(不思議の国に迷い込んだアリスの戸惑いなんて何一つ知らないで、抱えた身体をぐるぐる振り回す少年はすっかりダンスパーティ気分。普段は薪を運ぶだけで疲れたもう嫌だと唇を尖らせているのに、腕はちっとも重さを感じていないみたいだった。もしかすると日が暮れた頃合にまとめて疲れがやって来るかもしれないけれど、それはそれで面白い。風を含んで膨らむギンガムチェックと同じ分だけ胸をふくらませる感情は、きっとピンク色をしているに違いない。)……! 笑った! そっちの顔もいいね。(緊張に揺れる瞳の動きも、怒っているみたいな表情も、もう少しがんばりましょうなおしゃべりも、それが彼女を作る一部であるならどれもがチャームポイントに思えるから。まとめて全部に花丸をつけてあげたい。二人きりのダンスパーティは百を五回数える頃に漸くおしまいを迎え、少女の爪先も地面と再会を果たしたことだろう。立ち止まった途端に回り出す世界が元通りを取り戻すまでは、互いに酩酊しているかのような足取りになってしまったが。回っていたのと同じだけの時間が経てば、「ナルの国ではやっぱりナルが一番かわいいの?」なんて疑問をぶつける余裕も戻ってくるはずだ。)なんでお前だけ大丈夫なんだよっ!(とは呆れ顔のごネズミに。そうして小さな鼻を指先でつついて抗議をしていたら、突然の申し出に思わずひとりと一匹で顔を見合わせてしまった。小さな勇気を振り絞ってやっと言葉にしたんだろうことは、彼女の様子を見ていれば分かった。コルネにとっては当たり前のことでも、それを一生懸命に伝えようとしてくれていることがたまらなく嬉しくて、向き合う表情はココアに乗せたマシュマロみたいにとろんと溶けていただろう。)もちろ…………ってこらー!おれが一番におともだちになろうと思ったのに!ずるいずるい!ずるいー!(「もちろん喜んで!」遮るように鳴き声をあげたネズミに地団駄を踏みたい気持ちになる。だけどコルネはスマートでジェントルな住人なので、それ以上、したり顔のネズミを責めることはしなかった。大切なのは順番じゃないからだ。紺色のジャケットの襟元を正して、背筋も確と伸ばしたならば、彼女に向けて手のひらを差し伸べよう。妙に恭しく畏まった素振りで。)もうおともだちだと思ってたよ。……きみの自慢のともだちになるって約束するよ、ナル。改めてよろしくね。(伸ばした手に彼女の手が触れたなら、ぎゅっと包んでそのまま外へと歩き出すつもり。一向に離すつもりのない態度を咎められたとしても、「握手なんて一言も言っていないけど?」と白々しい言い訳をしただろう。片手で抱えている紙袋の中、放り込んだカップの中身はいつの間にか消えてしまった。それを惜しいとは思わない。物語の主役は紅茶ではなくかわいい迷子のアリスだから。)
コルネ〆 2020/02/04 (Tue) 23:59 No.117