あっ、今でももちろん首は刎ねられたくないけどね?!それでも私はヒューくんに会えて良かったなって思うの。き、……危機感ない、のはわかってるけど……。(水に沈んでいくみたいに語尾はぶくぶく泡のように小さく消えていく。童話のように泡になって消えてしまえたら楽なのかもしれないけれど、自分は泥臭くても夢を追いかけて生きることを選んだから。それを、なんとなしに汲み取ってくれている彼へまっすぐ強い眼差しは逸らさないまま――)そう。私、それでも戻らなくちゃいけない。夢を追いかけようと決めた小さい頃の自分と、約束は違えたくないんだ。それは責任感とかじゃないと思うんだけどね、約束は人を強くするためにあるおまじないだと思うし。(結果的にこの国に落ちてきたけれど、それでも咲夜麗花の人生は終わっていない。いつか帰り道を探して、元の世界に帰ることは自分の希望でもあるしそうなろうこともなんとなしに気付いているのかもしれない。それでも彼とこうして出会えたこと、場所でも言葉でも『自分』という存在をいつだって探し当ててくれること、全てに感謝の思いは満ちている。)ありがとう、ヒューくん。認めてもらうことってこんなにもあったかいんだね。それとも、すきがあったかいのかな?(にこやかに微笑みつつも、最後は小首を傾ぐ咲夜には分からなかったのだ。眠れない日に飲むあたたかいココアのような、甘くて優しい温度がどうしてここにあるのかが。それは自分の嫌なところさえも受け入れてくれるところなのか、認めてくれたところなのか。それとも別の理由があるのか。)う、うわわわっ…!ちょ、ちょ、ヒューくんってば……も~!(容易く持ち上げるもので、まるで背中に羽が生えたみたいだ。なんにもこわいと思うことなんてなかった。驚きに幾度かぱちぱちと瞬きしたものの、やがては仕方ないんだからと言わんばかりにくしゃりと笑って、無邪気ないじわるを受け入れよう。なのに、小悪魔のように問いかけられれば再び瞼はぱちくり。)う、え…?あ、えっと……――しばらくはこのままでいい、のかも……?(それは曖昧な願いだっただろうか。ワンダーランドはみぃんないじわるだ。月から落としたり、首を刎ねろと言ったり、嫌な記憶を思い起こしたり、こうして無邪気に笑ってみせたり。いじわるだけど、ありのままの咲夜麗花としてを受け入れるこの世界を自分はなによりも望み、そして好いている。好きというのはあたたかい温度らしいのだ。彼の透き通る綺麗な肌、額がうっすらのぞく前髪へ唇を寄せて、さん、にい、いち。ゼロ距離だった熱はほんの一瞬で離れる。まなじりをへにゃりと下げて柔く笑い、彼の表情が如何様に変わるのかはこのあとのお楽しみにしておこう。なにせ、体にも、心にも羽をくれる彼の存在にどう感情表現したらいいのか、咲夜は知らなかったから。心がぽかぽかとしてくすぐったい、そんなあたたかさから離れることは今はまだ出来そうにないから――まっすぐの心は言う。「すきだよ」。)
レイカ〆 2020/02/11 (Tue) 17:16 No.105