Mome Wonderland


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(その手をちょうだい、ミスター・ローズ。)
(女王命令の「舞踏会を催す!」それは国民にとって慣れ親しんだものであれ、月から落っこちてきた娘にとっては何が何やらの展開で。一応命令だからと城に向かってみたのだが、かのひと伴わずに訪れたのはまずかった。三つ編み眼鏡の少女にも問うべきでもあったろう。普段着ではいけなかったことを。)――…きがえ?はい?ドレスなんて聞いてないよ!(そう、いつも通り。洗い替えの分も含め、なんとなくファンタスマゴリアに合わせた水色、藍色、若草色のエプロンドレス常であった娘にドレスコードの着用など思いもよらぬ。かと思えばトランプ兵たちが半ば強制的に娘を案内したのは花園で、更に訳がわからない。着いてみれば物言う花たちが「そんなんじゃダメよ!」「せっかくの舞踏会なのに!」とあれよあれよの着せ替えタイム。一応希望を聞かれたので「…ローズマリーと、赤薔薇とか?」自身、それにかのひとの印象からそんな言葉ぽつりと零れ出たのだが。気が付けば胸元にたくさんのローズマリー咲かせ、広く開いた胸から肩口にかけては若葉色の、胴を同色のコルセットで締め付けたドレス姿。しかして肩口の若葉色は腰の切り替え部にて下へと流れ、豊かな水色、濃い花色と裾元にゆくに従って彩り移り変わる見事な布地。さらにスカート部分には空色のオーガンジーたっぷりと使い、裾元には赤薔薇の装飾がいくつも並ぶ。靴もヒールの高い真っ赤な仕様で、首に引っ掛けたネックレスもなんだか豪奢な赤い粒がふんだんに。ヘッドドレスも赤い華で締められたなら、伽羅の纏め髪が引き締まるだろう。右の耳元には夜空と星の煌くピアス。いつもの貝殻飾りでないことにひたすら違和感じながら――花々は口々に言う「ほおらやっぱり紫のローズマリーが映えるわ!」「赤薔薇が良いアクセントね!」「若葉色から花色にかけては私の手柄よ!」言いたい放題だが出来栄えは悪くないと、彼女ひいては彼らのセンスにただただ脱帽しきりなものの。)…これじゃアリスじゃなくて、シンデレラじゃない?(一夜の夢という意味においてそんな感想漏らすのも致し方ないと思うのだが、花園のお洒落さんたちは出来栄えについてひとしきり喋くるばかり。もう帰っても良いかしらんとうんざりしていた娘の瑠璃が、次に向いたのは多分出迎えに来てくれたであろうそのひとの下で――、)…ら、ライ…なんかすごいことになってるんだけど、(華やかな装いなんて、親戚の結婚式で来たイブニングドレスくらい。それも主役じゃないからと暗い色選んだ娘からしてみれば、これはあっと言わんばかりの変身だ。)
ユメ 2020/02/08 (Sat) 00:58 No.2
……いやはや、陛下の気紛れはいつも突然だ。(困ったように笑って言うと、支度を手伝ってくれていた友羊も「本当に」と頷いた。鏡を見ながらモノクルをちょいちょいと直す彼の隣、やはり支度を手伝ってくれていたもうひとりの友羊は「まあ、滅多なことを言うものじゃあないわ!」なんて、くるりとした睫を更に上向け肩を竦める。耳元に飾ったネモフィラの髪飾りをモノクル羊に、やっぱりちょいちょいと直されながら、彼女は「ほら、ライ。タイが曲がっていてよ」と手招きしてくる。素直に腰を屈めると、羊の前足二本が伸びてきた。先の黒いそれらに白いタイの形を委ねていれば「そうだ。ライ、ユメさんは一緒ではないのかい?」と問いが向く。またも素直に頷くのと「はい、できた」と声がかかるのは同時。ひとつ大きく伸びをする頃には、もういつものように緩やかな笑みを湛えていた。)うん。先に城へ向かったみたいだ──…、という訳で、一足先に行くよ。迎えに行きたいからね。毎度助かるよ、ペコラ、キーラ。ふたりはゆっくりおいで。(眼鏡とおさげの彼のひと曰く、ローズマリーの乙女は一足先に城へ赴いたそうだ。それならそれで、迎える役目を他の誰にも譲らねばいいだけのお話。よって友らへ振る手の仕草も、"こういう機会"のたびに世話になる友の家を発つ足取りも軽やかだ。襟元の開いた緩い装いを好む者にとって、正装を求められる場というのは何とも肩が凝る──けれど、あの少女がいるなら別のお話。そうして溜息の歓迎と彼女の居場所を赤の女王から賜って、革靴の爪先は一路、物言う花園へ。城へ出向く機会に乏しい自分でも、あそこの花たちがえらく賑やかだということは知っている。尤も装飾品に顔を輝かせる彼女だから、花々と相対したとて疲弊しきることはないんだろう。よって歩調は急かずに緩やかだ。ジャケットを染めるミッドナイトブルーは夜光の下にあって黒より黒く、歩むたびに後部のテールが揺れた。ウイングカラーのシャツに始まりウェストコート、タイ、胸元のポケットチーフに至るまで純白の装いは、肩こそ凝るけど嫌いではない。白蝶貝と銀の台座から為るカフリンクスよりも、耳朶の星夜を何よりの輝きとして携えながら。向かう道連れに口ずさむ歌は、ローズマリーを含めたハーブの名を四つばかり交えていた。)…………。(機嫌よい旋律を絶やしたのは花を見つけたがゆえ。若葉に空と花色を滲ませるその存在は、赤薔薇の庭園に佇んでいるようであり、紅の花弁に飾られているようでもある。一度足を止め、はて、と首を傾げるも、)ユメ?(そう呼べたのは、声の届く距離からでも真っ先に視認できる伽羅の髪色があったからだ。そして返る声と瑠璃の瞳、お揃いのピアスを瞳に切り取れば、浮上する心地に相好を崩すのも早い。)ユメ!(此方もまた装いこそ平生と異なって、されど薔薇の本質が決して移ろわぬのと等しく、緩やかな笑い方は変わらない。足早に彼女の許へ歩み寄り、目前で再び歩みを止めては口を開く。実に機嫌のよろしい笑み声だった。)ごきげんよう、よい夜だね。とても綺麗だ!
トロイメライ 2020/02/08 (Sat) 14:14 No.5
(そもそも友人少ない娘は誰かと出かける折、時間や場所を待ち合わせて都合付ける、という定番のアクションに恬淡で、自分ひとりでの行動多く、相手にすり合わせようという意識自体が希薄であった。このワンダーランドに来てからはかのひとの訪問受け、共に歩み共に帰るというパターンが定着していたので擦れ違いもほぼなかったし、本日も昼間にはそのひとのかんばせ拝んでいて。ゆえに夜半、まるで高校在学時の全校放送にも似た声轟いたことに驚いて、何事かと足早に城へ赴いた――というのが、ひとり先走った経緯である。そもそも今日のかのひとの宿泊先知らず、全員参加なら城で会えるだろうという楽観もほんのちょっぴり。おかげさまで門前にてトランプ兵に見咎められ、花園へと投げ入れられ、現在。一瞬戸惑ったように名を呼ばわるその次には、いつもと変わらぬゆるやかな笑み見えて、しかしなんだか常より調子良さ気に二度目の名前が星空切り取った宝石光る、耳朶へと。挨拶に対し、娘は足首の上で重たく揺れるスカートにぎくしゃくしながらもどうにか彼へ向いたろう。花たちは「行ってらっしゃい!」「本当に綺麗よ!」だとか後ろから黄色い声色送ってくるものだから、半分振り向いて「お世話さま!」と投げた声はすこおしばかりうんざりした音色だったかも。)うん、こんばんは、ライ。こんな夜もあるんだね。…き、きれいかな?ライも、ふだんとはぜんぜん違うみたい。おとこのひとだってそういう格好しなきゃいけないんだもん、なるほど、いつものエプロンドレスじゃ追い出されるわけだよ。(そのひとの白と黒のコントラストに「タキシードじゃないし、何て言うんだっけ?なんか、かっこいい。」こちらは若草色の地に咲いた胸元のローズマリーに指先乗せて、それにしても、)派手じゃない…?きらきらというか、ひらひらというか…いかにも、大げさというか。(翠から藍への全体のグラデーションも、ポイントに配された薔薇の花も花園の鏡にて確かめたが――ドレスアップの機会だなんて、ほんの小娘には早々与えられるものじゃあない。高いヒールなんて滅多に履かないし、真っ赤を選ぶことも稀。とととっ、小さく一歩ずつ足出してやっとそのひとの隣にまで回り込もう。)…まさか女王さま命令で、踊れ、とか言われないよね?ダンスなんてしたことないよ、私。(少なからず不安抱えながらもかのひとの隣さえ確保しておけば、一先ずは誰かに声をかけられたり、ダンスを申し込まれたりはしなかろうという少々あざとい計算ありきで腕伸ばそう。滑らかにあゆむには、もう少しの慣れが必要だから。――でもちょっとだけ、浮かれている。だって女の子なら一度はみんなが夢見る、)…なんか、おひめさまみたい。ミスター・ローズ、エスコートしてくださる?…なあんちゃって。
ユメ 2020/02/08 (Sat) 21:58 No.10
あっはっは。こういう機会でもなければ着ない類の服だけど、かっこいいなら良かった。(此方へ向き直る彼女から賜った言葉に、はにかんで面持ちを緩めては暢気に笑う。実際、女王陛下の気紛れでもなければ縁遠い装いながら、彼女の言葉は素直に信じることにする。「燕尾服とか、テールコート。キーラがそう言ってた」とも、走る家の家主の名も添えて告げては改めて淑女に目を向けた。)そうだなぁ……いつもの君は可愛いし、今宵の君は綺麗だ。柔らかい色が似合うとは常々思っていたけど、ローズマリーの深い色も君の肌によく映える。それに、ルビーのような赤も。深紅は女性を美しく見せると言うが、なるほど。さすがは物言う花たちの贈り物だ。薔薇もネックレスも、いかなる装飾の赤も、君の瑞々しさを損なうどころか一層惹きたてている……、乙女の清らかさと女性の華やかさが綺麗に調和して、まるで君こそが花園そのもののよう。髪を上げているのも、いつもと雰囲気が変わって新鮮だし素敵だ。蕾が花開く瞬間に立ち会えた気分でもある。それに貝の白だけじゃなく、花の紅も君の髪の美しさによく馴染むと知れた今日の俺はいつも以上に幸運だよ。(舞踏会に相応しい晴れ姿の天辺から足元までを今一度眺め、にこやかに賛辞を告げる。平生以上の言葉が口を突いて出てくるのは、詩人の性というよりは対象が善きものであるからに他ならぬ。さて、いつもより背の高い彼女が隣に来てくれるのを待ち、耳を傾けながら肘を差し出そう。瑠璃を近しく見つめ、願う言葉を受ければ殊更口元を綻ばせ。)星夜の姫君、レディ・ローズマリー、貴女の隣を賜れる幸運に心からの感謝を。……喜んで、エスコートさせて頂きますとも。(花の顔ばせを覗き込むように僅かに腰を屈め、やわりと囁いた。物言う花々にも聞かせはしない宣誓を捧げたならば、いつもみたいに肩肘張らぬ笑みへと返ろう。)ダンスは強制ではないから、安心して。踊りたい気分になったら、その時に大広間へ行くのがいい。中庭は静かで人もずっと少ないから、散歩やダンスの練習をするのもいいね。ラウンジではお茶会が催されている。何か摘みたいなら、そちらに行ってみよう。(きっとこういう舞踏会は未経験なんだろう彼女の意向をまず第一に。屈めていた姿勢を戻せば軽く首を傾ぎ、答えを待ってみる。)
トロイメライ 2020/02/09 (Sun) 11:27 No.16
そうだよね、10日もいるのに、ライのその格好ははじめてだもん。いつもはふわふわしてるけど今日はピッとしてて、ちょっとだけ背筋も伸びたみたい。カフス、いつもの私の髪飾りだったら、お揃いだったのにね。(そう、燕尾服と言うんだった、用意はキーラさんが?納得してそのひとをじっくり眺め回しながら、白蝶貝付いた袖見つけたなら新たなるお揃いの要素見出そう。して、綺麗かとはつい口から出たさりげない疑問符。軽く、エプロン姿よりかは女性らしく見えているだろうか――くらいの気持ちだったのに。出てくる出てくる美辞麗句、とまらない言動によって娘の頬はみごとな桜色へと染まり、よく回る口が決して嘘偽りを述べたりしないと知っているからこそ羞恥は余計に煽られる。「そ、そんなに綺麗に化けられてるかなあ…?」いっそすべてを花園のせいにしてしまった方が、手柄が立てられて物言う花たちも喜ぶだろう。いまはかのひとが訴える熱賛をううんううんとやり過ごし――だって瑞々しさ惹きたててなんちゃら、蕾が花開く瞬間にうんぬん、極めつけは白と赤との対比うつくしいとしたのち本人は“いつも以上に幸運”だなんて、ねえちょっと詩人さん、誉めそやすにも限度があるんじゃあなくて?それなら、)ライは黒かと思ったら、それミッドナイトブルーだね?さりげない演出があでやかなのに、締めるところは真っ白で揃ってて凛々しいよ。いつもゆるゆるっとしてるのに、燕尾の着こなしに慣れてるのって舞踏会やお茶会が多いせい?正装が板についてて、普段よりずっと頼り甲斐がありそう。おとこのひとなのに“艶姿”が似合うみたい。でも、雰囲気はいつもどおりぐんと優しくて…おとなの女のひとが、群がりそうだよね。私がいなかったなら。(口ではこのひとに敵うまいと知りながら、娘は視覚から得られた情報を意地でも言語化してやろうと半ば躍起に。口吻勢いのまま動かすも結局「あれ?言いたかったのはやっぱりかっこいいってことなんだけど」なんて言葉の迷路に嵌るものの、珍しくストレートに賛辞送って。男性に艶姿とは妙な言い回しだが、烏の濡れ羽色から堂々とした立ち姿からぴしりと決めた正装から、娘のくちびるにて忖度なしの表現だ。)私こそ心から感謝しなくちゃ。ミスター・ローズ、あなたがまた見つけてくれたから、心配を安心に変えてお城に入れる。…よかった、舞踏会と言えばダンス、みたいなイメージで…中庭で練習できるならそっちに行ってみるべきかな?でも大広間も見てみたいし、紅茶も飲みたいし。(というかお菓子を摘みたいとは、この付き合いの合間に察せられてもいそうだけれど。まずは「ラウンジからかな?」ちょっと食べてから、中庭でダンスを練習、大広間へ――そんな一連の流れ想像し、かのひとに確認も取ってみよう。何せぜんぶがはじめての経験なのだ、少しずつ色々な場所をと眸輝かせて。)
ユメ 2020/02/09 (Sun) 14:26 No.17
そうしたら……君は、髪飾りを見るたびに今宵の俺を思い出すという訳だね。(いつも髪飾りと、今宵の我が袖と。同じものがあるならば、思い出すも一層容易く鮮やかだろう。賛辞は素直に受け取る性根であるからして、彼女から贈られたそれを、微笑み拝受するも至極自然である。頬を染めた乙女が花の唇から紡ぐ言の葉の、なんて愛らしいこと。うん、うん、と頷きながら、一頻り聞き受けた後に、また少し頬を緩めるのだった。)ふふふ。ありがとう。……黒っていうのは似合うか否かが別れる色だ。俺はもう少しばかり軽い色が良いんだってさ。こういう舞踏会が開かれるのは珍しいことじゃないけど、衣装に着られる事態にはなっていないようだね。よかった。(微笑ましがる笑み息とお礼を始まりとして、一生懸命考えてくれたのだろう言葉に応えよう。改めて瑠璃を覗き込みもして、)いいかい、ユメ。たとえ幾人もの女性が声を掛けてくれてもだ、その中に君がいなければ意味がないのさ。それに……君の隣を誰かに譲るのは、遠慮したいからね。どうか一番近くにいておくれ。(君がいなければ褪せた夜となろう。隠さずに告げて、彼女へ向けるのは矢張り曇りなき微笑みだった。意向を伺った後も弧を描く唇を閉じ、思案げな様子を見守っていた。)君の安寧は、俺のしあわせでもある。君を見つけるということは、しあわせを見つけるに等しい──…それではレディ、まずはラウンジから。……時間はたくさんあるからね。靴と仲良くなるためにも、ラウンジで英気を養ってだ。中庭で散歩と練習をして、それから大広間にしよう。(彼女に直接告げはしないものの、最初の行き先として選ばれるのは──ラウンジのような気がしていた。尤も、慣れぬ場ながら食欲があるのは大変良いことである。自分の隣に歩み寄る際、彼女の歩幅がいつもより狭いとも感じていた。よって思い描いた一連を提案として彼女に告げれば、まずはラウンジへとふたり赴くとしよう。)──不思議なことを言うようだけどね、(とは、目当ての場に辿りつき、共に席に着いた頃合に口にした言葉である。平生と違わぬのんびりした語り口にて、彼女の瞳を見つめながら。)ユメとは、もう……随分と長いこと一緒にいたような気持ちになっている。ほんの十日くらいだろう。もっとずっと昔から、君の隣人であったような……そんな。(女王と約した期日も迫る昨今。けれどそちらは触れず、素直な所感を話題とした。カップを満たす紅茶は色艶も香りも豊かで、ティーフーズのサンドイッチやスコーン、種類も数多なペストリーも、光を纏ったように彩豊かだった。)
トロイメライ 2020/02/09 (Sun) 20:40 No.20
(かのひとを思い出すよすがになるならば、どんな些細も、か細いお揃いとて見逃したくない。そんな娘の気持ち、実に容易く読み取ってしまうひとなのだ。娘にしてみればおとなの男性を有りっ丈褒め称えた心算だが、笑顔で受け、にこにこ頷いてしまわれるのだからあまりに張り合いなく。どころか、自演の自爆を齎してくれたよう。)うう、ライに敵わないのは目に見えてたけど、そこまで平然と…。…真っ黒はたしかに重たいから、キーラさん、ナイスチョイスだね。立ち居振る舞いも、服装も、ばっちりだよ。(言葉尽くしての賛辞に返された羽のような礼をまるっと胸中に流し込んで瞬くこと数回、瑠璃覗き込まれればなんとはなしに真摯な声音。いいかい、と改まった様子にぴしり眸瞠るものの、)…中にはグラマラスなお姉さんや、色っぽい御姉様もいるのに、私が?…うん、でも、ライなら他のおんなのひとじゃなく、私を選んでくれるかもって、ちょっと自惚れがあったな。――…私からも、おねがい。隣にいて。(はじめての舞踏会はイメージばかり膨らむ未知の世界、そんな中の頼りは、ただあなただけなのよっていつもより紅いくちびるが咲いた。)これからも、ライのしあわせで在れますように。(決して小さい願いではないとおもう。けれど今は周囲もざわめきはじめたし、ヒール気を付けながらかのひとの腕借りつつラウンジへ。コルセットで大分食欲抑えられているものの、こういう場所で配される軽食にも興味津々、席着いた頃には薔薇の形のマドレーヌをもう皿へと。柑橘系のフレーバーティー片手に「うん?」なにが不思議なのかとそのひとを凝視。耳に聞き心地の良い、相変わらずのんびりとした声色が実際共にした日数を呟く。)…それを言ったら、私のほうがずっと不思議だよ。ライみたいなひとははじめてで、それだけで胸がいっぱいなのに…どこかで、ライを見つけるのが、私の運命だったんじゃないかってくらい、しっくりくるの。胸に落ち着くの。(彩り豊かな軽食も温かな紅茶も後回し、瑠璃が穴あくほど見詰めるそのひとの薔薇色がいまも輝いているのを見て取って、女王の決めた期限を思い出そう。首を刎ねられてしまうのよ、そう、あと数日のうち月に還らなければ――、)ほんの少しのはずなのに、私ももっとずっとながい時間をライと過ごした気がする。…でもほら、いまはパーティーでしょ?こんなのはじめてだから楽しもう。むつかしいことは、ライ、後にしてさ。(それは、そんな申し出は、迷走と混沌ひた走るこの娘にしてみれば信じられない譲歩の仕方。他人と折り合い付けること自ら提案し、フルーツカナッペ摘み上げたなら「えいっ」なんて、そのひとの口許へ突撃させてみる茶目っ気をも無造作に発揮して。)
ユメ 2020/02/10 (Mon) 12:27 No.29
おや。とても喜んでいるんだけどね。(瑠璃の瞬きを受け、微笑ましがる調子で返す。説得力なんて皆無かもしれないけれど、浮かんだものは言葉に変えていこう。目に視えぬものをすべて拾えるほど人は器用じゃないから。)……自惚れとは永遠にお別れしておいで。少なくとも俺に纏わることはそれがいい。ね。(間近のしあわせを見つめ、開く紅花に笑みを深める。語りかける言葉は永遠に君だけのものでいい──祈るのは自由だ。今は、歩みゆく先さえも心に委ねられている。着席と共に供される物たちのなか、一先ず彼女と同じフレーバーティーを頂きながら、返される声言葉に耳を傾けていた。)……運命か。(命を運ぶ視えざる流転。詩人が好む言葉のひとつを興味深げに反芻し、微笑む面はそのままに、再び傾聴に耽っていたものだけど。"むつかしいこと"に思惟を巡らせていた彼女から、きっと珍しかろう音節が聞こえてくる。某か反応を示すよりも先、向かってくるフルーツカナッペ。瞬くも、すぐに微笑んでは口を開いた。)それもそうだ。(賛同の言葉は短くも、カナッペをぱくりと頂くことで補強としよう。果物の瑞々しさも鮮やかに、抜ける芳香も華やかに。クラッカーの食感も軽く、お行儀よく飲み込んでから「ああ、美味しいね」と、喜色に満ちた声を昇らせた。また紅茶を一口頂いて、「紅茶とも合うなぁ」とも実にしあわせそうに笑い、また瑠璃を見やる。)それでは……パーティーに相応しい話題とは何だろう? 他の詩人たちは陛下にとっておきの詩を奏している頃かな──…、ああ、そうだ。(折角の場に適した話題から、ふたりで探してみるのも楽しかろう。先程まで口にしていたものよりは難しくないはずだ。謎掛けめいた調子になろうがご愛嬌、語り口は何処までも羽根が生えたように軽やかだ。戯れのように、彼女が重たく受け止めないように。)ねえ、ユメ。俺との出逢いを運命と呼んでくれた君。(自分を見つけるのが運命だったんじゃないかと、彼女曰くは大方そうだ。その言葉を此方の都合のいいように受け止め、自らの言葉に変えて呼びかける。チョコレート色のクラッカーにクリームチーズや石榴、胡桃を飾ったカナッペをひょいと摘みあげ「いかが?」とも添えながら彼女の口元へ差し出した。)恋人って、いたことある?(過日に彼女が自分へ問うた、それと同じことを今に尋ねてみる。幸いにしてラウンジの人々は各々の連れに心を向けていて、喧しすぎない賑わいに満ちている。だから他の誰にも聞き拾われることもない。)
トロイメライ 2020/02/10 (Mon) 21:20 No.34
(喜んでいるのはわかるのだけれど、そうっと見守られ、微笑み一切崩れない様が何ともうらめしく。自惚れとのお別れは「できるかな?」心寄せているのはたしか、だからこそ時に憂慮に埋もれ胸を焦がすこととてあろう。自分を信じきることは、いつだってむつかしい。ああ運命のいたずらが――なあんてよく聞くお決まりのフレーズ、いままさに悪戯の中に放り込まれている気分だけれど、だったらかのひととの出会いは不幸中の幸い?)運命じゃなかったとしても、つよく、言い聞かせるよ。これがかみさまの謀じゃあなかったとしても、私たちが出逢ったことには、運命さながらの意味があったはずだって。(月に還る方法はいまだ見つからず、しかしいまこのパーティーではそれすら忘れた様子にて“楽しもう”と言った娘。ごくごくちいさなその決意聞かせた相手に、でも「おいしくって良かった。」すぐに転じて晴れやかな笑い顔を。フルーツの乗ったクラッカーはフレーバーティーにも合うだろうし、娘の手元のマドレーヌもはやく食べてと誘うがごとく。感想聞いて「さすが。パーティーに慣れっこの、シェフのお手製かな?」どういうひとが作ったのか想像しながら、しあわせそうな笑み見せてくれたそのひとの赤茶に応えて――、)えっ。ライも女王さまに、詩とか朗読しなくていいの?あっ。もしかして私の世話に回されたせいだったり、するよね…!(他の詩人が女王の相手をしていると聞けば青くなり、原因に気付けば白くなって、娘は「あちゃ…」やっちゃったなあと考え、しぶい顔。)もしライも詩を詠まなきゃいけなかったら、ちゃんと言ってね。私も横で聞きたいし。あの女王さまの「首を刎ねよ」がはやまるのは、遠慮したいからさあ…。(軽やかに紡がれるそのひとの声に耳澄ませ、平素より闊達にぺちゃくちゃおしゃべりに興じるこたび。このひととの“やりたいことリスト”にもきっと記されていたであろう「夜のパーティーに行ってみる。」は女王主催というハプニングに見舞われたものの、舞踏会に変わりなく。ゆえに、いざ楽しまんという心裏で「たべる」と頷き、彼の指先からカナッペぱくりと口内へ。朱唇ぺろりと舌で舐め取って――こいびと、ですって?いたことなんか、あるもんか。)…おとこのひとって言ったら、お父さんかお兄ちゃん。くらいの程度だったですよ、私には。(急な踏み込みにドレスを着たときみたいにぎくしゃくしながら、妙な敬語調やめて「ない。いなかった」と首を振ろう。恋は決闘です。そう言ったのは誰だったか、)――…ライはその…恋人はいなかったって言ってたけど。恋は…したこと、あった?(以前聞き損ねてしまった小さな疑問口吻へと乗せたなら、巧みな詩を作るそのひとへ。)
ユメ 2020/02/11 (Tue) 16:21 No.42
(運命よ、お前は月のよう。決してひとつの形に収まらず、気紛れに輝いては翳る。運命よ、お前は後ろ髪を持たぬと聞いた。決してこの手で掴めず、気紛れに擦りぬけては舞い戻る。さて運命よ、お前にその名を授けるのは誰か。女王か神か、ならば当事者の意思は何処にありや? 清潔なクロスの下か、磨かれた茶器の狭間か。それとも紅茶に溶け込んでいるのか、フィンガーフーズの宝石か。答えは見つからず、それでもカナッペは美味しい。紅茶の香りも損なわれるはずがなく、何よりも、一番近くに在る人は変わらない。くるくると色を変える顔ばせを眺め、渋い表情に行き着くところまで見守って。憂慮を言葉として受け取れば、安穏と笑む息をふふと流し、)うん? ああ……あれはね、やりたい奴が行ってるさ。それこそ義務じゃないし、そもそも俺は君と一緒の方がずっといいからなぁ。(呑気とも取れよう言葉を、やっぱり冗句のようにラウンジへ融かしていく。女王への詩詠を望む輩なんて、それこそ数え切れないほど存在するはず。そんな事実を抜きにしたって彼女の隣を望み、お喋りに興じよう。きっと明日の朝には"やりたいことリスト"に、達成済の丸印がひとつ増える。それを喜ばしいことと、心から思えるような夜にしよう。)──そっかぁ。(楽しい思い出の一片になるかは定かじゃない問い。共に捧げたカナッペは、赤い花へ包まれていった。レディに尋ねるにしては不躾も過ぎよう質問に、ぎこちなくも答えてくれる姿は純粋にいじらしい。言葉遣いが平時と異なるのは微笑ましい。それも元に戻り、首を振る姿を見納めれば、安穏とした相槌を打った。)恋の経験かい?(そうして問いが返れば、微笑みのまま軽く首を傾ぐ。それから然したる間も空けず、弧を描く唇をやわりと開いた。)ああ、あるよ。 俺はね、四六時中──…ファンタスマゴリアに恋をしているのさ。(僅かに浮上して、楽しげな声で編む返答。それが彼女の聞きたいところかと問われたならば、的を射ていない可能性が高いと返すだろう。けれど嘘や誤魔化しを口にした訳でもない。だから反応を待たず、瑠璃を見つめては言葉を続けていくのだ。)答えになっているかな? それとも……たとえば君のような、女性に恋した経験の話かな?(眼差しを外さないまま問う声調は、些か戯れを帯びている。)それを此処で明かすのは、何だか照れるなぁ。後で中庭に行った時にでも……聞きたい気持ちがあってくれたなら、君だけに打ち明けよう。
トロイメライ 2020/02/11 (Tue) 21:04 No.47
ファンタスマゴリアにはライ以外にも詩人がいるんだ…や、当然だよね、うん。…私がライを独占してても怒られないなら、それでいいや。ライもそう言ってくれることだしね。(つい己の関わる範囲にのみしか考えの巡らない、細やかな配慮に欠ける娘だが、それが許されているのならば折角だしと甘えてしまおうか。安穏と綻ぶかのひとの緩やかな空気は、冗句ともども溶けてゆく、そんな円やかな時間が惜しかった。否、素直によろこべば良いはずだからと、この先案じる憂いはすっかりかんばせから取り払って。)そうだよ、そう。自慢じゃないけど、お兄ちゃんと結婚する!が私の恋愛遍歴だからね。映画のラブシーンとか、お父さんとは一緒に観られないくらいだからね。(映画、銀幕と言って通じなければ「自宅で見られる演劇みたいなものかな。」と注釈挟むが、それにしても自分でもあんまりな遍歴なのでこの際笑い話にしてしまおうと。ぶすっとした顔の中に隠し切れない笑窪作って、くすりくすり漏らしながら「幼稚でしょ?」なんて同意求めてみたり。消えたカナッペの先、微笑みながら傾げられたそのひとを見やる瑠璃には、つい熱いものが混じろう。――恋の経験かい、あるよ。当然だろう、こんなに魅力的なひとだもの、恋のひとつやふたつきっとと思ったのちのそのひとの対象は、このファンタスマゴリアだと。ぱちり。上目遣いに瑠璃瞠れば「ライ、ずるい」とくちびる尖らせ、しかしどうしようもない安堵に広く晒している肩をゆるゆる下げよう。答えになっていないのは勿論だったけれど、娘に対してそんな風に誤魔化せるそのひとは、ぎゅっと胸が締め付けられるほどおとなのようだった。)もう、緊張したのに、肩透かしくらった気分だよ。聞きたい気持ちはきっと変わらないと思うから、ひとまずこのマドレーヌを食べてからね!(薔薇の形のそれをぱくり、言った通り少しの緊張ほどけたせいもあって、急に湧いた食欲満たすためチーズタルトも頂こう。フレーバーティーひと息に飲み切れば立ち上がり、実はテーブルの下にてこっそりと足に力を入れ、ヒールに慣れようと努力もしていた娘である。目指す中庭へゆくまでに随分と歩き方は様になっているはずだ。ひそりとした空気に満たされると、遠くに音楽――、)わあ、星空の下のステージみたい!(大広間で踊りを披露する前に、この中庭にてくるくる回るのだけというのも十二分に魅力的な誘いだ。さて娘はステップのひとつも知らないが、)ライは、ダンスは得意?(だったら教えて欲しいと強請るのは、ここでも大広間でも、やっぱりちょっとだけ優雅に踊る姿に憧れちゃったりするからで。)
ユメ 2020/02/12 (Wed) 17:25 No.54
いいじゃないか。可愛らしいと思うよ。(少女の恋愛遍歴は、どうやら身近な人に対して編んできた模様。聞けば純粋に微笑ましく思い、「えいが?」と首を傾げた一時こそあれど、屋内演劇らしきものと知れば興味深げに耳を傾けたりもした。可愛い思い出は彼女にとっても温かな記憶であるようで、さすれば連られて笑みを深めるも当然。そのままの調子で自らの恋愛遍歴を口にしたところ──拗ねたような、そんな反応を頂戴したものだから。つい、笑息を流して。)もったいぶるのが詩人って生き物さ。(なんて、戯れ調子で嘯きもする。下がる肩も顕著な居住まいに、どうしたって頬が緩んでしまう。)ああ、いいとも。君が望むなら何だって叶えてみせよう。(魔法使いではないけれど、望む心に偽りはなかった。ゆえ、軽やかに言いきっては此方もカップを干した。再び肘で彼女の手を拝受して、連れ立って向かうは中庭だ。最初の頃と比べてヒールに慣れてきたのだろう、痛みを堪えている素振りも伺えなければ微笑みも絶やさず、そうして静まる空気を頬に受けながら彼女へ顔を向けた。)そうだなぁ。とびきり上手という訳ではないけれど、ダンスは好きだよ。(得意と豪語はできない手腕であるものの、手ほどきに難色を示す気質でもない。よって先ず、「という訳で」なんて前置きを挟みつつ彼女から一歩距離を開ける。エスコートの触れあいはその時に離れてしまうだろうけれど、その代わり、星夜の姫君に向きなおろう。そうして慣れた仕草で胸に手を当てて、腰を折った。)今宵最も眩き星は我が前に──…麗しきレディ・ローズマリー。どうか私目と一曲を。(そう告げては背筋を正し、片手を差し伸べた。もしも彼女が手に手を重ねてくれたなら開いたばかりの距離を戻し、もう片方の手をドレスの腰裏に添えて優しく引き寄せよう。「こっちの手はここ」「この手はここに」と、手の置き場所に始まり「ゆっくりでいいから、せーので右足を前に出して。俺の爪先を追っかけるみたいにね」など、初めて踊る彼女にも安心して練習に臨んでもらえるよう、言葉や眼差しを欠かしはしない。華やぐワルツは遠く、だけど輝きは広間のシャンデリアに決して劣らない星月夜の麓。誰かの語らう声は聞こえずに、月の名や色を帯びる花々だけが見守っている。心急くこともなく、ふたりの世界に閉じこもれるんだろう。)
トロイメライ 2020/02/12 (Wed) 22:07 No.58
それね、ライはずうっと余裕で、まるで小さなおんなのこを扱ってるみたい。…詩人さんの、よくない癖だなあ。はやく知りたいのに、出し惜しみするなんて。(いまだ少女と呼ばれる年頃なのは自覚するところだが、娘としては日銭稼いで食べていたのだから、もう何度目かの“可愛らしい”にはどろどろと甘やかされてゆくみたい。もったいぶる生き物はそれから、なんでも叶えてくれるだなんて言うんだもん、逆に願い定まらず――「いまのとこ、目下のお願いはダンスかな?」一歩分離れて向き直り、胸に手を当てる挨拶へは、スカートの両方を持ち上げながらお辞儀することで返そうか。何かのテレビ番組で見たような見なかったような、知識とも言い難い曖昧なそれが正しいのかもわからないけれど。)それでも私のいた世界での普通のひとよりは、ずっと上手だし、教え方もわかりいいとおもうよ。ダンスって、趣味かプロかで大きく変わるらしいし。(あやふやな聞きかじりだが、競技ダンスのプロはアスリート並みの身体作りをしているらしい。踊っている映像を見たことがあって、その時は普通にひらひらのドレスきれいだな、くらいの印象だったが。いざ自分で踊るとなると、ドレスは重たいし靴も履きなれないし、ほんとうに踊れるの?なんて、胸の中では半信半疑。)…赤薔薇のひとみの詩人さん、ミスター・ローズ。長夜のあいま、私に魔法をかけてちょうだい。(頬にちいさな緊張貼り付け、かのひとの手をそっと取って、なるべく背筋を伸ばしながら指示の通りに手の場所、足の場所とぎこちなくもステップ踏んでゆこう。「あ、足踏んじゃったらごめんね…!」先んじて謝っておいたけれど、下を見ないようつむり上げながら“踊りはじめて”みたのなら、そのひとの足はただの一度も犠牲にならずに済んだはず。意外とこの手の才能があったらしく、ナチュラルターンを回ってウィスク、シャッセシャッセ。娘が知らない足捌き教えてもらいながら組んだホールドの中で、いま、踊ってる――と。それは僅かではあるものの、一片の感動だ。)月明りの下でワルツだなんて、この先一生ないだろうなあ。…ライ、やっぱり教えるの上手だね。星を楽しむ余裕も出てきたくらいだよ。(先生が良いと生徒の伸びしろも良い、そんな風に誰かが言ってたっけ?月の欠けてるのより、周りの星々のまたたきへと視線注ごう。だってそうでもしなきゃ、残り時間を気にしてしまうから。或いは抱き合うかたちで踊るひとの近しいかんばせに、息呑んでいることいまは隠しておきたいから。)
ユメ 2020/02/13 (Thu) 11:28 No.64
(踊りだす前に彼女が可愛い心配をするものだから「その時はその時さ」って、軽やかに笑った。何に於いても"初めて"は強く印象に残るもの。思い出として根付くもの。だったら初めてのダンスだって素敵な記憶にしてほしい。老いもしない身ながらに祈らずにはいられない。たとえば此の先幾年も経て、君が少女でなくなるいつかが来るのだとしてもだ。星の瞳を輝かせ、薔薇色に頬を染める、青き時代を思い出してくれたらいい。星が瞬くように、花が綻び咲くように、君を優しく暖める夜を贈れたらいい。微笑むこの面差しも、瑠璃を見つめる眼差しも、共にした過日と何ら変わりないだろう。けれど芽生えた想いは瞳に無二の情を宿らせて、欠ける月とは逆しまに心を満たしていく。遠き旋律を聴きながらふたりで描く舞踏の輪は、不恰好な中断を一時も差し挟まずに繋がっていく。「へえ、ユメ。とても上手だ」なんて、ステップの合間に昇らせた声は、純然たる賞賛を湛えていた。)ワルツは楽しいものだからさ、この先も君に踊る機会が巡ってくればいい……とは思うけどね。上手く教えられたなら何より。でもね、ユメの覚えが良いからでもあるよ──…俺だって、君の瞳の星を楽しむ余裕を持てるから。(舞踏に苦手意識を抱かせずに済んだなら幸いであるし、幾ら教え方が適切でも、学ぶ方の気持ちや体がついてこなければ上手くいかないものだ。その点、彼女は飲み込みが早い。それこそ若芽が水を吸い上げるように、瞬く間に上達しては咲き踊る。彼女の言葉を真似るように、楽しむもののひとつを囁いて──そこで一曲が終わった。踊る足を緩やかに止めて、「少し休憩しようか」と微笑み告げたまでは何ら不自然ではなかっただろう。しかしホールドの近しさは自ら解かず。結んだ左手とて、ゆっくり降ろせど彼女の右手は離さない。細い背に添えていた右の掌も、乙女の腰裏に移ろわせるばかり。距離も触れあいもそのままに、瑠璃を見下ろせば弧を描く唇を開いた。)……俺はね、人は誰しも……"本当の恋人"というものが、いるのだと思っている。それがどんな姿形をしているのか、定義や実体は人それぞれだろうけど──…、たとえば俺にとって、その恋人はファンタスマゴリアだった。そして俺は、愛しい恋人の全てを俺の言葉で具に描きたい……そういう夢を、抱いている。(ゆっくり語るそれは、ラウンジで勿体つけた話題の続きであると伝わるだろうか。分からずとも良かった。ただ耳を傾けてくれたなら、十分だった。眸を笑みに撓らせてたったひとりの少女に注ぐ眼差しは、幸の温さを孕んでいる。)でもね。今は……ユメ。君を描きたいと思っているよ。心から。(何ともまあ婉曲な言葉になったことだと、思いこそしても反省はしない。伝えたもののなか、過去形にしたもの。していないもの。その点も含め、今の言を如何様に受け止めるかは彼女の自由なのだから──それにだ。口にした言葉の解説をする度胸は持っていない。)ねえ、もう一曲踊ろうか。それとも広間に行ってみる?(だから、新たな曲が聴こえてきたのに便乗した。淡いはにかみを湛えた面持ちで、そんな風に問うてみよう。)
トロイメライ 2020/02/13 (Thu) 21:06 No.68
(若草の匂いに遠くの音楽、月明り照らす中庭に星々のまたたきも添えられて、ああまるで私たちを主役にしたステージみたい。このワンダーランドでどれほどのはじめてを、かのひとと共にしただろう。今宵はその中でもいっとう思い出深く刻まれるであろう舞踏会、ダンスのステップひとつひとつ身体に馴染ませて、ふふんとわらった。)はじめてにしては上手なのって、体育が得意だったからかな?ほんと、ワルツって楽しい。先生も良かったし、生徒も良かったってことだね。…私のひとみかあ…いま、ものすごくベタなセリフが浮かんじゃった…。(眸細め、名台詞思い浮かべて含み笑い。映画のないこの世界には流行語なんかあるのかしらんと一時意識を逸らしながらも、かのひとの足先追いかけるように一歩一歩とステップを。音楽の終わりには自然と身体も止まったが、そこで離れるべきカップルはホールドを組んだまま。娘は瑠璃に疑問浮かべ、そのひとの真意探るべくさらに上向こう。「ライ?」なぜ離れないの、なんて野暮を言う前に、彼の言葉が耳朶を震わせたので息潜めるよう呼吸をちいさくして。恋人はファンタスマゴリア、恋人のすべてを言葉で描きたい、描き切るのが、このひとの夢。)…さっきの「恋したことあった?」のつづき?ライは本当にファンタスマゴリアがすきだね。自分の世界をそこまで愛せるって、すごい。ううん、夢を抱いてそれを追えるっていうのが、もう、すごいんだ。(“本当の恋人”の姿がいま生きている“世界”だなんて、なんて壮大だろう。言葉だけでその恋人を描きたいだなんて大望、抱けるだけで素晴らしい。だから「でもね」と続いたそのひとの言葉に、娘は「うん?」首を傾げ、返答するには時間かかろう。世界に恋してるひとだ、恋したものを描きたいのだと直訳するのなら、いまは君を描きたいよというのは――、)…ライ、あのね、私これまた自慢じゃないんだけど、ばかなの。ろくに勉強してこなかったし、そもそも頭が悪いし、むつかしいことはわかんない。だから…だから、ちゃんと言ってくれないとやだ。(やだよ、とはっきり伝えながら瑠璃にうすく幕を張ろう。好い気になって誤解だと訂正されるのはいやだ。勘違いして傷付くのもいやだ。妙に過去形であった理由を知るのもいやだ――厭だけれど、悪路に心絡めとられ、そのひとと共にいるのに笑いあえなくなってしまうのは、もっといや。)教えてくれなきゃ、ここから動いてあげない。ねえライ、ライは私に――…恋してくれてたの?(ああいやだ、過去形にするのが。なってしまうのが。でもそのひとがあまりに面映ゆいかんばせで問うから、どちらの選択肢も選ばずに。娘は組んだホールドの中でそのひとの温かさ感じつつ――背筋ぴんと張り詰める音、耳の奥底に響いたか。)
ユメ 2020/02/14 (Fri) 12:09 No.76
(いかなる花より芳しく咲き匂う乙女の笑みは、今宵この瞬間がどんなに遠くなっても想い出せるだろう。星より眩く、花より艶やかに、この世のどんなものよりも鮮烈に。人は本当に素晴らしいものに出逢ったとき、言葉を忘れるという──けれど、ならば、彼女を前にして時に言葉を忘れ、時に溢れさせる自分は一体何と出逢ったのだろう。長らく愛しつづけた此の国の素晴らしさは欠片も損なわれていないというのに、知り合って十日ほどの少女を眼界の中心に捉えた途端、国で一番艶やかな薔薇も、匂い咲む百合も恥らっているように思えてならない。踊る足を止め、ホールドを解かぬまま尚も想う君よ。瑠璃に疑問が浮かぶのは当然だろう。疑問符をぶらさげた呼びかけへ返したのは、ちょっとした昔話と夢のお話で。)そう、あの話の続き。(応えを受ける合間に挟んだのは相槌ひとつきり。それからは返る言葉に耳を傾けて、純粋な賛辞を灯してもらって胸裏は温まった。此処で彼女が肯定をくれたからこそ、新たにゆめみる対象を口ずさめたのだと思う。逆接を前置きに、綿飴みたいに曖昧な言葉で包んだ想い。星夜の煌く耳朶に触れただけで満足だったはずで、だからこそ自己満足に微笑んでいられたのだ。しかし誘いて応えを待つも、紅く色づいた唇から昇ってきたのは"もう一曲"でも"広間"でもなくて。)…………。("やだ"と、そう聞こえて目を丸くする。微笑みも抜けた面で、浅い水の底に沈む瑠璃を見返した。暖かな夜にぴんと冴える声は、間違いなくこの心臓の一番柔らかな箇所を叩く。沁みる。問われれば先ず、真面目な面持ちで沈黙を敷くこと数瞬。決して目線は逸らさずに、真摯な表情で彼女だけを見ていた。そして、)──…女の子に、言わせてしまったなぁ。(呟くと同時に苦笑い。だって明示を避けた言葉が、他ならぬ彼女の唇によって顕わにされたのだから。男として情けなくもあって、どうしたって眉を下げた微笑みを最初に返してしまう。けれど下降の気配はすぐに面から拭い去り、擽ったげに眸を細めては唇で弧を描く。今ばかりは何ものもふたりを別てぬと信じたがるように、彼女の指先を取る掌にそっと力を込めて。そうして笑み綻ばせる口唇を開こう。自分の心の最たる理解者は自分自身に他ならぬ。だからもう躊躇わない、隠さない。)そうだよ。好きだよ、ユメのこと。(月の光よりも柔らかく囁こう。月の香よりも匂い咲く想いを、大切に音へと変えよう。)俺は……君との出逢いを。君に恋をしたことも、運命だと信じている。(この出逢いを運命と呼んでくれた君へ、その心の一番深くへ、刹那よ今ぞ根を張り給え。言葉はいつか腐すけれど、想い出の花とは忘れるまで咲き続けるものだ。ならば枯れませんように──祈りながら緩やかに腰を折り、繋ぐ手を軽く引き寄せて。瞼を降ろしたならば、瑠璃の御前にて手の甲に口づけよう。花びらのよう柔らかなひとひらを、乙女の肌かグローブに降らせたい。)
トロイメライ 2020/02/14 (Fri) 21:34 No.81
(娘はいつだって迷っていた。どうして自分が生まれたのか、どうしてこの世界に生きているのか、或いはどうして死んでしまわないのか――生きる意味とは?なんて、誰に聞いて回っても明白にはならないし、あの子ちょっと変わっているわよと陰口叩かれるのにもすっかり慣れ切って。学校ではろくに友人も出来ず、母が亡くなってからは更に周囲との隔たり大きくして、継母が来るころには不良のレッテルを貼られていたくらい。でもそんな日常が、平凡に過ぎる娘が、このファンタスマゴリアでは月から落っこちてきた“アリス”で、いま庭を照らすその月明かりの下、花の匂いに囲まれながらかのひとの腕の中にいられて――胸がいっぱいだった。呼吸がとまってしまいそうなくらい。まともな思考から、ひどく遠のくよう。だって、私のことが好きですか?なんて尋ねたのだ、どうか顔を見ないでくださいとばかり逃げるつもりで下向いて。でも、だけど、尋ねずにはいられなかった。誤解でも勘違いでもないのなら、そのひとに、そのくちびるで、好きだと言ってほしかった。だから。)…おんなのこだって、言いたいことを言うよ、ライ。だって私、こういうときの正解も知らないんだもん。ライが自分から言ってくれるのを、待つべきだった?(けれども、そんな風に先延ばしにはできないふたりだ、ゆえに娘は早々に答を求めての言葉を放つ。ちょうだい、ちょうだいと何度も強請るなんて、みっともないかもしれないけれど――ぐんと、心も身体も距離を縮めるつもりでいつかのようにそのひとの胸へと己のつむり預けよう。手に力込められたなら握り返し、かのひとの心音聴きながら肝心の一言を受け止める用意を。月光よりも柔らかく、花の香りより甘い、そのひとが囁いてくれる言葉ぜんぶを、何度だって胸の内で繰り返せるように。)…うれしい。うれしいよ、ライ…ありがとう。こんな私をすきになってくれて、本当にありがとう。(ぐすり、すこおしばかり涙声になって、ちょっとだけ鼻を啜った。このワンダーランドに来たのには意味があるはずだと、月に帰る方法と一緒にそれも探す心算であった娘だが、いまだ答見つからず。それでも今夜ばかりはすべて忘れて楽しもうとしたのだけれど、こんなに嬉しく、また寂しい告白を受けるとは思いもよらない。屈んだひとは娘の手を取って口付ける。月に還ろうが首を刎ねられようが、ああどうか、どうか。)………私も、ライのことが、すき。この恋はきっとそう、運命のはずだから。忘れない。憶えていて――…私がいなくなった、あとも。(いまは低い位置にある薔薇色に向けて「どうか、くちびるに。」そう訴えて、淡くわらった。)
ユメ 2020/02/15 (Sat) 10:49 No.84
いいや、待たなくても全く問題ないさ。女の子だって誰だって、言いたいことは言うべきだとも思う。……そうだな、憶えておいてほしいのは……男って生き物が、格好つけたがりだってこと。(遠回しな言葉を選んだ事実を、優しさだなんて決して言うまい。ただの逃げだったと言って差し支えないというのに、彼女は自分の言葉を求めてくれる。胸元で預かる小さな頭の持ち主は、夜に在って何よりも温かい。絶えず心へ明かりを灯してくれるたったひとりの少女へと、決して逸らさぬ言葉と眼差しを贈ろう。君が好きだと、詩を編むために口づかせた響きは、舌先や唇を甘く痺れさせてくる。涙声を聴いた瞬間にこそちょっとばかり焦ったものの、次がれる言葉に芽吹いたものは穏やかな様相をしている。うれしい、ありがとう、 すき。間もなく別たれるのだとしても──運命だって、そう言ってもらえたならば歓喜が芽吹く。 ああ、そうだ。こんな風に。誰かと想いを通わせて、手を取り一緒に生きてみたかった。他愛ない話で笑いあってみたかった。喩えいつかに別たれるのだとしても、黄金の昼下がりのように燦然として鮮やかな、そんな縁をずっと希んでいた。 いつからだろう? ずっと。ずっとずっと前から。 自問に答えたのは己の心か魂か、それとも。解は見つからずとも問題ない。何故ならば、今も眼前に咲き匂う花の顔ばせがある。星の瞳は自分だけを映してくれている。月下に薔薇色を孕む眸をやんわりと撓らせて、多幸に弧を深める唇を開いた。)好きだよ。忘れないよ、憶えていよう。いつまでも、いつまでも──…君もどうか忘れないで、憶えていて。君に恋する男のことを。(今ぞ願わずにはいられない。愛しきローズマリー、花に託された言葉のよう、いついつまでも想い出を抱いていて。自分もきっとそうしよう。永遠に憶えていよう──永遠にだなんて、到底不可能と思えることも、意思あらば祈りに終わらないと信じられるから不思議なものだ。だからきっとどれだけ月日が巡っても、君と歩いた道を見るたびに君を思いだす。空を仰ぎ、大地に寝転んで。詩を綴っても、リュートを弾いても。どんな時も、君と見つけたしあわせの欠片と再会するたびに君を想う。紅き唇の訴えに心擽られ、一方で淡い笑顔には胸が締め付けられるよう──だけど、ほら"初めて"は強く深く焼きつくものだから。"大丈夫"って言う時みたいに柔く笑って、贈ろうじゃないか。想い返すたびに夜より優しく、夢より暖かく。花より芳しく、星より鮮やかに心へ蘇る。そんな口づけを、君だけに。)
トロイメライ 2020/02/15 (Sat) 20:59 No.85
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