしていれば轟く招集の声。)えええ……?!舞踏会って一体なに…?こういうの、普通のことなの?(小鳥はまあねと言っていたけれど、己にとっては初めてのこと。持ち合わせている服もこれっきり。仕方ないよねと心に秘めつつ、言葉通りに城へと向かえば案の定窘められ、あれよあれよと花園へ。本日、この国に咲夜の驚いた声が再び響いた。)

(「それで?あなた、なにか希望はあるの?」「どんな色?どんな形?」「リボンはつける?それともチュールたくさんあしらってみる?なにせ舞踏会だもの、とびきりのおめかしをしましょう!」───お喋りなお花たちは怒涛の質問を投げてくる。舞踏会やパーティーなんて経験したことがない咲夜には、ドレスを思い描くことは難問だというのに。)う、え、えっ…そんなたくさん言われても困るよ…?(お陰でおろおろ戸惑うましろは手持ち無沙汰を繰り返す。)でも、うーん、叶うなら───私、星空みたいなきらきらが欲しいなあ。(暫し思案して捻り出した願いはたったそれだけ。色も形も指定できるものが浮かばなかったというより、いつも彼が纏う色を思い浮かべたら自然とそれだけを思ったのだ。そうすれば「きらきら?ええ、素敵ね!とぉっても輝く星たちをたくさん散りばめましょう」と了承してくれたようだが、「いっそ夜ごと切り取ってみる?」「でもこの子には暗すぎるわ」「そうねえ、でも白は朝の色だもの。変わり映えしないわ」「じゃあ夕暮れを切り取りましょう」となにせ咲夜を置いてけぼりにして進んでいく。花たちの言葉が飛び交うなかで、どこからともなく現れて、しゅるると不思議に宙を舞い、咲夜の体ごとを包帯を巻くかのように纏わされる白いヴェール。そのヴェールが再び解かれるとき、いつもの白を纏う女はいなかった。)か、……かわいい…!(感極まる声が花園にあがる。白の代わりに生まれたのはカシスカラー。袖のないデザインはデコルテも肩も惜しむこと無く夜へ触れさせ、生地には美しい刺繍で花たちが満遍なく咲いている。プリンセスラインのふんわり膨らんだ裾が地面すれすれに揺れるおかげで、左右にゆっくり体を捻れば裾は綺麗な円に膨らんでしなるのが面白い。咲夜の希望でもあった煌めきは、胸下から裾まで大小それぞれの星がきらきらと綺麗にその光を主張し女の心をいっとう擽ぐった。おまけに、いつもおろしていた髪はハーフアップになり、紫の薔薇の髪飾りが右耳の上に咲いている。「お気に召した?」と問う声に、)とっても素敵!お花さんたち、こんな素敵なドレスをありがとう!(咲き誇る花たちに負けない彩りの声で感謝を告げ、早く彼に見せたい思いからすぐさま花園から出ようと足取りは急いていた。)
レイカ 2020/02/08 (Sat) 17:04 No.7
(きっと退屈がはじけとんだんだなあ。ヒューは暢気にそんなことを考えた。やっぱり女王のことは好きだ。彼女の癇癪は、欠けた月みたいに気まぐれで、不十分で、やさしい。)はいはい、わかったってば女王様。迎えに行けばいいんだろ。(両手をうんと伸ばし、頭の後ろに組んで添え、わざわざ口をとんがらせた。まるで面倒がるように。舞踏会の報を受けてからもとよりヒューはそのつもりだった。花園へ向かうあいだにも小鳥が話しかけてくる。「ヒューはおめかししないの?」「いつもとおんなじ黒い服!」「女の子をエスコートするんだから」「もっとふさわしい服があるでしょ」)いいんだよ、ヒューはそんなのきなぁ~いの!(大きな声を出すと、「おこりんぼ!」鳥たちは驚いて飛び去って行った。おれんじがあおへと変わる不思議なたそがれ。奥まった空はぴんくにも見えて、その芸術家のたまごが描いたような空を、ヒューは気に入った。はやる足は駆ける、駆ける!紳士とも淑女ともとれぬやんちゃさで、ブーツが足跡を残していった。さて、彼女はどこだろう。まるでこのお城に隠された宝探しをするみたいに、わくわくする気もち。きゃっきゃと少女のような花たちの声が聞こえて、ヒューは失速した。花々の奥から顔を出し、あっ。それは声にはならなかった。)レイカ!そんなに急いで、どこに行くんだよ?(んふふっと笑って彼女を見ると、思わず、目を瞠る。)わあ…っ、(はしゃぐような歓声が漏れた。て、て、て、とリズミカルに近づいて、しげしげとその姿をひとみにおさめたがる。)まるで夜になる前のたった一瞬を切り取ったみたい。レイカって、月のお姫様だったのか?すごくきらきらしてる。(くらい空にまたたく数多のお星さま──ではなく、ヒューはレイカを見ている。彼女はずっと朝だった。それがいま夜になって、すとんと落ちるような気すらした。レイカはずっと女の子で、だから、お姫様だった。)
ヒュー 2020/02/09 (Sun) 17:49 No.18
――わ、!……ヒューくん!見つけた!(呼ばれた名前に反応し、直ぐさま瞳は月を探す。そうすれば見つけた。否、きっと今回も『見つけてくれた』が正しいか。着慣れないお姫様の装いに、焦りだけが先行してもたついていた足がどうにか絡まり合う前に彼が見つけてくれた。この可愛いドレスをどうしても見せたかった相手にすぐ出会えたことは素直に嬉しく、「ヒューくんのところへ行こうと思ってたんだよ」と得意げに微笑む顔が今の気持ちの全てだった。)ふふ、お花さんたちとっても器用だったからびっくりしたよ。それに私はいつも白色の服だったから新鮮だよね。(じいっと見つめてもらうのは自分が望んでいたとはいえ少し恥ずかしい。けれど決して嫌なわけではないので、裾を両手でふんわり抱き寄せるように持ち上げてくるりとターンしてみせよう。そうすれば、まるで硝子の靴のように綺麗に透き通ったクリスタルのヒールが露わになる。甲の部分には同じくクリアの薔薇が三つほど咲いており、それはドレスの星よりも淑やかに輝いて、その存在を密やかに主張するかのよう。初めての体験はとびきりに咲夜の心を揺らす。ワンダーランドでお姫様になってみるのも、良いものだ。)そうなの、ヒューくんはいつも綺麗な夜の色だからね。きっと今日もそんな気がしてたんだ。だからね、夜に似合うように私は星をもらったの。(さっきお花さんも言っていた、『朝の色』が普段の自分が纏う色。一方で『夜の色』は彼の色。朝と夜のコントラストはいつもはっきりとあったけれど、いまの『夕暮れの色』は夜によくなじむような気がする。なぜかすこうし、夜に近づいた気がして嬉しかった。)私、月のお姫様?ふふ、だったらヒューくんは夜空の王子様だよ。ぜーんぶ包み込んでくれる優しくてかわいくてかっこいい王子様。(夜に月や星が浮かぶ前、ほんとうは夕暮れからそれらは浮かんであるらしい。都会であまり星を探すことはなかったから、数回ほどしか見つけたことはないけれど。でも誰かに見つけてもらえるほど――ううん、『誰か』じゃだめだ。彼がすぐに見つけてくれるくらい、いっとう輝く存在であれたなら――なんて。そう、思ってみるのは愚かだろうか罪だろうか。だから、ねえ、王子様。)行こう、ヒューくん。(そっと持ち上げた右の手の甲は彼の胸あたりでそのままぴたりと止まる。今宵、纏うましろはいない。文字通り、ありのままの素肌が彼に導かれることを望んでいた。)
レイカ 2020/02/10 (Mon) 18:42 No.31
見つかっちゃった。(見つけた、と言われれば遊ぶようにそう返す。へへへ、と愉快そうにも照れ臭そうにもしながら、言外に彼女もまたおのれを見つけようとしていたことは喜ばしいことなのだ。)花たちに作ってもらったのか。城の花は、すごいよな。おれでも『おしゃれとは何かがわかる』ってなもんだぜ。(裾を持ち上げて舞うように一回転をするお姫様をヒューはあたたかい気もちで見ている。今にもこわれてしまいそうなほどきれいなクリスタルの靴、彼女の軌跡が妖精の粉のようにひかりとなって螺旋をえがいた。きっと自分がまわっても同じようにはいかないだろうな、とヒューはやさしい気もちになる。ヒューはレイカのそういう、自分とは決定的にちがうところが好きだ。)おれはレイカのしろは好きだけど、夜がすきだな。朝もべつにきらいじゃないけど、ずっと夜のままのほうがいいなって思うときもあるよ。いつものレイカもおれはすきだけど、夜に似合うレイカはなんだろう、なんかうれしいような?かんじ。伝わるかな。(相変わらず上手くまわらぬ口は正しく胸中を伝えられているのか知らぬが、おのれ自身はかりかねている部分も大きい。あかりを反射してきらきらするドレスは宝石箱のようで、ヒューはほんものの宝物を見つけたような気になった。)かっこいい?(並べられた表現のうち、ひとつを摘まんだその手で喉のでっぱりを擦り、くちびるをへの字にさせた。)ふう~ん、へえ~、そっか~。(むんずと組んだ腕の上、もったいぶった口吻がやがてほろほろと崩れ、にんまり顔。腰に手を当て、鼻高々に。)王子たるもの紳士的に姫をエスコートせねばなるまい!(片手を胸の前にやって片膝を折り、恭しい一礼を。寸分のごっこ遊びに転じ、なにものにも阻まれないその手をとった。)さあて、お姫様のお望みは?ダンス、お喋り、あま~いお菓子!なんでもござれの舞踏会だよ。(ファンタスマゴリアは今日も気ままにのんべんだらり。望めば手に入れられるすべてのものを並べ立て、愉快げででたらめなメロディーに溢れている。何もかもか些末な中で彼女の望みはそうじゃなかった。)
ヒュー 2020/02/11 (Tue) 12:11 No.38
(ドレスの重みが、捻る遠心力に沿うようにふんわりと螺旋を描く感覚。これはなかなか癖になりそうだ。それと同時に『A dream is a wish your heart makes』――幼い頃好きだったプリンセスが歌っていた景色を思い出す。これは午前零時の鐘が鳴らなくても解けない、それにきっと片方の靴さえ無くさない、咲夜だけにかかる永遠の魔法。そしてなにより、それを見つめてくれる人がいることこそ咲夜にとってはなによりも幸福なことだった。星を散りばめたドレスを映すふたつの月――咲夜の纏う煌めきが向かい側の虹彩の中でも輝いている。まるでそれは雲一つ無いときの冬の夜空と似ていて。彼はやっぱり夜空のなかで優しく照らしてくれる月がよく似合う、そう思った。)うーんと……、うん、朝と夜は遠いよね。夜から朝を見るとどうしてか近い気もするけど、でもやっぱり朝と夜は遠いと思う。私もずっと夜だったらいいのにって思う時はあるよ。だから今の私とヒューくんはグラデーションになれるくらいずっと近いはず、……って私は思うんだけど、そういうことなのかな?(言葉というのは難しい。伝えることも、受け取ることも。だから咲夜はいつもより慎重になって彼の言葉をゆっくりと噛み砕く。物理的な距離ではなくこころの距離なのだろうと検討をつけながら、尚ゆっくりと。手を繋げば、或いは裾同士が触れあったら溶け合えるかもしれないほどに、夜とその少し前の色とはよく馴染んでいると思うけれど、もしそれを彼も気に入ってくれているのならば何より微笑ましい。けれど、やがて珍しく尖るよう曲がった唇に違和感があった。何の気なしに褒めるつもりでなぞった言葉は何かまずいことをしたのだろうか。) 、? うん、かっこいい……かっこいい……うーん、かっこいいじゃ変かな。なんだか足りないかな。なんだろう、クール…は英語にしただけだし、ううん…。(言葉。殊更感情の言語化というものは自分にとって難しいことのひとつだ。拙い言葉結びで飲み込めないまま窒息させてしまうくらいであれば言わぬが吉。でも、きらきらして素敵なものたくさん混ぜれば彼になるのではないだろかと思っている心を止めることは出来なくて。むずかしい。こころをパカッと取り出して見せてあげあれるといいのに――思案顔でごにょごにょと言葉を捏ねるのも束の間。麗しく自信たっぷりな王子様からエスコートをいただけたなら、咲夜の瞳にも星の輝きは分け与えられよう。)私、舞踏会って初めてなんだ。パーティーも結婚式くらいしか知らなくて。だから踊ってみたいな、そしたら本当にお姫様になれちゃいそう!(花が綻ぶような笑い声で綴るおねがいごと。無事に彼が叶えてくれるのであればそのとき咲夜の人生初めての舞踏会は幕を開ける。けれど十数分後にダンスホールの煌びやかな景色を前にしたとき「此処ではよくこういったイベントは盛んに企画されるの?みんなが退屈しないように?貴族のお遊び…?」と問うたのは、いくらワンダーランドに慣れたとはいえ一般人の感覚が抜けきれていないからだった。)
レイカ 2020/02/13 (Thu) 06:39 No.61
(むすめの言葉に腕を組み、むむむ、とくちびるを歪めてしかめつらをする。いやな気もちではちっともない。理解することにあんまり熱心になってしまっただけで。上体までも傾けられるだけ傾けて、勢いつけて真っすぐにもどった。)グラデーション。それってさ、おれからレイカに、レイカからおれになってるってこと?おれとレイカはちがうけど、あわさってるところは、おんなじなのかな。それってさ、ちょっといいよな。そこから混じり合って、ひとつになったりしないかな。夕暮れがいつの間にか、一色だけの夜になってるみたいに。(ヒューはレイカのちがうところが好きだけれど、だからきっと、おんなじにもなりたいのだと思う。ヒューは透明な靴できれいに踊れないけれど、踊れたら、それはいいなと思う。紫色のひとみが胡散臭い月をどかして眼窩におさまるのも、それはそれでいいなと思う。消えることはおそろしいが、とけあうことは、あるいは喜ばしいことに思えた。)かっこいいって、おれには似合わないなって思っただけだよ。言われたことないなーって……うーん、いや、あったかな。あったような気もするけど…。だってヒューはかわいいだろ。かわいいと、かっこいいはおんなじところにはいられない気がしたんだよ。どっちかを選ぶしかないって。だからおれは、かっこいいより、かわいいがいいんだ。(黒いブーツの踵と踵をこつこつぶつけて、ときおり首をかしげながらヒューは言う。)でも、王子様は気に入った!お姫様って言われるより、ずうっといいな。(黒のワンピースの裾ひるがえし、歌うようにほがらかに。ダンス!もちろんいいよ、とヒューはふたつ返事。ダンスホールへお姫様一名ご案内!絢爛たる大広間には夜のうつくしさだけを切り取ったようなシャンデリア。つやつやのフロアはふたりの顔をぴかぴか映している。)キゾク? 全部女王の癇癪か気まぐれか、ほころびだらけのやさしさのどれかだよ。気分しだいで好きほうだい。そういうのを振り回されるっていうやつもいるけどさ、おれは好きだぜ。振り回されるのは、たのしいだろ。さ、お手をどうぞお姫様!(おどけてみせながら彼女を一夜限りの舞踏会へ誘おう。誘いに乗ってくれるのなら、ブーツは軽快にワルツのリズムを踏むはずだ。ワンピースの裾をゆらゆら波打たせながら。)さっきレイカが言ってたことだけど、ちょっとちがうってなもんだぜ。レイカははじめから、お姫様だよ。だってさ、おれは知ってるんだぜ。女の子はみーんなお姫様なんだってこと!(悪戯を思いついたようにニヒヒと歯を見せて王子は笑う。すべてがちぐはぐの夢を詰め込んだようなこのワンダーランドで、ヒューは自信たっぷりに、「首を刎ねよ!」に匹敵する高らかさで、世の理を諳んじるかのように宣言した。)
ヒュー 2020/02/13 (Thu) 23:07 No.71
うん、そうだよ。私からヒューくんに、ヒューくんから私に繋がってる。夕暮れから夜になる瞬間を切り取ったら、私たちになってるなんてすっごく素敵だよね。私の歩いてきた道とヒューくんの歩いてきた道とが繋がったみたいにさえ思えてきちゃう。私とヒューくんっていう人間はもちろんちがうけど、ふふ、……私もね、ふたりでひとつだったら嬉しいなって思うんだ。なんでだろう、そのほうがきっとずっと、素敵な世界に飛び込めそうで。(ほんとうにひとつになったらどうなるのかは分からない。咲夜は彼にはなれないことを知っているから。なれないけれど、なれないからこそ、グラデーションの境目が何よりも尊く映るのだ。二人で同じ時間を生きる意味を持つことにも見えそうで。)ヒューくんは可愛いよ。ずうっと可愛い。長い睫毛も、綺麗な肌も、赤い爪も、細くて長い手足も。全部私より可愛いを持ってる。(応えるように可愛いと褒めるのは贔屓でもなんでもなく、持って生まれた見目麗しさを初めて会ったときから認めていたから。「でも、」そう懸命に紡ぎたがる咲夜の唇。真っ直ぐな心がどうしてもわだかまりを見捨てられないと叫んでいる。)……でも、可愛いとかっこいいはどちらかを捨てなくちゃいけないふたつ、……なのかな。ヒューくんの誇りある心も、この間私を抱え上げた腕も、かっこいい。私は、ヒューくんのこととっても可愛くてとってもかっこいいなって思ってるから…かわいいってことも、かっこいいってことも、言いたい…かな。(先ほどまでごにょごにょ言葉だった筈の臆病な唇が途端懸命に動き出す。ワンダーランドに来て初めて咲夜は彼の言葉に対して心が軋んだ音を立てたことに気付いたからだ。この感情は、なぜか彼を遠くに感じてしまったことなのだろうか。それとも、もしも過去に彼が二つに一つを選ぶしかなかったのならそれはもったいないことだと勝手な憶測を描いてしまったからなのだろうか。現実世界での話にはなるが、可愛い顔立ちを売りにしているアイドルだってまるで男の人顔負けの格好良さにフォルムチェンジして舞台に立っていたりする。それは彼の言う『おんなじところ』にいられちゃいないのだろうか。そうしたらこの感情もそうなってしまうのか、と。対立する筈の夜から朝にもグラデーションが存在するようにふたつが共存することも可能であってほしいと願った。心の向くまま、真っ直ぐ見つめた王子様はどう言うかわからないけれど。)ひゃあ~……女王様ってすごいんだね……。良い暮らししていらっしゃる…。(確かにこんな豪華なお城に住まう人だったら、そりゃあ首を刎ねることもずっと容易いんだろうなあ――そうなる未来だけはどうにか回避したいものだけれど。ぼんやり浮かんでいた苦笑いも、王子様の微笑みと優しい掌に導かれればすぐに本物のお姫様になれる魔法が掛かる。当然先ほど告げたようにワルツなんて初めてで、礼儀作法どころかステップだって彼に沿うようにしか動けないけれど、それでも楽しく音楽に乗せてドレスはゆらりと舞う。) うん、?何が違……――~~~~っ!(なにがちがうの?と首を傾げようとしたのに。そんなこと出来なかった。一気に全身の熱が顔に集まって、そのまま沸騰してしまったのではないだろうかとさえ錯覚する。もしさっきダンスを選んだことを一つだけ後悔するとしたら、こんなに火照る顔を手で覆い隠すことが一切出来ないままであるということだ。羞恥に身もだえながら「あ…ありがとうぅ…」と言葉にすることが、咲夜にとっての精一杯の取り繕った矜持だった。)
レイカ 2020/02/14 (Fri) 21:37 No.82
レイカが帰ったら、おれたちはつながっているところからちぎれて、ばらばらになっちゃうのかな。それはなんだろうな、すごく嫌だな。…ああ、でも、そっか。レイカのいたところとファンタスマゴリアはつながっているんだもんな。空がつながってるみたいに、おれたち、きっとちぎれたりはしないよな。(結んだくちびるをほどいて、気難しそうに考えながらこぼした言葉はたどたどしい。道なき道をゆくような不安定さで、それでも一筋のひかりがさした。夢を見るような輪郭は、『きっと』を無邪気に信じたがる。)誇りとか、かっこいいとか、レイカはそう思ってるかもしれないけど、そういうんじゃないんだよ。おれは、…おれはただ、守りたいだけだよ。だって、約束しただろ。だから。それだけなんだ。(ヒューはなんだか落ち着かない。彼女にそう言われるのは悪くない気もちだが、同時にかっこいいことは何だか良くないことに思えた。ちぐはぐな心は後ろめたくて、彼女の視線からヒューはそっと顔を逸らす。)それにしてもレイカはときどき、へんなことを言うよなあ。ヒューがかわいいのは当然だけど、それはどっちのほうがって比べるもんじゃないんだぜ。どっちのほうが好き、ってのはあるけどな。かわいいってのはさ、ひとつきりじゃないんだ。おいしいってのと一緒だよ。人それぞれ好みはあるけど、それは誰にも否定できやしないんだ。ヒューにはヒューの、レイカにはレイカのかわいいがあるんだから。(かわいいことは良いことだし、うれしいことだが、レイカよりって言われるのはなんだかな。自分の好きなものを否定されるみたいで癪だった。素直な口はむすりととんがり、ついついぶつくさ言ってしまう。それでも、彼女の手を取って踏むステップはたのしい。正しさなんてそこにはなくて、自由に踏み出す黒と透きとおる靴。踏んでしまわないように気を付けながら、ヒューは事実を述べたつもりだ。けれど、もにょもにょっとした彼女の音に、きょとんと視線を上向ける。たそがれの上に、夕焼けがあった。)??? レイカ、どうしたんだよ?顔が赤いペンキを塗られた白バラみたい。(口をやまなりにさせて、変なレイカ!と笑ってしまう。よくわからないまま「どーいたしまして!」と歯切れよく言うのは、「いただきます」と「ごちそうさま」の関係とおんなじ。一対になっていて、それ以外だとしっくりこないから。つないだところから一緒になる。朝と夜がまじわる舞踏会を、きっと、『希望』と思いたかった。)
ヒュー 2020/02/17 (Mon) 20:03 No.92
Log Download