いいや、待たなくても全く問題ないさ。女の子だって誰だって、言いたいことは言うべきだとも思う。……そうだな、憶えておいてほしいのは……男って生き物が、格好つけたがりだってこと。(遠回しな言葉を選んだ事実を、優しさだなんて決して言うまい。ただの逃げだったと言って差し支えないというのに、彼女は自分の言葉を求めてくれる。胸元で預かる小さな頭の持ち主は、夜に在って何よりも温かい。絶えず心へ明かりを灯してくれるたったひとりの少女へと、決して逸らさぬ言葉と眼差しを贈ろう。君が好きだと、詩を編むために口づかせた響きは、舌先や唇を甘く痺れさせてくる。涙声を聴いた瞬間にこそちょっとばかり焦ったものの、次がれる言葉に芽吹いたものは穏やかな様相をしている。うれしい、ありがとう、 すき。間もなく別たれるのだとしても──運命だって、そう言ってもらえたならば歓喜が芽吹く。 ああ、そうだ。こんな風に。誰かと想いを通わせて、手を取り一緒に生きてみたかった。他愛ない話で笑いあってみたかった。喩えいつかに別たれるのだとしても、黄金の昼下がりのように燦然として鮮やかな、そんな縁をずっと希んでいた。 いつからだろう? ずっと。ずっとずっと前から。 自問に答えたのは己の心か魂か、それとも。解は見つからずとも問題ない。何故ならば、今も眼前に咲き匂う花の顔ばせがある。星の瞳は自分だけを映してくれている。月下に薔薇色を孕む眸をやんわりと撓らせて、多幸に弧を深める唇を開いた。)好きだよ。忘れないよ、憶えていよう。いつまでも、いつまでも──…君もどうか忘れないで、憶えていて。君に恋する男のことを。(今ぞ願わずにはいられない。愛しきローズマリー、花に託された言葉のよう、いついつまでも想い出を抱いていて。自分もきっとそうしよう。永遠に憶えていよう──永遠にだなんて、到底不可能と思えることも、意思あらば祈りに終わらないと信じられるから不思議なものだ。だからきっとどれだけ月日が巡っても、君と歩いた道を見るたびに君を思いだす。空を仰ぎ、大地に寝転んで。詩を綴っても、リュートを弾いても。どんな時も、君と見つけたしあわせの欠片と再会するたびに君を想う。紅き唇の訴えに心擽られ、一方で淡い笑顔には胸が締め付けられるよう──だけど、ほら"初めて"は強く深く焼きつくものだから。"大丈夫"って言う時みたいに柔く笑って、贈ろうじゃないか。想い返すたびに夜より優しく、夢より暖かく。花より芳しく、星より鮮やかに心へ蘇る。そんな口づけを、君だけに。)
トロイメライ〆 2020/02/15 (Sat) 20:59 No.85