Mome Wonderland


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(とびきりの魔法を探して)
("その者の首を刎ねよ!"――あどけない少女のくちびるから紡がれるには不釣り合いな音もファンタスマゴリア住人にとっては慣れたもの。こっちもこっちで女王のご意向を伺わなきゃならなかったから大人しくしていたけれども、共に連れて来られた"アリス"には堪ったものではなかったかもしれない。ナイトメアの取りなしはいつものこと。そこから降ってくる無理難題だってこのアンダーグラウンド・ワンダーランドじゃあ想定内のハプニングだ。恭しく膝を付いてはこうべを垂れよう。おとぎ話の騎士のように、わざとらしいくらい丁寧に。)――はい。必ずや、この娘をもとの場所へ帰して見せましょう。 …クリケットの相手がいないのなら、俺がいつでも相手になりますんで。(最後に付け足してしまった一言はやっと機嫌が上向いた女王の神経を逆撫でた可能性もあろう。さりとて依頼は確かに承った。謁見の間に長居する理由もない。辛抱強く青年を捕まえているトランプ兵の腕をひょいと退けては「またね」と手前勝手に彼女の方へ笑んでもみせた。帰り道は無論エースひとり。……それが昨晩の出来事である。)……しっかし、戻り方って言ってもねぇ。(満月は地平線の彼方へ沈み、まばゆい朝の訪れと共に小鳥が鳴く。澄み切った空気を全身に染み渡らせながら、思考を巡らしつつの歩みは鈍い。清潔なましろのシャツ。サスペンダーで吊られたグレーのパンツ。ショートブーツの底が石畳を叩く。そもそも考えることが得意ではない青年だ。思考が"会ってから相談すればいっか"という結論に至るのも当然の流れであった。気弱なおさげ娘を捕まえて、聞き出した出逢った彼女の仮の棲家。ノックは三回。もしも見えられたのなら面差に刷くはやはり衒いのない笑顔。)おはよう。よく眠れた?(良い眠りは良い一日を始めるのに肝要だ。だから最初に差し向ける問いは決まっている。けれど、次ぐものはどうであろう。 月下の邂逅にて不躾にも抱き上げようとした青年の印象は彼女の中でどのようなものになっているのやら。天上から落下してきた身を真剣に案じた行為ではあったけれど受け止め方は彼女次第。携えた微笑みとは裏腹に、碧眼にはちょっぴり相手の出方を伺うよな色があった。)
エース 2020/01/26 (Sun) 01:34 No.4
(おとぎ話のはじまりとして完璧すぎやしないかしら?それはもう、疑わしいくらいに。——広い広い野原、打ちひしがれる自らの前に現れたブルーの瞳を見上げるかんばせには、驚きと放心の色がぽかんと浮かんだ。だから言葉こそ碌に発せなかったけれど、滔々とこちらへ向けられる言葉が余すことなく優しいものであることを頭の端でどうにかすくいあげると、ひとりぼっちの“少女”(26)はたしかに、ほっとしたのだ。戸惑い顔でも、手を差し出されれば自然と握ってみようかと思うくらいには。)……あの。どうも——っひぇえ!?(けれど伸ばされた腕は、自分をまるごと抱え込んでしまうではありませんか。静かな戸惑いは、ぐるぐるにうるさい混乱に姿を変えて頭と身体を駆け巡ってゆく。オーバーヒートで顔が熱い中、「何なのあなた!?」と発した震え声は躱されただろうか——そうこうして、お城に憧れた女は幼き女王とまみえることとなる。首刎ねの号令。下された条件。恭しく振る舞うとなりの彼。目の前のすべてに翻弄され頭の中はこんがらがる一方なまま、わけもわからず小さな家へ転がされた。お城を見上げる、いつもの景色によく似た場所。)
……夢、じゃ……ないのかしら。(——朝がきたからには時間は巡り、月が消える日もくるのでしょう。昨晩からの不思議を単純に信じてしまえば笑われる歳かもしれないけれど、ベッドから起きた彼女は半ば受け入れ始めていた。持ち前の男前な潔さからか、はたまた、何かに焦がれた心からか。顔を洗い、歯を磨いて、髪を梳り、自分を整えたのは未知に負けないためのおまじない。仕上げに、『昨日のお洋服、洗っておきます』との書き置きを添えて丁寧に畳まれたやわらかなリネンの白いワンピースに身を包む。装飾のないデザインや足首まで隠れる丈はきっと“似合う”と評される部類のものだけれど、このノースリーブははたして。……でも今なら誰も見てないわ。ふわぁと裾をなびかせて姿見の前で一回転、なんてしていたものだから、ノックの3音に心臓が跳ねた。そっと覗き穴から姿を確認して「あぁ」と零れた声は安堵を含んでいないこともないのだけど、まだ彼女自身さえその響きに無意識だ。控えめに開けたドアから、朝に似合う笑顔を見上げた。)おはようございます。……そうね、気付いたら寝ていたみたいで。(苦笑を混える声のうらがわで、昨晩のことに思いを馳せる。しばし伏して逡巡した視線を、碧眼へ向けようか)あの。昨日は、助けてくれた、のよね?それから今日も来てくれて。ありがとうございます(ぺこりと素直に頭を下げて、再び見上げた彼はどんな表情を浮かべているだろう。それがどんなものであったって尋ねるつもりの言葉は、)あの。ここは、どこで……あなたはもしかして、私に巻き込まれているんでしょうか、(女王と呼ばれた女の子が下した条件を思い返せば思い返すほど顔を出す懸念。はっきりと、だけどどこかばつの悪さを帯びた声は、ブラウンの瞳とともにまっすぐ彼に向けられる。「こんなこと聞いて、おかしいって思われるかもしれないけれど……」とぽつり添えるのは、この状況下でひとつ、たしかなこと。)私、まだ、あなたしか知らないものだから。
ミコト 2020/01/26 (Sun) 21:08 No.26
(熟れた林檎のごときかんばせに、たとえば罪悪感なんてものを抱くような青年であれば、はじめから抱き上げようなんてしないのだ。動揺の滲む一声にすら「すぐに着くから大丈夫!」などと返したあたり、乙女の身体に触れた非礼に対して回る頭は残念ながら絶無。尤も。結局すぐにやって来たのはトランプ兵だったけれど――。)そっか、疲れちゃってたみたいだね。(斯くて幕開けた二度目の邂逅は昨日とは打って変わって穏当に。しばし目線がかち合わぬ合間は爪先からあたまの天辺までその姿をしげしげと見つめる刻へ当てるとしよう。王子か騎士めいた着こなしのパンツルックとは一転してやわらかに身体に寄り添うましろの衣も背高な彼女によく似合う。)うん?(して、不意の問いと礼にはまたたきついて。)…ああ。いーや、お気にさらず。(軽く受け止めた。なにせ目の前で月から落っこちてきたのだ。心配するのはエースにとって当然であったし、女王の命がなかろうが今朝の行動は何ひとつ変わらなかっただろう。けれど。にんまりと弧を描いた口の端でちょっとばかり揶揄めく音を放つ。)まあ――真っ赤っ赤の顔は思い返せば可愛かったなぁ。(礼など言われずともあの表情こそが報酬足り得る。そんな至極自分勝手な満足感を微笑みの裏側に透かせていた。悪びれなく。一方で彼女はなにやら気後れするところがある様子。頭上に浮かんだ疑問符は、ぽつりと落下したゆいいつの解に霧散する。「なるほど。」と首肯ひとつ落として、うーんと思考に沈むこと数秒。最初に降ってきた言葉は、)それなら俺は運が良いな。いっちばん最初に覚えてもらえたのなら、月へ帰っても忘れないだろう?(そんな何処か気楽なものであった。得意気に綻ばせた表情のまま、世話焼きな一面が顔を出す。)じゃあ、ひとつひとつ片付けてゆこうぜ。俺はエース。此処じゃあ新しくベッドを組み立てたり、城壁の修理をしたり、重たい荷物を代わりに運んだりなんかしている。君は?(自らの名と立場を明らかにして手番はアリスへ贈らんと――いいや、その前にもうひとつ確認。)あっ。それと……朝ごはんはもう食べた? 市場で食い物を調達するついでにこの国のこととか色々話そうかなって。口で説明するより目で見た方が分かりやすいじゃん?(片足を引いて、家の向こうに広がるファンタスマゴリアの風景を肩で示す。つまるところはお出かけのいざない。澄み切った蒼穹はまあたらしい一歩を祝福するようだ。)
エース 2020/01/26 (Sun) 23:53 No.34
……ずいぶんと親切。(何かたいへんなことに巻き込んでるんじゃあないかという心配はあまりにさらりと受け止められ、拍子抜けしたように肩をすくめた。抱え難くって心に靄をかけるような何かがある時、一度眠ってそれから起きれば、それなりの形に丸めて心に仕舞い込むことができる。巡みこと26歳のメンタルライフハックは、こんな世界でもどうやら少しは発揮されたらしい。目の前の彼についても。昨晩は王子様に騎士に人攫いと七変化を遂げたミステリアスな男は、ひとたび朝の光に包まれればただ人のよい青年に見える。警戒するとすれば、命をかけられているとは思えぬ器の大きさと——今まさに、いじわるな口から落とされた爆弾のことくらい。) 、かわっ……!?〜〜っな、もう、いきなりっ……!!びっくりするでしょ!?(りんごの果実が色づいてゆくようにじわじわ赤らむかんばせは、まさに今揶揄われたものによく似てしまう。そう、いきなりだから心臓に悪いのよ、触れるのも掘り返すのも!声を上擦らせてなお持て余す恥ずかしさをぶつけるみたいに、ぎゅうと握ったこぶしを男の胸にか弱くぶつけた。せいぜいあめだまを投げたくらいの衝撃しか与えられないわけだけど。うーんと彼が唸る数秒の間は、世界でこの人しか知らない状況ってなかなかヤバイんじゃないのと失礼にも思ったけれども、続けられた飾らない言葉には二度目の拍子抜け。ぱちくりとしばし瞬き、綻びにつられたように零れたのは、呆れたような、だけどたしかに面白いものを目にしたような、笑いだった。)ふっ、ふふ!前向きな色男。あぁ、私の帰りたいところは月じゃないけど……にしても、絶対帰れるみたいな言い方してくれるのね?(どうやら、距離を遠慮するような相手では無いらしい。信じて良いのかしらと言外に尋ねるように、小首を傾げて覗き込もう。簡単に言ってくれる割には着実に進むらしい彼のその名前を聞けば、小さな贈り物をもらったみたいにたいせつに響きをなぞる。「エース、くん。そっか、頼りにされてる人なのね」。手番をまわされかけては追いついてきたふたつめの疑問符に、ふるふると首を振った。目に映る世界に胸が躍り始めるのは、それを示す彼が魅力という魔法を持っているせいもあるかもしれない。アトラクションに乗る前のようなわくわくを帯びた表情に、警戒の色は見当たらない、けれど。)連れてってくれるの?……あ、でも、ええと……この格好で、変じゃない、かな(似合ってる?なんて素直に尋ねられるような可愛げはないけれど、要はそういうこと。やわいましろをきゅ、と握って尋ねる相手もあなたしか知らないのだ。勇気づけられるかまた躱されるか、その反応によって表情は変わるだろうけれど、どちらにしたって歩き出そう。物語は自分で広げに行かなくちゃ。)ああ、そうだ。私は、巡 みこと。呼びやすいようにどうぞ、エースくん。(家を出てすぐに優しいおさげ娘に出会ったなら、「少し出かけてみます」と一声掛けて。石畳を行くは、晴れやかな朝の空よりは深く、冷えた宵闇よりは柔らかい、ちょうど微笑みが向く先の瞳によく似た色のバレエシューズ。さあ、不思議の国へ。)
ミコト 2020/01/27 (Mon) 20:16 No.44
(発端はなんであれふたりは運命共同体と成ったのだ。心配げなむすめを捕まえて、お前の所為で……などとちくちく突っつくような趣味のないことは、あっけらかんとした態度から見て取れよう。あるいはもうバレてしまっているのかも知れない。エースという青年がどんな物事に対してもたいへんざっくばらんとしていて、言動も気まま極まりないことが。)おおっと。(こんな性格なので誰かからの怒りを買ってしまうの珍しくない。あつい胸板で受け止めたこぶしは、まあちっとも痛くなんてなかったけれど。)また真っ赤だ。可愛い。……ふふ、怒ってる?(こてりと傾げた首。やおら細めたる碧眼は面白がるような色彩が濃い。自分の言葉ひとつでこんな風にころころと表情を変えてくれるのがなんだか楽しくて、続く疑問形は握りこぶしから発想を飛ばしたものであったが、やはり反省の色は薄い。しょうがない。自分の心に嘘は吐けないので。前向きな色男との評は破顔一笑ののち。)褒め言葉として受け取っておくよ。(そう、やっぱりポジティブに受け止めて。安請け合いと思われてしまいそうな言辞にはファンタスマゴリアゆえのロジックを繰り出そう。ほんとうに絶対に帰れるの? ――そうさ!)だって、おとぎ話の終わりはハッピーエンドって定石が決まっているだろう。望む限りいつかは帰れるよ。君は"アリス"だから。(覗き込まれた瞳を捕まえて、視線を結び合って、子どもに諭して聞かせるようにゆったりと言ってのけた。口にしたのはこの世界の摂理。それでも。信じて。まなざしでそう乞うたのは、たぶんエース自身のことだった。彼女が信じてくれたらきっととてつもなく嬉しい。くちびるが自らの名を紡ぐだけで心にぽうっと灯るものがあるから。膨らんでゆくわくわくはエースもおんなじ。踏み出す手前の問いかけは上機嫌に応えよう。)うん。…最初に会った時は颯爽として格好いい雰囲気だったけど、今日はひらひらしてて動きやすそうだ。似合ってるよ。(ファンタスマゴリアで世辞や媚びへつらいは効果を発揮しない。思いついたものをそのまま音に載せて、はにかんで押すは太鼓判。羽根より軽い一声ではあったが、こんな言葉でも彼女の気持ちを上向かせる一手になればいい。そうして共に歩みだそう。丸眼鏡の彼女にはひらりと手を振って、愛しのワンダーランドへ。)メグリミコト……それじゃ、ミコトだな。(呼ばう音を心に刻んで、)さて、ご覧の通り此処は摩訶不思議のおとぎの国・ファンタスマゴリア。此処でいっちばん偉い奴があの大きな城に住んでいる赤の女王って言って、これがまあわがまま放題でねぇ……。(ふたりで肩を並べて歩みながら、まずはこの国の何処に居ても見付けられる城を指差す。赤の女王。ナイトメア。彼女も出逢ったであろう彼等の立場を口遊みながらゆるゆると城下へ向けて進んでゆこう。)
エース 2020/01/28 (Tue) 01:15 No.55
(かわいい女の子たちの黄色い声交じりに“王子様”と呼ばれ生きること、人生の約半分。そんな女は、本当はずっと憧れている言葉への耐性が殆ど無い。だから目の前の青年が気ままにさらりと向けてくれる言葉にだって、いちいち口を結んで開いていそがしい。人の目をしっかり見る性分なものだから、尚更。)〜〜っうぅ……!そういうわけじゃ、ない、けど……!!あんまりからかわないで、……あと今あんまり見ないで!(なんてずるい疑問符なの。胸を叩いた手で真っ赤なかんばせの前にてのひらの壁を作って一吠えするも、誘われるように零れたふたりぶんの笑い声でその壁はすぐに解けることとなる。当たり前みたいに定石を語る彼を、まっすぐに見つめるも)“アリス”?……私が?……あは、歳も見た目も、かなりそぐわないと思うけどね、(見開いた目の奥には一瞬の喜色が揺れたけれど、癖みたいな苦笑いで癖みたいな濁し方をした。自分に自信が無いからって目の前の人が注いでくれる言葉まで否定しまう自分がいやだわ、……だけどそうね、)でも、あなたが言うと、なんか大丈夫かもなって思えるから、不思議だわ(そう微笑む顔には苦さは無い。自分自身のことは信じづらくたって、まっすぐな励ましをくれる彼の視線のことは信じてみたいと思ったから。不器用な問いかけにはにかみが返れば、そんな気持ちを押すようにふわりと胸中に風がひろがって、擽ったそうな微笑みがこぼれた。これが夢でもうつつでも、どうやら迷い込んだのは優しい世界らしい。ワンピースが似合うと言ってもらえるそれだけでも、そう思うことができた。踏み出す彼女にとってはまだ世界=彼なので、その認識も広げに行こう。)——ファンタスマゴリア、(辿々しく名前をなぞった世界について、男はひとつも嘘をついていないようだ。足下には二足歩行で踊るネズミ、ショーウィンドウにはおしゃべりするトルソー、街にただようは紅茶のかおり。夢心地であふれる未知にきょろきょろしつつも、示されて見上げるは知った場所。)そのえらい人が、もしかして昨日の女の子?ちっちゃいのに大変ね。……人の命までかけちゃうのもわがままの内かしら(は、と自嘲気味に笑うのは命をかけられた当本人だから。ゆるい歩みとともに遠くなってゆく城に、そういえば、ととなりの彼を見上げた。)私もね、お城の見えるところで働いてるんだよ。……って言っても、ほんもののお城じゃあないけれど(発端はなんであれ運命共同体と成った彼だ。世界のことだけじゃ無くって互いのことも知りたいと、境遇を明かすのはごく自然に。)
ミコト 2020/01/29 (Wed) 21:47 No.79
(見ないでと言われると却って見つめたくなるものだが――これ以上にからかうと折角呼び出した彼女が部屋へ戻ってしまいかねない。「ごめんね」と取ってつけたよな謝罪で以って終止符を打つとしよう。いつか、掌で出来た壁が越えられるようになったらいい。――そぐわないとの評価をかぶりを振って否定する。アンダーグラウンド・ワンダーランドへ落ちてきた君こそがアリス。そう口で言わずともこれから待ち受けるものが彼女の立場をきっと知らしめてくれるだろうけど。他でもないこの自分を彼女が信じてくれるのなら、それはこの上ない僥倖だ。)だろう? それに…何にしたって、立ちすくんでちゃあ折角のチャンスも逃しちまうもんな!(詰まる所、考えるより足を動かす方を良しとする性分なのだ。気楽とも言える明るさでいざなう調子は軽やかだ。心の中に灯った光を導にして、吹き出した風の往くままに探しにゆこう。ちょうど今、花唇が口にした"ファンタスマゴリア"の世界へと!)はは、根に持ちなさんな。あのヒトは、まあ、寂しい子どもなんだよ。ほら、女王様って立場だと分かりやすく甘えることも出来ないだろ?(言動はやたらと物騒なのは否めないがエースは女王が嫌いではない。ひとりぼっちで王座に座るちいさな姿をまなうらに描いて、取りなすように双眸を差し向けた。街中にあふれる音楽は絡繰り人形が奏でる調子はずれのシンフォニー。ハシゴで屋根へと昇っているのはお目々のつぶらなリザードマン。おしゃべりなショーウィンドウの住人はアリスの噂で持ちきりの様子。)へえ、その城にもえらーい奴が住んでんのかい? そういや出逢った時のミコトは、こう、執事みたいな感じだったよな。城づとめだったとか?(月から来たわけではないらしいむすめのふるさとへ思いを馳せる。彼女の世界を我が目に映すことは出来ないから、碧眼には好奇心がありありと浮かんでいた。たまさか通りかかった屋台。ちょびヒゲの似合う猫の商人が"ファンタスマゴリアへようこそ、アリス!"なんて甲高い声で叫んで、お近づきのしるしとばかりに林檎をふたつ見せてきた。球体がなぞったのは放物線。)っと、 ……へへ、俺もアリスのおこぼれに預かっちまったな。サンキュ、おやじ!(しっかりとキャッチして、隣を歩む彼女へもう一方を差し出しながら、ちょっと顔を寄せて小声で落とす。)ミコト、気を付けろよ。早めに食っちまわねえとたま~に足が生える林檎がいるからな……。(さても此れは嘘か真か? 世界を広げ始めたばかりの相手へ唆す、ひとかじりの勧め。)
エース 2020/01/31 (Fri) 01:12 No.98
ん、……まぁ、そうかも。なんだか大人ね、エースくんて。(めくるめくにぎやかではなやかなアンダーグラウンド・ワンダーランド。その中でいちばんのえらいこどもがいくらわがままさんに見えたって、彼の前では笑って許せる話らしい。自分よりかなり若く見える爽やかなかんばせを見上げ、ふぅんと感心してみせるあたりは女の素直な一面である。前向きな色男で、案外大人で、どこかちょっとずるいような気もする、この世界でのパートナーからの質問には、毎日見上げている方のお城を思い描きながら)そのお城は……『お姫様と王子様は、いつまでもしあわせに暮らしましたとさ。』——の、つづきの場所っていうのかな?そうね、えらい人ってより、しあわせな恋人たちの住むところ、かな(睫毛をあまやかに伏してお決まりのハッピーエンドを鼻唄のようになぞる頬はほのかな花の色、あこがれの色。首を横に振り「お城がうんと近くに見えるジェットコースターに、行ってらっしゃいっていうお仕事よ」と添えた現実も、キライってわけじゃあないけれど。——不意に放られた歓迎のプレゼントは、どうやら自分への—アリスへの、ものらしい。となりの彼から受け取るとさんかく耳の商人に振り返り「ありがとうっ」と通る声を投げた。にぃと笑うその人はたしかにヒトじゃあなくって、また世界はふしぎになる。つややかなあかいろを手に包むも、距離の近さに鼓動を速めるより先に、)へっ!?あ、足が……??(囁かれた摩訶不思議に、りんごと彼の間をまばたきが彷徨う。それ、食べても大丈夫なの?にらめっこしながら華奢な指で、つん、とつつくと——果実を覆うまっかの皮がくるくるくるくる、らせんを描いて宙に舞う。バレリーナのように回るそれはみるみるうちに赤い小鳥に姿を変えて、てのひらにとまると果実をつんと啄んだ。『失礼しちゃうっ』と彼に一鳴きする小鳥なんだかりんごなんだかを見るアリスの目はまんまるで、ちらちらとほのかにきらめきはじめて。)——っ見た!?エースくん、今の!すごい……!私まで魔法が使える気分になっちゃうわ(つついた人差し指や小鳥をせわしなく視線で示す彼女には、はじめてのたからものを見つけたような、ぱぁと光る声音と表情。周りをつつむ未知の次には、指先で触れられる魔法があった。ひとが作ったハイクオリティなワンダーランドとはまったくちがう世界を、物語を、とうとう開いてしまったみたい。あなたのとなりで、あなたに誘われて。)おかしなこと、言うみたいだけど。——ほんものの、ワンダーランドだわ!
ミコト 2020/01/31 (Fri) 21:45 No.108
(この世界において"老い"の概念は存在しない。ネバーランドみたいなものだ。子どもは永遠に子どもで、与えられた役割を永劫に演ずる定めにある。だから、"大人"という評価には「そうかぁ?」なんてあいまいな返事に成ってしまった。けれども、そんなに悪い気分はしなかった。なにせ見上げてくれる顔ばせには疎むよな色彩はなかったから。)ふうん。ファンタスマゴリアとはまた全然違うんだなぁ。……ふふ、憧れる?(淡いばら色に染まる頬に、浮かび上がった問いを投擲する声はやわい。ハッピーエンドを掴み取った一対に抱く思いは何であるのかなんとなく想像が付いたから、青年の口元もしあわせそうに弛んでしまう。旅立つ誰かを見送るのが役目だったと聞けば「ミコトに送り出してもらったらいい旅になりそうだなぁ」なんて想像巡らせて笑った。颯爽としたパンツルックの彼女がお勤めに励んでいる姿もきっと素敵に違いない。――嘘が真に。真が嘘に。両者の意義がオセロみたいにくるりとひっくり返ることだって、このワンダーランドならそう珍しいことじゃあない。花は喋るし、星屑はパンに練り込められる。不可能なんて起こり得ない。たった今、彼女の指先がささやかな魔法を引き起こしたみたいに。真っ赤な小鳥の誕生。ちいさな一喝に「悪かったって」と眉尻を下げた。アリスのために、髭猫はとびきりのものを用意しておいてくれたらしい。)――っ、見たよ。見た見た!(きらきらと光る顔貌に、同じくらいの明度で応えよう。青年が導いて、彼女が自らの手で作り出した、いちばん最初の魔法。しかとこの碧眼で見届けた。きっと永遠に忘れまい。解けてゆく果実も、形成された鳥も、黄金色にまばゆく弾けたその微笑みも。すべて刻むようにいとしげに双眸を細めて、君へと頷き返そう。)ああ、そうさ。此処が俺達の生きるファンタスマゴリア。摩訶不思議のおとぎの国――。(彼女のゆびさきから生まれ落ちた小鳥はしばらく果実をつついたかと思えば、その羽根をぐんと広げて、やがてはむすめの手の上を離れるだろう。わずかな風を起こして蒼天へ舞い上がる紅鳥。危うげのない羽ばたきで門出を祝福するかの如く旋回するのを見仰ぎながら、淀みない口ぶりで約束しよう。)でも、こんなもので終わりじゃないぜ。ミコトをびっくりさせて、ドキドキさせること。これからもたくさん出会えるよ。(ふたりの物語はまだ始まったばかり。ましろい頁が彼女にとって幸せなものばかりで埋まることを祈りながら、さあ、彼方へ飛び去ってゆく小鳥を手を振って見送ろう。行ってらっしゃい。よい旅路を。そして。改めて彼女に向き直ったのなら、その瞳をまっすぐに捉えて告げたい。)…そういや言い損ねてたな。改めて……。 ――ファンタスマゴリアへようこそ! 歓迎するから、これからよろしくな。ミコト!(からっぽの手を差し出して、真夏の空より爽やかに笑っていよう。月から落ちてきた親愛なるアリスへ。――Welcome to wonderland!)
エース 2020/02/03 (Mon) 00:31 No.116
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