Mome Wonderland


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(太陽の下、新しきもの)
(君の輝かしい顔も見ず、銀の笑いも聴かず、時の背を見送るばかりだなんて。月の雫の姿容を確かめる前から巡らせていた思惟は、至る野原に人影を見つけた瞬間鳴りを潜めた。ギャバジンの袖端が森の出口の繁みを掠め、夜のしじまに葉擦れの声がひとつ響く。やたら大きく聞こえたそれ以上に騒がしい鼓動を抱えながら、真珠を一粒飾った天鶩絨の裾に少女を見出し──瞠った眸を知らぬ姿に向けたまま、足音も隠さず彼女へと歩み寄っていった。)君っ、……(焦燥の微熱を孕んだかのような、若干引っくり返った第一声と相成る。のみならず呼びかけたきり、唇は音を失った。突然声を掛けられたうえ、相手は驚きと真摯の狭間の面持ちを湛えた男。そういった事実が彼女を怯えさせる懸念は残念ながら一切頭を掠めず、距離を縮めるのに精一杯で。ただ結局二度目の発話は叶わず、やって来たトランプ兵たちに連れられるがまま、身を置き場を謁見の間に移す事態となるけれど。)……。(斯くして賜る"その者の首を刎ねよ!"には、伏した面へ不服を描いていた。ちょっと考えずとも理不尽が過ぎる訳で、自然と顔をあげて口を開かんとして。けれど夜色の従者が女王を宥める方が早く、さらば此方は成り行きを見守るのみ。王笏が自分を指した時こそ瞬きつくも、命令と悪趣味な提案を聞いた後には微笑んだ。)確かに仰せつかりました。陛下。(実に素直に頭を垂れ、諾の意を示す。謁見の間、引いては王城を辞する時にも全き従順を見せていたものの、胸の内には遺憾ひとひら。だってやっぱり彼女と言葉を交わす機会がなかったから。別れ際に口にした「おやすみ」の四音だけでも届けばいいけれど、地面に落っこち終わったのだとしてもそれはそれ。一晩眠った頭はすっきり切り替わり、朝食を済ませて友の家を発つ頃には鼻歌さえ昇らせていた。行く道に咲く花を避ける布サンダルの歩調も軽く、広い口を持つ外套の袖が風に膨らむ様は心のよう。ひと伝手に聞いた少女の住まいを赤茶の虹彩に映した瞬間、面持ちは一層緩んでいった。)おはようございまーす。(そうして小さな家の扉をノックする訳だけど、暢気な声調が示すとおり、彼女がまだ寝ている、ないし散歩等で家を空けているといった可能性は一切考慮していない。擦れ違ってもそれはそれ、つまり計画性皆無の訪いだった。)
トロイメライ 2020/01/26 (Sun) 00:09 No.1
(どこまでも広がりそうな野原、遠く聳える可愛らしい街並み、芳しさが生花の匂いと気付いた辺りで、座り込んでいた女にかかる声。鳶色だろうか、その虹彩へ疑問投げつける前に、続々と現れたトランプ兵たちに連れてゆかれ、かのひとの名前も知らぬまま「首よ刎ねよ!」展開のはやさと台詞が、あまりにも不似合いな稚い女王とやら。唐突な展開に女は成すすべもなく諾々と流されるがままで、否、本来なら女と言うより少女なのだが、香迷は己を少女と指すのもなにやら気持ちの悪い気がするのだ。稼いで、たいていのことは自分で賄っているのだから。あえて呼ぶなら娘が妥当か――閑話休題、王城にて条件を出され一命を取り留めたものの、部屋にひとりでなお混乱の最中。ひとまずジーンズやスカジャンがこの場所にまったくそぐわないのは明らかで、ドードーとかいう少女にエプロンドレスを用意してもらい、翌朝にはそれを纏おう。少しは自分の中の違和感が収まったような、気休めのような。)……お腹すいたあ…、(それにしても、ばたばたと事の仔細を勝手に決められ、昨夜は結局夕食抜き。言えばドードーは出してくれたのかもしれないが、何よりの懸念は「…大きくなったり、小さくなったら困るじゃん…」に尽きる。だってここはまるで、まるで。その折聞こえたノックの音色、誰の当てもないが無視も出来ずにゆっくり扉を開いたなら、耳に馴染んだ陽気な挨拶。悲しいかな、コンビニ店員根性染み付いた俗習で反射的に明瞭な言を発しよう。)おはようございます。きのうは…なんか巻き込んじゃって?すみませんでした。(はっきりと言葉にすると何とも頼りない関係性だが、と言うか関係性がはじまっていないが、面倒を見ろと言われたことひとも災難だったなあと。近くでみると鳶色と言うより赤茶。外套羽織ったそのすがた、昨日の驚いた顔も思い返しつつ見上げ、もっと言葉を繋げなけりゃ、と悩む隙はあるだろうか。どこから何を聞いたら良いのやら、紫がかっても見える瑠璃色は戸惑いながら、)あの、ここ、まるで…まるで、不思議の――、(国みたい、と言おうとして盛大な「ぐ~ぐるぐるきゅ、」腹の虫。ドアを開いた体勢のままかくんとつむり下げ、片手は腹に。果たしてまろぶように零れ落ちた言の葉は、)……ごめんなさい。(ああだって、ひとり放り出された見知らぬ土地、なのにきっと私の家族たちは――。おやすみ。それを言ってくれたひとは呆れるほど久しくて。)
ユメ 2020/01/26 (Sun) 10:22 No.9
(開いた扉の向こう側、エプロンドレスに身を包む彼女が見えれば面持ちを殊更緩めた。へらりとした笑みで「おはよう」と、今度は彼女の瞳を見ながら挨拶を重ねるも、謝辞に耳を打たれて目を丸め。きょとんとした顔で眺める瑠璃色に、惑いめく気配を見つけるは易い──それもそうか。月の落とし子は昨晩から余りにも色々な事態に見舞われている。枕が変われば何とやらとも言うし、もしかしたら眠れなかったかもしれない。見つめあいながら敷いていた思考は、彼女の声によって一旦の収束を迎えた。)うん。(所々に休符を挟む花唇の響きへと、相槌を置いたきり口を噤む。その時ばかりは微笑み取り戻していたものの、続きを待つ耳に腹の虫の声が先んじて届けば再び軽く目を瞠って。項垂れて腹部を抑える姿をそのまま見守っていたところ、届いた六つの音に口を開いた。)えっ、何が?(虚を突かれた調子を口づかせ、答えを待つことなく両膝を折る。そしたら今度は此方が見上げる番。真面目な面持ちで眼差しを上向けるけれど、果たして瑠璃色に降り立てるだろうか。目線が合わずともそれはそれ。また口を開き、重たさこそ欠けども茶化した様子は一切ない声で続けた。)ごめんも何も、君……謝るようなこと、何もしてないよ。(それは確かだ。ゆえ、唇は迷いない調子を描く。かと思えば間もなく面持ちを緩め、眉も下げ、申し訳なさを湛えた苦笑いになった。)寧ろ俺の方がごめんね。朝御飯、まだ食べてなかったのかな……君に少しでも早く逢いたくて、随分気が急いていたみたいだ。(君の輝かしい顔も見ず、銀の笑いも聴かず、時の背を見送るばかりだなんて。思えども、それは此方の都合に過ぎない。反省を胸裏で結ぶ一方で、思考や気持ちを切り替えるのも早かった。やっぱりしゃがみ込んだまま、それでも翳りなき微笑みに舞い戻った後には幾度目か口を開こう。)食欲はあるのかな。大丈夫そうなら、ドードーさんを呼んで用意してもらうといいよ……俺は、出直してこようか。邪魔でなければ、同じテーブルでお茶でも頂いていようと思うけど。(のんびりと問うて、すれば唇鎖して応えを待とう──大雑把も大雑把に分ければ、喋る置物がいるか否か程度の違いである。一人で食べる方が落ちつく者もいるだろうし、誰かがいても気にならない者もいる。そも、空腹の程度と意欲は必ずしも釣り合うわけではない。彼女が一番いい選択をしてくれたなら、それで良かった。)
トロイメライ 2020/01/26 (Sun) 11:56 No.11
(当たりの柔らかな笑顔、繰り返された挨拶は朗らかであたたかくて。のち、娘の言のせいで虚を突かれた顔付きのそのひとは、ずっと背が高いのに威圧感というものとは無縁そう。そして遅ればせながら、このへんてこな世界の中でもきちんと人間のかたちをしている。昨夜のトランプ兵の奇抜なスタイルや、ちょっと通りを歩んだだけで見えたひと以外のもの――わからない、怖い、おかげで寝不足も甚だしい。おまけにいちばん最初に見たこのひとが折角訪ねて来てくれたというのに、鳴るかよ、腹の虫。自分に苛立つのは、けれど後回し。だってさっきよりも驚いているひとに、説明を挟まねばと。)あ、と、よそでお腹を鳴らすだなんて、みっともない…って。教育で。(継母から吐かれた言葉が棘のように胸をつつくから、最後は小声にて。果たして己を前に膝を折るおとなの男性だなんて考えもつかなかったがゆえ、瑠璃はうっかり正面から赤茶にぶつけてしまい。動揺。そのまたたく間に朗色から打って変わった、これは相手を困らせてしまったのが明らかであるから、慌てての弁明はやけに早口。)うえっ、いいえ、あの…お兄さんが謝ることでもなくて。私が勝手に食べるのを怖がったから、あの女の子にもあえてご飯を頼まなかっただけだし。………会いたかった?私に?(火急の用が生じるなんて、昨夜ここに落ちてきたばかりの娘にあるはずもないだろうに?顔色に疑問を広げるも、食欲への質問にはこくこくと首肯せざるを得えず。だってまた、腹の虫の気配を感じたから。)た、立ってください…あの、ここの食べ物って、大きくなったり小さくなったりは、しない?…お兄さんがよかったら、同じテーブルにいてほしい…です。(なぜって、娘の常識では計り知れないことばかり、山ほどだ。扉をより開き、一歩下がっては招き入れるようにして。)意味がわかんないんだけど、ここはどういう…場所?国?なんですか。――だって“ありえない”ことばかりが、溢れてるから。(ついでにこうで良いのかな?と口吻にて「ドードーさん」を呼んでみよう。するとまるで全て整えていたかの如く、たっぷりの朝食があっという間に運ばれて。)お兄さんも一緒に、どぞ。珈琲党ですか、紅茶党ですか。(ぱっと見、青磁にも見えるティーセットを前に、まずはお茶を。どちらを淹れるかは黒髪艶やかで人当たりの良い彼の意見を欲するとして、さて、まともなお茶はあるのだろうか。)
ユメ 2020/01/26 (Sun) 13:53 No.14
そうなんだ……まあ、俺の前では気にしなくていいよ。空いたお腹が鳴るのは当たり前だし。(謝意の由を知ればひとつ頷き、諭す口振りで言葉を続ける。細やかな所に気が向く子なのだな、とは漠然と抱いた印象だった。膝を折り彼女の瞳を見上げて漸く"驚かせたかも"と、花顔が刷いて見えた動揺に感じた自分は反省すべきだとも。そりゃあ詫びにも実感がありありと滲もう。返る言葉は幾らか駆け足で、それでもこの近しさならば無理なく拾える。末尾に浮かんだ疑問符には頷き、)そう。君に逢いたかった。(今一度繰り返す。すれば湧く感慨に面は自然と微笑みを返り咲かせ、次がれた言葉と同席への許しもあれば一層頬も緩むというもの。)ありがとう。喜んで、同じテーブルに。……大きくなったり小さくなったりする食べ物は、俺も聞いたことないなぁ。それはそれで面白そうだけどね。(素直な喜色が滲む謝辞の後、楽しがる響きで口ずさみながら。下がる眦もそのままに、ゆるりと腰をあげれば歩を前へ進めよう。室内で昇る疑問符に、改めて彼女へ向き直る。答えを考えて眼差しを天井に上向けるのと、彼女がドードーさんを呼ぶのはほぼ同時。出来たての香りで室内を満たす料理を前に「ドードーさん、ありがとう」と伝え、そこに掛かる誘いと問いにパッと顔を明るくした。)淹れてくれるの? ありがとう……俺、そういうの上手じゃないから助かるよ。珈琲も紅茶も好きだけど、今は紅茶の気分。お願いします。(元より笑っていた面と声に安堵がたっぷり滲む。悪びれた調子は一切見せず、代わりに感謝の念を厚くした声調にてリクエストを。ポットが突如笑い出すでもなく、柔らかく豊かな香りを持つ茶葉も大人しく。「いただきます」を言うまでも、言ってからも実に平和な時間が流れただろう。)──そう、それで……此処はどういう場所かって言っていたね。此処はファンタスマゴリア。どういう国かっていうと……そうだな。俺にとっては宝箱。数えきれないくらいに素敵なものが溢れている。(相変わらずのんびり切りだして、続けるトーンも鷹揚に。「あ、このチーズ美味しいんだよ。そのハムと一緒に食べると更に」なんて脇道に逸れることもあったろうけれど、本題は忘れちゃいない。テーブルを挟んだ対岸に浮かぶ瑠璃の瞳を見遣り、なおも口を開こう。)俺はこの国の内側しか知らないけど……どうやら、君がいた場所とは随分違っているようだね。"ありえない"って、たとえば……どんなものに、そう感じた?
トロイメライ 2020/01/26 (Sun) 15:31 No.18
(気にしなくていい、それが何よりの慰めであったことを、かのひとはきっと自覚してはいないだろう。継母は実の父母よりもいささか歳で、兄貴が言うには「親父をたぶらかした美魔女」だそう。娘にはいまいち魅力がわからない。色々きついことも言い、何より体裁を気にするひとだったから、魔女の称号はなかなか適当だとも思ったが。例えば女王さまに傅く騎士のような父、そんな光景に心中反発だらけだった中学生のあの頃から、相変わらず“わからない”そんな日々をのらくらと続けているばかり。ゆえに新たな疑問符だ。実直に聞こえた「逢いたかった」の一言に、なぜ、どうしてと。)私も、誰かといっしょのテーブルってひさしぶりだから、お兄さんが良いならうれしい。でもなんで?私なんかに会いたかったって、どうゆうこと。(彼の言動から、体格が変わったりしないことを受け止めて安堵しつつ、疑問の返事とさらなる質問に終始して。或いは世話役を稚い女王陛下から賜ったから、だとか、いま検討がつくのはそれくらい。ドードーさんの用意してくれた朝食に礼も言い、華やかになったかのひとの台詞でお茶の淹れ方が変わらぬらしいと判じれば、)変なものばかり見るから、お茶がふつうでよかった…はい、紅茶、淹れまーす。(ふくよかな笑み続くそのひとの感謝に対し手元動かすことで応えつつ、何が原因で日本からこんなところへ来たのか、月から落っこちても無傷だとか、帰る方法だとか――こんなに困っているのに、このひとの柔らかで穏やかな雰囲気には問題なんて瑣末と錯覚してしまいそう。席に落ち着き紅茶も淹れて、向き合ったひとからの「ファンタスマゴリア」「宝箱」に、)すてきなもの、で溢れてる…ここはお兄さんにとって、しあわせな場所?(現状を鑑みるに少しのびのびし過ぎのような気がするものの、生きるとは何か――なんて命題を真面目に考えて過ごしてきた娘には実に貴重な意見。一瞬固まった身体はしかし、チーズに向いてハムに向いて、合わせてぱくりとかぶりつく。)うん、うん!おいしい…昨日の朝ぶりのごはん…!(素直に感激、多めの朝食をもりもりと。続けられる“本題”に、ものを飲み込んでから例えばの内訳をつらつらと。)ぺらっぺらのトランプさんが動いてるし、木に顔があるし、兎が従者だし、二足歩行で動物が歩いてるし…ぜんぶ、私の世界じゃ“ありえない”んですけど……、(これ普通なんですか?と、朝食のおかげで先よりも顔色を良くしつつ、ただただ迷い込んでしまったこの現状に瑠璃の眸は右往左往。普通じゃないですよね?――そう言いたいが、目前のひとにはこれが平常かもと思えば下手に全否定もできず、咽喉元にてか細く唸ろう。)
ユメ 2020/01/26 (Sun) 16:53 No.20
それはもちろん君と話したかったからさ。君の言葉を聞いて、君を知りたかったからだよ。(自分の同席を喜んでくれるなら何よりだ。子供じみて緩みっぱなしの面持ちのまま、重なる疑問符にだって迷いなく返す。笑みの明度と同じ心地であった。自分にとって馴染み深いものが、彼女の瞳には違って映る。それもまた新鮮な感慨を呼んできて、椅子のひとつに落ちつく仕草とて軽やか。ティーポットのスパウトをカップの縁にぶつけるなんて朝飯前、酷い時には紅茶缶の蓋も開け損ねる、そんな両手の持ち主は、紅茶を淹れてくれる彼女の姿を実に嬉しげに見守っていた。)そうだね。しあわせな場所だ。しあわせの種がたくさん埋まっている場所だ。……今も、しあわせだよ。(返り言に頷いて、紅茶を一口。口内に広がり鼻から抜けていく香りに双眸を細め、薦めた取り合わせに喜んでくれる姿を見て取れば「よかった」と笑みを深めた。昨日の朝ぶりのごはん、と聞いて逼迫した状況だったのかと感じれど、敢えて触れずにいた。なんとなく、彼女の食事の手を止めてしまいそうな気がしたから。代わり、問うた後には唇閉じて耳を傾けていよう。)そっか、そっか……驚いただろうね。(そうして聞き受けた"ありえない"ことたち。なるほど、彼女の世界と此処は全く随分違うらしい。左右に彷徨う瞳の仕草を見つめ、悩ましげな様相にふと笑み息をひとつ。さっくり焼き上げられたクロワッサンをふたつに割りながら、微笑ましがる呼気を流した唇を改めて開いた。)ところで、俺の友だちには二足歩行の羊がいてね……彼はリュートを弾くのがとても上手い。別の友だちもやっぱり二本の足で歩く羊で、そのうえ彼女の家は偶に気紛れに走り出す。それでもみんな、気のいいひとたちなんだ。たとえば森の木は道を教えてくれるし、兎の従者は俺よりずっと気が利く。慣れないうちは驚き続きだろうけど、怖いことは何もない。だから、そうだね……ファンタスマゴリアは"そういう場所"なんだって、そう思って貰えたら。きっとそのうち、"違うこと"を楽しめるようになるよ。(楽器を弾く羊とか、走る家とか、そういったものたちも彼女には未知として感じられるのだろう。されど"知らないこと"も"違うこと"も負の要素と感じぬ思考は、何処までも暢気と取れる言葉と声を生む。眼差しは彼女に向けたまま、長閑な面持ちで首を軽く傾けた。)朝御飯を食べて、休憩して……お腹を落ちつけたら、一緒に散歩でもしてみる? 此処でのんびりするのもいいね。俺でよければ話し相手にもなるし……知りたいことがあれば、いつでも聞くといい。
トロイメライ 2020/01/26 (Sun) 18:11 No.22
私の言葉と、私のことを…知りたかった?(まんまるに見開かれた瑠璃から、驚愕の二文字は伝わるか。幼い頃はまだ遊んでくれる母と兄がいたから孤独に怯えることも割合少なかったが、その頃以来になる“求められている”のかもしれないフレーズに、バゲットに塗っていたバターを取り落としそうになったほど。赤茶がゆるゆるとほどけ、なぜか嬉しそうなことに頭の回転は追いつかない。)しあわせ…なら、よかったです…、私も見つけられるのかなあ?この、ファンタスマゴリアにいたら…。(呆然と呟いてしまってから、あちゃあ、と口にパンを突っ込もう。こういう話はとかく周囲に敬遠されがちで、それが理由に一種の一匹狼として道化さながらにハブられていたのに。口吻をもごもごと誤魔化すのが精一杯、眸も食事に向けて逃げの一手を打ってみて。そりゃあ驚いた、とは再びの首肯にて。)どこのテーマパークでも見たことない、まるでここは不思議の国みたいって思ってた。でもそれが本当に不思議の国だったんだから、今でもちょっと信じられないけど…お兄さんのせいで、なんか、だんだん実感出て来たところ。(いっそふわふわと掴みどころのないひと、とも思う。言葉に余計な重力がなくて、時間がのんびり流れていて――しあわせ、で。楽しげに生きていて、それに何の疑問も抱かないような。)…リュート?って、楽器のあれですか。羊さんが二匹いて、家が走る?それは…お兄さんの友達なら見てみたいかも。(巨大な建築物がゆうらと立ち上がって走るさまにはジブリの世界が垣間見えるも、ここは正真正銘おとぎの国。決して“ありえない”ことでもないそれらに対し、このひとは自らのペースで道案内役をしてくれている。それがひたひたと伝わって来たから、娘もようやく心から、ちいさな微笑みの欠片を零して彼へと向けよう。)お兄さんはやさしいね。私はどこにいても大抵不安だし、悩み事が尽きないけど、お兄さんには素直でいたいな。(慣れない世界観、ひとりの不安感、マイナスばかりを見詰める娘にこう思わせてくれるひとは数少ない。その中の貴重なひとりが、のんびりとしてくれる提案に心もおっとりと綻ぼう。ああなんで現実の世界で出会えなかったんだろう、なんて――。)ええ?帰り道がわかんないと大変なんだけど…もし良いなら、お兄さんと散歩に行きたいな。お話をしながら。…ねえ、お兄さんは人生をむつかしく解釈したこと、ある?(あるひとはそれで「人生が分からなくなる」と言っていたが、あながち間違いじゃあないのかも。むつかしいとまではいかずとも、なぜ生きているのって、娘は常々自分に問うて真っ暗闇に怯えていたんだから。この世界でなら、或いは。でも、帰らなきゃ――首を刎ねられてしまうのよ。)
ユメ 2020/01/26 (Sun) 20:15 No.25
(丸まる瑠璃の瞳へ見せたのは大きな首肯。君を知りたいのだと告げた声調に似てゆったりとした仕草になった。自然な欲求として口づかせた言葉が、彼女にとって良きものであればいいと願うばかり。)ありがとう……そうだね、一緒に探そうか。(しあわせならよかった。そう言ってくれるひとへ見せていた微笑みの面は、小さな唇がパンを包んだところで緩々と口を開く。彼女の内心を知らぬまま囁いて落とした文言は、もしやお節介なのかもしれない。応えのようで独白にも似ている響きは、返事を強いないそれだ。そうして耳を打つ声に再度傾聴し、ふんふんと相槌代わりの首肯を挟みつつ受け取っていく。果てに友らへの興味を聞き拾い、諾を示すべくまた大きく頷いた。)不思議の国。そうだねぇ……不思議な国だ、此処は。リュートは君の言うとおり、楽器のリュートだよ。羊の友だちは他にもいるし、羊じゃない子もいるから……今度、案内と紹介をしよう。(14日間の最中、友の元に彼女を案内する機会は幾度もあろう。楽観的な思考に揺蕩いて、齧ったクロワッサンを咀嚼していれば気付く──それはまるで蕾が綻んだような。淡く彩づいた花の面差し。甘く香ばしい感触を飲み込んでから、微かなはにかみさえ湛えて面持ちをとろけさせる。)俺、今……また、しあわせになった。ありがとう。(しあわせの理由が何処にあるか、それを彼女は疑問に思うかもしれない。けれど言葉にするのは些か気恥ずかしい。この後の提案をしたのは話題逸らしの意味合いも孕んでいた、とは、やっぱり言わない。)うん、喜んで。それじゃあ後で一緒に散歩をしよう。話もしながら。(小狡い手段を用いたとして、それでも時を共にしたいという望みも本物だ。願い結ばれる少し先の未来を思えば快諾も平生以上にすんなり落ちる。続きがあると察しては「ん?」と先を促し、而して問い言を受けたところで少し真面目な顔になった。とはいえ不快を得た訳ではなく、思案の面持ちになっただけで。)人生をむつかしく解釈……っていうのは、人生について……たとえば、人生ってなんだろう、生きる意味……とか、そういうことを考えたことがあるか、ってことかな。それなら、あるよ。(解釈違いがあったら申し訳ない。よって確かめる響きが先行するものの、自らの定義に是を示すのも、それから微笑みに戻るのも早い。改めて開く口から流れたものは、世間話をする時のように穏やかな声だった。)君はいかが。そう問うってことは、君も人生について考えたことがあるんだろうけど……人生の何について考えてみたのかな。(答えは急がない。その証左のよう、紅茶を頂く仕草はのんびりとしていた。「君、紅茶淹れるの上手だねぇ」なんて、暢気な調子もやっぱり失せていない。)
トロイメライ 2020/01/26 (Sun) 21:33 No.28
(眸は今度、ぱちりと瞬きを落として凍るだろう。このひとに自覚があるのかはさておき、そんな殺し文句を聞いたことのない経験不足が第一に。そして相手がずっと背の高いおとなという状況、聞き間違いかと唖然としたのち、娘は「あの、」控えめながら持ち前の明瞭な発音にて。)誰かとお間違えじゃないですか?ほら、他に月から落ちてきたひととか。(だって私はあなたを知らない――そう続けたかった声音もまた凍る。一緒に、探そうか。)…お兄さんはやさしいんじゃなくて、誰かの回し者?油断させて、実は狼人間だったりしない?(突拍子もない話だが娘の顔付きは大真面目、不思議の国だもの、あり得るじゃないと開き直りつつ深刻そうな面を上げて。あるいは“お兄さん”ながらの揶揄か冗句なのか?このひとに限ってそんなことは無さそうなのだけれど――さて、街の案内をしてもらえるならば、)正直言ってみんな見てみたいなあ。お兄さんの紹介があれば、お喋りもできそうだし。(のちの、なぜかとろける様な貌を見せ「しあわせ」が増えた様子のそのひとに、散々浮かべている疑問符がまたひとひら。ここは礼に対する「どういたしまして」では間違っている気がするのだが、話題はどんどん進みゆく。今後の約束得られればそちらに意識も向くもので、上手くはぐらかされたと、今はまだ気付けずに。落ち着いた面立ちのひとの促しに、つい滑り落ちた「人生」の格言。ふいに言葉に出してしまってから気付く体たらくには、またやらかした、こればっかりだと眉間に皺が浮かぶ直前、応えがあったことに驚きも一入で。)え、あ、うん。人生ってなんだろう、どうして生きてるんだろうって、そゆことで間違いないけど……お兄さんにも、思い悩んだ時期があったの?(温厚そうでまろやかな雰囲気にすっかり流され、いつも迷惑がられる質問をし、話題を続けてしまったと悔やむ暇はなく。誰にだって悩みはあるという常識すら、この世界では通用しないのかと思ったけれど――世界中すべてがイージーモード、という訳でもないらしい。生真面目な表情から一転、やんわり問い返されたなら。)…人生の、生きてて喜ぶひともいなければ、死んで悲しむひともいないだろう…ってところが主かなあ。何のために生きてるの?って、答えがいつだって見つからない。でも私、そんな色々をつい考えちゃうの。(こんな疑問、普通に生きていれば中学生でも折り合いをつけているだろうに、齢17にしてまだあっぷあっぷと悩みの池に溺れているなんて。言ってしまってからの羞恥に、娘は暢気な音色へ「珈琲淹れるのも上手ですよ」と何度目かの逃避に走ろうか。たくさんあった朝食も少し食べ過ぎなほど胃に収め、紅茶に口付けて一呼吸。)…やっぱりお散歩にしましょ、お兄さんのおすすめコースで。(できればこれで紛らわせ、決して深刻にはならないでほしい、私のように。人生って、だって今、すっかり色を変えたことに気付いてしまったから。)
ユメ 2020/01/26 (Sun) 23:30 No.32
間違いなく君だよ。月から落っこちてくる人を見つけた時と同じ気持ちを、野原で君を目にした時に感じたからね。(控えめな問い調子へ柔らかな断定を返す。根拠は我が心のみなれど、それだけで十分だ。迷いない息の通りが揺れたのは、真面目も真面目な顔ばせと言葉が理由。)あはは、実はね……なんていうのは冗談だけど。やあやあ、君の信頼を得るにはまだ力不足みたいだ。(茶化すつもりはない。ただ、楽しげな反応になる。気持ちやら誠意を疑われただなんて思う筈もなく「がんばろ」なんて、これまた伸びやかなトーンで呟くのだ。散歩は彼女の心を解す助けとなるだろうか、さて、今はまだ分からない。先のことに気を遣りすぎて、目の前に舞うしあわせの欠片を見落とすなんて勿体ない。)そうだね……悩むという程ではない、かな。ただ、職業柄……人生や恋、心、しあわせ……そういったものに常に思いを馳せて、言葉を探している。上手い言葉が見つからない時は、それは思い悩むけどさ。(この国に在る全てを言葉にしたら、一体どれほどになるか──それを考えるだけでも楽しくなれる自分、けれど彼女の考え事は、自分のそれとは重力が異なる気もする。知り合ったばかりの自分が出来ることはまだ少ない。たとえば今のよう、微笑みのまま耳を傾けること。)何のために生きているのか、……か。俺にとって、生きることっていうのは手段のひとつ……だけど、君は君の解をいつかきっと得るだろう。答えの見つからないことが他にもあるのなら……君さえ良ければ、また教えて。見つける手伝いをしたいんだ。(思考や心を言葉に変えて、伝えること。能うかぎり拾い上げ「じゃあ、今度は珈琲も淹れてもらおうっと」とか、囁かな遣り取りも大事にすること。思い悩んだ素振りは見せず、寧ろ"紅茶片手に交わせる話題"に相応しい長閑な調子であった。何処までも。一呼吸おく彼女へ微笑みと共に閃かす「了解。じゃあ、少し休憩してからね」も、また。)……先に言っておくけど、俺、レディのエスコートは馴れてないんだよ。だから……そう、"分かってないな"って思ったら教えて。(とは、休憩を挟み、彼女の家を出て間もなく口づかせたこと。情けない事実だったけど、口振りは冗句を語る軽やかさ。悪びれた風でもない。隣の彼女の見やる瞳は、光の麓に在って赤茶の端に微か薔薇色を滲ませる。やわく駆け抜けた一陣は陽の暖かさを孕み、優しく頬を撫ぜた。答えを得た後には、迷いない足取りと彼女に合わせた歩幅で歩みながら再び口を開こう。)君に会ってほしい花がいてね。まずはそこへ行こうと思うんだけど……他に、好きなものはある?(天の輝きを享けた彼女の瑠璃の中、紫色も見出しては微か笑みを深めた。おすすめコースがありすぎたがゆえの問いは、歩む速度に似て緩々としている。)
トロイメライ 2020/01/27 (Mon) 20:16 No.43
(ああまただ、ゆるゆるとしていながらどこか的確な、まっすぐの過ぎる言葉をくれるから。月下、ひとりで落ちてきた心細さに覗いた鳶色が、この日のもとでは赤茶に変わり、時折一輪の薔薇を彷彿とさせるきらめきが見えるだなんて、とてもとても伝えきれない。どんなに感謝しているか、どれほど救われたか――照れ臭さ誤魔化すように、冗談を拾って。)…お兄さんは狼人間でも、騙そうとしてるんでもない。でもそれって…だって、私にばっかり都合が良過ぎるよ。そんなの…信頼しちゃうじゃん。(これ以上がんばらなくたって、娘にとってすでにこのひとの存在は特別だ。自分にとって非常に都合の良いひと、その在り方にいっとき罪悪感めいた迷走生じるも、職業と聞けばはてと首を傾げよう。)人生とか恋とか、しあわせについて思い悩む職業…?お兄さん、文豪?もしかして劇作家?(迷宮入りしていた日常の中、わずかな救い求めて読みあさった格言の主に多い職業。心ゆくままこちらの戯言に耳傾けてくれるやさしさは、紙の上ではありえない、まっこと癒しの心地も齎してくれるほどとは娘が保証しよう。そして他人の意見をこうしてゆったりと聞かせてもらうのも、新しい気持ちが芽生えてゆくきっかけ。)手段のひとつ。私には“生きること”が大きすぎて、やっぱり悩みの種だけど…お兄さんには目的があるんだね。私もずっと探してるんだ、こたえを。だから…お兄さんの時間がゆるすときには、手伝ってくれる?そうゆってくれるひと、はじめてなんだ。(ぱちぱち、凍っていた眸を青磁の中の澄んだ色に落とす頃、瑠璃は控えめにも溶けていたろう。心の声が張り裂けんばかりに突っ張って、自分ひとりで解決せねばと惑う日夜。そう過ごしていたはずが今はどうだろう、ゆとりという言葉の響きに、用心深くも触れた気が。)珈琲の豆はお兄さんが選んでね。とびっきりの美味しいやつ、淹れてあげます。(ふうわり慰められた瑠璃が春めいたのは、深刻過ぎぬ、じいんと安らぐ長閑さへと彼がうまく導いてくれたから。これがおとなの包容力ってやつなら、随分説得力のある見えないちからだ。休憩を挟んで胃も落ち着いた頃、与えられた住居から踏み出す第一歩。エプロンドレスの下はぺったんこのドレスシューズ、これなら遠出も出来そうだ。)わかってないも何も、私をレディ扱いしたのはお兄さんがはじめてだよ。お花に会いにいくの?じゃあ…虫は遠慮したい、です…。(折角好きなものと聞いてくれているのに、心配を口にするとはまだまだ憂いに沈む癖が抜けぬものの、道々に現れる光景だけで十二分に興味深い。お日様の柔らかなひかりはまるでこのひとのよう、電線や車道のない景色は雅趣に富み、隣のひとの艶やかな黒髪に天使の輪を見て。一時斬首の危機忘れ、花に近付くにつれのびのびした娘の声が弾む。)――わあ、羽がパンの蝶々!あれなら怖くない!
ユメ 2020/01/27 (Mon) 22:59 No.50
俺としては……信頼してもらえるのはもちろん、君にとって善いものであるなら……そっくりそのまま、受け取ってもらえると嬉しいな。(都合の良いってことは、彼女にとって現状は善きものいうこと──とは、前向きか楽観が過ぎるだろうか。思えども、重さを湛えぬ声は歌うように告げる。いずれにしても、此の場に於いては彼女の良が自分の良だった。軽やかな口振りは止まず「あ、惜しいな。詩人の端くれです」だなんて、首傾ぐ花容に返す言葉はほんの少しだけ改まって。けれど肉声の調子に相応しく、威厳だとかそんなものとは掛け離れた居住まいでいる。元より厳格な場では肩が凝る性分だ。お茶をお供に、頭や心に浮かんだ言葉、思い、それらをリボンのように解きあうくらいが丁度いい。)目的も……それから、夢もあるよ。そういう話もしていきたいね。時間なら幾らでも作るし、君が呼んでくれるなら何時だって駆けつけよう。だから君は、遠慮しない、って……それを、憶えていて。(女王の命令は忘れていない。勅命なくとも自分は彼女の隣を願っていた。遠慮しないでって、それもやっぱり此の心が願うこと。だから"約束して"とは言わない。)うん。俺が選んだ豆で、君が珈琲を淹れてくれる……あ、なんだかとってもしあわせな光景だな。楽しみにしている。("約束する"とも言わなかったけど、これに関しては既に心と心を互いの願いで結んだ気になっていたから。浮かれ心地と呼ぶには落ちついて、しじまに喩えるにしては明るい気分。)そっかそっか、……まあ、レディとしてっていうより……君が"分かってない"って思った時には教えて、ってなるね。君に喜んでもらえてこそだから。虫が苦手っていうのは了解です。(屋外にふたり歩み出て、雲ひとつ浮かべぬ空の下を歩く。風のごとく交わす言葉は、だけど抜けずに心に降り積もっていく。彼女の苦手をひとつ知れば微笑ましげに目元を緩めて頷いて、そうして歩を進めてゆけばやがて遠目にトピアリーが見えてきた。薔薇のアーチ、似た高さの草木で出来た壁。そこへ向けて伸びる道の端々にも色鮮やかな花が咲く。弾む乙女の声に、瑠璃の向く方角を見遣れば一層口元が綻んだ。)バタつきパンチョウだ。怖くないなら挨拶しようか。(促せば、一緒に蝶へ歩み寄ろう。翅はバターの付いたパンのスライス、身体はパンの皮、頭は角砂糖、そんな蝶はパタパタと羽ばたきながら瑠璃の前で止まる。)ごきげんよう、その焼き目はレベッカだね……、……。(蝶へ挨拶をした時、気付いたことがひとつあった。けれど一旦胸に仕舞い、今度は傍らの彼女へ囁く。)……大丈夫そうなら、手を向けてごらん。停まってくれるから。(言ったとおりに手や指を差し伸べたなら、蝶は白い肌にふんわり降り立つだろう。)
トロイメライ 2020/01/28 (Tue) 00:19 No.53
(元居た場所では歳の割に用心深く、ひとを簡単に信じ込む行為に危険孕むのも知っていた、それが普通であったのに。ここでは家にはもちろん、心にも鍵をかけないみたい。)善いものでありすぎるから、ちょっと困ってるんですけどね…でもお兄さんの気持ち、その…うれしい、かな。(胸いっぱいに溢れる“きもち”にもほとんどはじめましての状態だ、そのまま受け止めるには大きく暖かすぎて惑うけれど、決して悪い心境ではありえない。そっか、とひとりごちた娘は納得し、)詩人…だからお兄さんの言葉は一音一音丁寧で、きらりとしているの。私にはちょっと眩しすぎるよ、明度下がんないかなあ…?(言ってみて、どうやって言葉の明度を下げるのか、とちょっぴり含み笑い。このひとは強要も、抑圧も、確たる約束で縛ることもしないから――逆に、その輝きにこそ遠慮してしまいそうなところを、ぴたりと押さえられた心地。)忘れない…から、じゃあお茶くらい、ここにいる間は私の仕事にさせてください。青い鳥になれるかはわからないけど。…お兄さんの夢もきっと話してね。聞きたい。(何ともふわふわした感想に、しあわせ運べるか否かと念の為の注釈入れつつ、彼の大らかな面差しにはこちらがひかりを分けてもらっている気分。男のひととの接触は家族かバイト先の先輩、店長辺り。だから男性の扱い方こそ“分かってない”のは娘の方、曖昧に頷くことで一応の返事とするも、レディらしい振る舞いが出来るのかはきっと別問題で。なんとも和やか且つゆるやかに過ぎゆく中、アーチを潜った先に広がった花々の鮮やかさは、テーマパークなんかはるかに越えちゃうくらいの、圧巻だ。)パンチョウ?そのままの名前だね?…すごい、焼き目でわかっちゃうの?――こんにちは、レベッカ。(さてパンなのか蝶々なのか、喋ってくれるのか否かと娘は言われた通りそっと指先擡げるように手を差し出し。待っているとパタパタ飛んできた彼女は口は利かずとも意図察したように降り立とう。興奮して驚かせないよう息を詰め、眼前のバタつきパンチョウに目を奪われ――ゆえに、そのひとが何かに気付いた様子は注意の外。じっと見詰めること数秒、ふたたび飛んでいった彼女を見送って、)私、ほんとに虫だめなんですよ。でもここじゃあ、全部が違っているみたい。指に蝶々をとめるなんて…!(たった数分前に“違うこと”を“楽しめるようになる”と言ってくれた、正にそのひとへと瞠目したかんばせ向けて、今しがたの出来事に洋々と瑠璃をまあるく。かと思えばしゃがみ込んで、)お兄さん、ここのお花は摘まない方がいいですか?生きてたり喋ったりする?(殺風景な部屋に一輪挿しでも、しかし摘んで殺してしまう訳にはいかないと確認を。部屋に花を飾ろうなんて――もしかして、生まれてはじめてレディみたいな発想が芽生えた瞬間かも。)
ユメ 2020/01/28 (Tue) 16:10 No.61
明度を下げる……そういう方向性を探るのも有りだね。頑張ってみるよ。("善いもの"と同じく言葉にしても、共にあるならばプラスを齎せるものを贈りたい。彼女の言葉は新たな方向性を教えてくれるようで、嬉しくありがたいこと。つられるように淡い笑息をひとつ、ふたつ流した。)ああ、お茶は君にお願いしよう。それに……なりたいと思った時には、もう最初の一歩を踏み出してるんだって。俺こそ"しあわせのお返しになりますように"って願いながら、きっと君に夢の話をしよう。(背伸びしたって上手にできない自分だ。だから在りのままでいよう──胸裏に結んだものが常に上手く転がる訳じゃなく、蝶に呼びかけて漸く気付きを得ることもある。尤も此度のそれは火急のものでなし、よって乙女たちのふれあいを見守ることにした。音もなく、やわらかに降り立った蝶に彼女が何を感じたか。それは羽ばたきを見送った後に知れる。瑠璃の輝く顔ばせに此方の面持ちは当然緩む訳で、)よかった。レベッカ以外のパンチョウもこの辺りをよく飛んでいるから……行き会ったら、また紹介しよう。(声もまた微笑ましがって喜ぶ穏当を殊更厚くする。蝶を指に停まらせるなんて、彼女にとっては"ありえない"ことだったんだろう。新しい出会いが彼女にとって善きものになったなら嬉しいし、だったらもっとと思ってしまうものである──けれど、散歩の調子は相変わらず緩やかだ。しゃがみ込んだ彼女の傍ら、自らも膝を折って花々を、そして傍らへ面を巡らせて彼女を見つめる。)そうだなぁ……俺は此処の子たちと話したことはないけど、摘んでいって悲しいことがあったとも聞いた例はない。……摘む時には優しく、摘んだら"ありがとう"って言ったら大丈夫さ。(老いず、生きるものばかりのファンタスマゴリア。花摘みが悲劇として響いた記憶はない。他意なき進言はやっぱり羊の歩みの調子で流れ、そうして再び花へ目線と顔を向ける。)どんな花が好き? 華やかなもの……楚々としたもの、他にもたくさんあるよね。君の世界に咲いているのと似た花もあるのかな?(薔薇だけで一体どれだけあるのだろう。草木の狭間に咲く花には名を知るものも知らぬものもある。金色のマリーゴールド。ころりとした花を開くチューリップ。ペールトーンのオステオスペルマムは目にも心にも優しかろう。青きネモフィラは妖精の絨毯に似て、ダイアンサスのマゼンタもまた余りにも鮮やかだった。)
トロイメライ 2020/01/28 (Tue) 20:18 No.63
(自らの発した言葉に否定が帰って来ない――これだけで娘には僥倖なのに、尚且つがんばるだなんて言われては「詩人さんは、向上心がすごいね」それ以外の語彙が中々出てこなくて、困っちゃう。仕事と言うにはまったく労働力が割かれない類だが、意を汲んでくれているのだから「はい」と頷こう。)じゃあ、お兄さん専用のお茶係だ。…最初の一歩、踏み出せてるのかなあ。お兄さんのその考え方は素敵、だからきっと、きっと…!(ありのままの姿を見せてね、と頬に朱色上らせながら願ったところで、娘はトピアリーに瑠璃向けて、あえて視界に彼を入れず。)……あのね、夢の話をしたからもうちょっと。お兄さん、私…ユメっていうんだ。なまえ。(本当は友愛子だけれど、うそじゃない。それにこのひとにはふんわりと自分を呼んで欲しいから――ちょっとだけ、脚色したってゆるされるでしょ?バタつきパンチョウを見送って、その他にもいるのだと教えられればまた好奇心に任せて瑠璃はその辺をふらふらと。元来た世界での害虫ばかりじゃない、こちらの虫を花々の合間に探してみるのも味わい深いかもしれないし、陽射しに輝かんばかりの芳しい花を愛でるのだって“善き”ことかも。訪ねた花の生き死にに悲しいことが無いとわかれば、)じゃあ散歩の最後に一輪だけ、摘んでいこうかな。ありがとうって言いながら。…どの花って言われたら、うーん、どれがいいだろ?私の世界にもあったと思うけど、ちゃんと見たときないからなあ。(薔薇のアーチや草木の壁なんて目にした機会はないものの、バイト先へゆく一軒家の軒先には花が咲いていた気がするし、近くの小学校にはこどもの植えた花壇があった。しかしてそれらを観賞していたか、となるとシフトに間に合うよう急いでいて、目を向けている余裕などまるで皆無であったから。)薔薇とかチューリップとか、名前がわかるのはそれくらい。私がいたところで有名なのは、桜とか?儚いかんじの…、(日本固有の種類もあったはず、とうろ覚えで巡っていたところで耳に飛び込んだ声は「やあ、ライ。」と聞こえたはず。瑠璃巡らせればそこには二足歩行の動物――黒い足を地に着けて直立、もふもふの体躯を緋赤の上着に包むモノクルかけた黒羊がいただろう。びっくりはしていたが、娘のコンビニ店員根性は咄嗟に「おはようございます」の定型句をちゃっかりと。眸見開きつつ、身体をかのひとの影に落としつつ、遠慮がちに音をなぞる。)――…ライ?それがお兄さんの名前?(気付けば邂逅からしばらく俗称で呼び続けて来たひとだが、もちろん名前があるはずで。蝶々の時よりかは人語を解す動物にびくついたが、詩人の名を謳うことに一抹の関心を寄せて上目遣い。黒羊からのそれは親しみこもった音色という印象だが、さて今はかのひとからの紹介を待つばかり。)
ユメ 2020/01/28 (Tue) 23:45 No.69
ユメ。(いつかの"きっと"を結んだ時と同じく、ふたつの音を口ずさむ調子は柔らかい。蝶の名を呼び、その時ようやっと名前を聞いていなかったと気付いたうっかり者は、そうして今こそ彼女の名を自らの声で音にする。それこそ夢見るような口振りで、陽射しに似た響きになった。)ユメ……ユメちゃん、ユメさん。……ユメ。ユメがいいな……そう呼んでもいいかな。(糸を辿るように、確かめるように幾度も口づかせて辿りついたものは、最初に音へ変えた呼び方。「どうかな」と問いもしてみる詩人は、呼称へとあれこれ思惟を巡らせていた結果──再びうっかりしてしまう。蝶から花々へ、それから彼女へ順繰りと移ろう意識の向き先。そこに未知の響きが在らば、何もかもがそれへ集中するのは最早性だった。)とびきり素敵な一輪ともきっと出会えるよ。……サクラっていうのは、俺は見たことないけど……儚い感じの花か。見つけたら教えてほしいなぁ。(広いファンタスマゴリア、まだ見ぬものは数えきれない。いつか何処かでサクラなるものを彼女から教えてもらう。その時の訪れを思い描いては昇る一方であった心地へと幾らか落ちつきを取り戻させたのは、馴染み深い友の声だった。)…………。(モノクル羊へ挨拶を返そうとしたところで彼女の問いを受け、はたまたようやく思い出すのである。)……そう、俺の名前。まだ言ってなかったね……!(眉を下げての苦笑いは、うっかりの二乗をやらかしたことへの純然たる羞恥心ゆえに。此方が名を告げていなかったと気取った友は、目を丸々と瞠っていたものだ。しかし間もなく、黒い口先から可笑しげな笑み息を転がす。愉快がる響きに肩を竦め、彼女へ向き直れば漸くの名乗りを、苦さの去った元の微笑みと共に。)俺はトロイメライっていう……皆、ライって呼ぶんだ。良かったら、君もそう呼んでおくれ。(明朗な名乗りの後、今度は友羊へ目を向けた。掌で彼を示し、再び開いた口で語るは、)彼はペコラ。俺の友だちのひとりで……さっき言った"リュートを弾くのがとても上手い"羊っていうのはペコラのことなんだ。俺も習って弾いてはいるけど……ペコラの方が、ずっと遥かに上手。(そんな風に紹介された羊は「初めまして、月からいらしたお嬢さん。ペコラと申します。どうぞ宜しくね」と、のんびり調子で挨拶しては、ちょこんと腰を折る。彼女より少し背丈の低い羊は、ピンと背筋を正した後に「ファンタスマゴリアは気に入って頂けそうですか?」、そうも問う。ちなみに自分は微笑むままに、ふたりの遣り取りを見守っていた。)
トロイメライ 2020/01/29 (Wed) 20:32 No.76
(何度も呼ばれる名前がやわくって、綿菓子みたいに甘くって、陽だまりの中にいるみたい。呼び方が決まるまでこそばゆい思いをしていたものの、改めて二音に集約されれば「ど、どーぞ。それが、慣れてます」ちょっと吃りながらも飲み込むように了承し。桜は日本人には非常に馴染み深い。それに、用途と言えば。)桜はね、薄紅色やピンクのきれいな花を咲かせるんですけど、実はさくらんぼだし、花も塩漬けで食べられるんですよ。ファンタスマゴリアにもあったら、絶対にお兄さんに教えてあげる。多くのひとが歌にしてるから、詩の役にも立つとおもう。(若干食い意地の張った情報添えて、ここでの目的がもうひとつ増えたのに小さくどきっとするが、表面上はなんとか繕おう。人生の目的や、目標を積極的に作るのは苦手な性質。でも、これもまた約束で縛られない、心と心を互いの願いで結んだがゆえか。羊の声掛けにかのひとの目がまあるくなって、苦笑がおかしげな笑い顔に変わるころ。“お兄さん”から明かされた名前に、緩やかで心地よいこの一時にはまたまた驚愕の。)――…トロイメライ?それが、お、お兄さんの名前…?………ここではね、どうだか知らないけど、っていうか名前に意味があるのかもわからないけど……「トロイメライ」それって、私の世界では「夢」って意味だよ…!(半ば呆然としてぽそぽそ呟くような声音になってしまったが、聞こえただろうか。ドイツの作曲家が作った小品は、美しく親しみやすい旋律を奏で、題名に「夢」「夢想」の意味を持つ。なんて偶然だろうかと口吻ぱくぱくと空気を食んで、どういうリアクションが正解かしらんと心に問うた。驚きのあとにふつふつと湧いてくるのは、この世界に落っこちてきた意味が、私が私であるからこそ辿り着いた意味があるのかもしれない――なんて、少女漫画のヒロインが胸裏で思い起こしそうな陳腐な妄想だ。はっと瑠璃見開いて、自分の世界からワンダーランドへと意識を戻そう。)ライ、ライ…さん付けとかいる?それにペコラさん。こっちは素直にさんが付けられるんだけどな…?(レディのあとはお嬢さん扱い、厭でこそないものの気恥ずかしい思いをしつつ「いまから気に入ろうとしてるとこ、です。」そんな返答を。)ペコラさんのリュート、今度お兄さんのと一緒に聞かせてください。あと、お友達のお家が走るとこも。それとこれ、失礼かもしれないんですけど、ちょっとさわってみるのって…?(微笑んだまま聞き役に回ってしまったひとを横目に、挨拶に続けて雑談を。勿論彼も含め、羊の丁寧な対応もあっての寛いだ立ち話が落ち着くころ、娘はすこおし機嫌良さげに、一輪挿しの花選びへと戻ろうか。)
ユメ 2020/01/30 (Thu) 10:15 No.85
さくらんぼになる花なんだ。見ても綺麗、食べても美味しい……だけじゃなく、詩作の助けにもなる……、それは素晴らしいね。いいなぁ、とっても楽しみだよ。一緒に見て、一緒に食べて、それからサクラの詩をユメに聞いてもらうんだ。(ふんふんと、彼女の説明に耳を傾けて。自分にとっては万能とも思える"サクラ"に、実に感心した声を昇らせた。心の庭園に新たなものが芽吹いたような心地さえ──実際のところ、花畑なのは頭の中だったのかもしれない。けれど仕方ない。素敵な偶然がこうも重なったとき、舞い上がらない者がいるだろうか。)へえ……ということは、ユメと俺の名前はお揃いってことになるのかな? それなら……"さん"はなしで"ライ"がいい。そしたら、ほら。ユメとライで音ふたつずつ。これもお揃いになるだろう?(隣に零れ落ちた呟きを拾い、思わず反応してしまう。どうかなって軽く首を傾いで見せて、諾が返れば喜色ばんで笑みを深めただろう。そうでなくともはにかみ交えて笑む自分を、保護者のような眼差しで見守るは友羊。彼女の返事に安堵したように小さく肩を下げた彼は「それはよかった。リュートを聴くのはもちろん、時間があったらライと一緒に私の家にも遊びにいらっしゃい。黄金林檎が食べ頃でね。パイを焼こうと思っているんだ」に始まり、走る家についても、それから彼女の申し出にも快い頷きを見せる。触れたらば羊の毛の柔らかさ、仄かな温かさを知るだろう。ぬいぐるみの類とは違い、紛う事なき生羊である。そんな彼は、これからまた別のところへ出かけるのだと言う。よって間もなく"またね"と手を振って、再びふたりとなった後には彼女へ手招きを。)ユメ、こっちこっち。(呼びかけて誘うは、庭園の少し奥の方。吹き抜ける大気の足取りへ新たな香りが入り混じり、だけれど争いを知らない花の芳香たちは何れも邪魔をしあわない。彩の数だけ息衝くものがあるのだと教えてくれるような──そんな一角にて、「此処だよ」と足を止めて彼女へ目を向けた。)ユメの世界にもあるかな……ローズマリー。(而して足元の区画に咲き誇るは青い花。清らかに茂った細長い緑葉の狭間、小振りな花が幾つも顔ばせを開いている。花壇と向き合う形で膝をつき、すれば涼やかな香りを近しく感じられもした。自然と和む面持ちのまま改めて彼女を見上げ、)俺、ローズマリーが好きでね。だから、君に会ってほしかったんだ。それと……、(告げれば再度面は花を見た。眼差しの先にある花々は、時に青く、紫がかっても見える。)ローズマリーの花と君の瞳……色が似てるって、思わない?
トロイメライ 2020/01/30 (Thu) 21:12 No.90
(英語ではチェリーブラッサム、いやいや、それは有名歌手のレコードだったっけ。かのひとの納得にさくらんぼはあるんだ、と口にしながら、限られた時間の中で共に桜見られることを想像して。わくわくか、どきどきか、うきうきか――どれも心待ちに、という意味では同じ“きもち”だろう。首を刎ねよと言われたのを忘れてしまいそうになるほど、素敵が過ぎる偶然の一致は娘の胸にじわじわ響き、)お揃い、ですね。ライ…、ライ。そっか、ライとユメ、音ふたつもお揃いで…なんだか、なんだろう。私浮かれているみたい。ここがワンダーランドだからかな?普段はこんなに調子のいいこと、言わないんだけどなあ。(確かめるようにかのひとの名前を繰り返し、自分に向けた疑問もぼやこう。たしかアリスが、芋虫にだれだい?と問われて「それがわかんないのよ、あたし、自分じゃないんですもの」と返したシーンがあったと思ったけれど、まさに今の娘がその通り。迷い込んでしまった不思議の国にどんどん心奪われて、本来の自分を思い出せない、ちょっと遠くへ行っちゃったような、妙ちくりんな感覚が。今朝起きたときには自分がだれかわかってたんだけど――これはほんもののアリスの言葉だっけ?)黄金林檎のパイ!ご馳走してくれるときには、じゃあ私がお茶を淹れますね。(本当は自称彼の専用お茶係だけれど、友人の羊になら特別だ。若い娘にありがちな程度には甘い物がすきだし、触れた天然の羊毛があまりにふかふかで、彼とは別の意味で癒されもしたので。またねに手を振り返して花愛でる作業に戻れば、呼びかけにドレスシューズの先を向け。さあっと吹いた軟風が貝殻飾りで纏められた伽羅色ひらめかせ、慣れないながらもたっぷりと香る生花を嗅ごう。示された区画の低い位置、案内してくれたひと同様に隣へと膝付けば、)ローズマリー?わあ、こんな風に咲いてるのを見るのははじめてだよ!料理に使えるんじゃなかったっけ…。ライの好きな花に、いま会えたんだね。(目的の花に小さな感動覚えた次の刹那。続く言葉に青い花見詰め、今度はかのひとの眸を覗き込み、指摘された通り紫がかっても見える瑠璃をまじろぐと。)…ライの瞳に、似て映っているならうれしいな。ローズマリーみたいですき、って思ってもらえるかも…しれないもんね?(ちいさな唇からまろび出る、これはきっと冗談よ。って笑えたらおとなの女なのかもしれないけれど――今の娘にとっては肩震わせて繰り出した、期待含んだ臆病な心意。優しいひとだ、汲んではくれるだろうという卑怯な自分ひしひしと。そんな弱っちい意思なら試すようなことよせば良いのに、という惰弱な精神も、内心には含みながら。)
ユメ 2020/01/30 (Thu) 23:01 No.95
君にとって善いものであるなら……、ね?(独白調子に聞こえる響きへと、朝食の席で口にした言葉を今ひとたび音にして緩やかに笑う。浮かんだものが晴空を連れてくるのなら、どうかそのまま抱きしめていて。祈りと願いの差異は知らないが、彼女へ望むものは理解していた。感慨にしても新しい"いつか"の情景にしても、明るいものを連れてくるならそれでいい。君の輝かしい顔も見ず、銀の笑いも聴かず、時の背を見送るばかりだなんて。)ペコラのパイとユメのお茶を一緒に頂けるの? 嬉しいなぁ……俺は何をすればいいんだろう。考えておこう。(見慣れた景色に彼女の姿が加わると、また違った心地を知るのだろう。友も含めた語らいの折のよう、けぶる花香の中に新たなものを感じ取っていく時のよう。「肉や魚を焼く時に添えるといいって聞くね」と、傍らに膝をつく彼女へと頷き返す。此日の今までを踏まえるに、食べるのが好きなんだなと見当つければ微笑ましくも思う。そこへ言葉を受ければ瞬いて、花から移した眼差しは瑠璃に着地した。空白はほんの一瞬。すぐに相好崩し、微笑みを滲ませた唇をそっと開く。)おや。……可愛いことを言ってくれるね。(この近しさならば然して張らずとも、囁く音は届くだろう。眩しがるように僅かに双眸を細め、言葉を続けていこう。)いいかい、ユメ。詩人の多くは、良くない癖と習慣を持っている。(言えば花を見て、まだ柔らかな部分を一枝「頂くよ」と呟きながら優しく折り取った。掌中の瑠璃色は、天の輝きを享けて紫色も見出せる。眺めれば眺めるほど彼女の瞳に似ているものだと、思いと笑みを深めた。)それはね、……もったいぶること。回りくどい言葉を選んでしまうこと。更に……そういう時は、凡そ格好つけたがってるってこと。(ふと流す笑み息を終止符として、顔を挙げれば膝を折ったまま隣へ向き直る。右手に携えた花を差し出す相手は、もちろん目の前の乙女。)ユメの瞳も好きだよ──…、レディ・ローズマリー。どうか、君の選ぶ一輪の傍に……この花を。(光の麓、淡く薔薇色を滲ませた鳶色はまっすぐ瑠璃の宝石ふたつぶを見つめ、祈るように囁く願いの声は何処までも穏当だ──けれど、浮かべる笑みには幾らか照れくさそうな色が交じっている。だってレディの扱いに長けていないとは出発の頃に伝えたとおり。そして今の自分がどうしたい時であるのか、それだって寸前に口にした言葉のままなのだから。)
トロイメライ 2020/01/30 (Thu) 23:57 No.97
(この浮かれ気分はワンダーランドの成せる業か、はたまた出会った折からつねに“善いもの”であるようにと願ってくれているこのひとの言葉の魔法なのか。彼のはにかみ交えた笑い顔を見逃さず、和やかな唄のような音色聞き漏らさず――こうなったらもう、いまさら引き返せるはずもない。)そうだ、ライは詩を朗読していたら?意味がちゃんと、私にも理解できればいいんだけど。(ただでさえ勉学苦手な性質、彼がはらはらとつむぐ言葉たちの深意を汲めるか怪しいところだが、まるきりへんてこな詩篇の場合もあり得るんじゃない?何せここは不思議の国、アリスだってためしに詩を暗誦したら、まったく別の言葉が出てきちゃったでしょ。ちょっとだけそう思っちゃったけれど、さてさて茶会ではどんな詩が聞けるだろう。足元に陽射し浴びた紫花が見えると「食い意地張ってるよね」ふたたび青に戻る花、色の見え方は角度でも変わるのか。かのひとのかんばせ綻べば、軟風に乗るかぐわしい香がその囁き言葉を娘の耳に届けよう。かわいい。それだけでも大打撃なところ、爽やかな香りの一枝手折って向き合えば、このひとの言っている通りとてもまだるっこしい前半の言葉をしんと息詰めて待ち。もったいぶること、回りくどいこと、格好つけたがってるってこと――さあはやく!呼吸ができなくなるまえに。)――…っあ、りがとう、ございます…。きゃー!ああ、もう!ライが必要以上に焦らすから、心臓ばくはつしそうだよ。いまやっと息ができるようになった……でも私、ちょっぴりずるかったよね。(ごめん、この三文字は口にしないまでも「すき」を言わせた自覚は十二分。穏やかで長閑なひとだけれど、レディの扱いに慣れていないと言う割に、爆弾はゆるやかながら破壊力は大層抜群で。瑠璃に向く輝かしい赤茶はいま、鳶色を越えて、薔薇色にひかる――、)私がレディ・ローズマリー、じゃあライはミスター・ローズ?…うん、あの女の子に花瓶を用意してもらって、ローズマリーを飾るよ。ローズマリーと、一輪の赤い薔薇を。(両手で、まるで戴冠式のようにローズマリー受け取り、立ち上がってトピアリーの方へ。赤薔薇と白薔薇が交互に咲き誇るうつくしい草花の造形物認め、手折ってもバランスが悪くならない一輪を選ぼうか。)よし、これにしよ…って、った!…ありゃ、ついてないなあ。(美しい花には棘がある。ことわざならぬ文字通りの意で、指先にぷくりと赤い華。帰宅せよという合図だろう。)ライ、そろそろ帰ろ。良かったら明日は、ライの家にも案内してほしい、です。っね?(――戻ればちょうど三時のおやつの時間だろうか。シューズ翻せばかのひと誘い、花々の芳しさいつまでも鼻腔に残るような、不思議な安堵と摘んだ花抱いて。娘は知らない。ローズマリーの和名が、迷迭香―マンネンロウ―だということを。)
ユメ 2020/01/31 (Fri) 10:56 No.101
そうだね、詩が一番だ。詩にしても、言葉にしても、誰かに向けるのなら伝わらないと意味がないから……君にもペコラにも響くように。張りきって考えるとするよ。(応じる声は楽しげだ。彼女と友羊の両者に届くものは何だろう。そういう方面の考え事は特に好きだから、いつかを思い描いただけで心も一層軽くなるというもの。「今度は外に食べに行くのもいいね。美味しい料理の店が一杯あるよ」なんて、もしや花の前で交わすに相応しくない話題なのかもしれないが。彼女と自分にはこれが正解なのだと信じているからこそ、返す声は淀みない──ただ、そう。さすがに花を贈る時は何だか気恥ずかしかった。それでも彼女の反応を頂く頃には、ふと面持ちを素直に緩める。)あっはっは……ユメはかわいいね。けれど狡いだなんて言わないで。ユメの瞳が好きだっていう俺の気持ちは何処に行けばいいのかな──…、俺はただのしがない詩人だけど、君が贈ってくれる称号ならばありがたく頂戴しよう。ドードーさんと一緒に花瓶を選ぶのも楽しいよ。君の傍に在れるしあわせな花を、どうぞよろしくね。(軽やかに、穏やかに、そんなことを問う自分の方が余程狡い気もする。彼女の手へ花が渡る様を見届けて、ひそりと安堵の息を吐きもした。溜息に在らぬ呼気は爛漫の陽光へ瞬く間に溶けゆきて、見送ることもなく膝を伸ばし彼女の後に続いた。トピアリーを彩る薔薇を、その日の花を摘む乙女をのんびり見守っていた面持ちは、あがる声に眸を丸くして、)……ああ、これは大変だ。大丈夫かな。(白い指先に浮かぶ紅。薔薇の色彩と同じ並びながら、此方は眉を下げてしまうコントラスト。ただ、自分が騒いだところでどうにもならぬとも解っている。)うん、そうだね。レディの手に傷痕が残ったら大事だ。ドードーさんに看てもらおう。(彼女の促しに笑って頷いて、来た道を引き返すべく足先の向きを変えた時だった。)俺の家。……ああ、実は……俺、自分の家って持ってなくって。と言っても、俺が好きでそうしてるんだ。日毎に友だちの家へ順々にお邪魔してさ。そう、昨晩はペコラの家に泊めてもらっていた。紹介も兼ねて、ユメと一緒に誰かの家に泊まりに行くのも楽しいかもね。(ファンタスマゴリアに於いて、定住の家屋を持たぬ者は珍しくない。だから安穏と語る姿に嘘も隠し事もなく、浮かんだ傍から"いつか"の像を音に変えもした。「どうかな?」などとも添えて、応えを受ければ漸う帰路へ踏み出すだろう。)──…よし、ユメ。いこうか。(その名を呼べる、瞳を合わせて隣を歩けるしあわせに、面持ちは空に似て晴れて澄む。尽きぬ言葉や喜びを、帰り道や帰りついた家でも分かち合えたらいい。溢れるものは数多。太陽の下、新しきものは生まれぬと誰が言ったか。新しいものなど何ひとつなく、今あるものは全て嘗て在ったものだというのなら──記憶が過去を振りかえり、太陽の運行を遡り、古書を捲れば君に贈ったのと同じものが文字で記されているのだろうか。それならそれで自分もそうしよう。彼女の家に再びお邪魔して、懐の深い袖に入れていた筆記帳に"ユメと一緒にやりたいことリスト"をなんてものを、緩い筆記体で連ねようと思う。いっそ君の姿を見出せるくらいに──そうだ心の思いは原初、文字で記されたのだから。)
トロイメライ 2020/01/31 (Fri) 21:19 No.107
(伝わらないと意味がない、なるほど詩篇を考える方からはそういう意図や、作意があるのかと娘はふんふん頷こう。何せ勉学の方面にて、むつかしいことを積極的に解決するような脳は持っていないから、こちらのことも考えた上での一篇ができるのならそれはそれは重畳と。料理の、おいしい店。「ペコラさんのパイより、おすすめ?」聞いた上でどちらも頂きたいと希望するのは欲張りだろうか、何よりこのひとの紹介だから行きたいのよって、それを口にする機会もきっとあるはず。誤魔化す様にきゃあと喚いた娘のずるい誘導にも真心こもった返答くれるひとだから、娘の方がまんざらでもなしに。)…どこにもやらない。ライのその気持ちは、私が受け取ったってことにするから。…しがない詩人さんを、薔薇の名前で呼ぶのは私だけだよね?それってちょっと特別な感じがして、心がくすぐったいんだもん。とくべつ。(だからたまに、秘密を共有するみたいに呼んでも良い?って瑠璃はぱちぱち、瞬いた眸に茶目っ気浮かばせて。帰ったらまず花瓶選びからだろうか、大切に持つ花は陽射しに青、紫、そして赤とひらひら花弁を揺らし相変わらず芳しさ漂わせ胸にあろう。トピアリーに差し込んだ指と言えば、ほんのちいさな紅だもの、)傷跡なんて。こんなの舐めてりゃ治っちゃいますよ。でもお花も、もうお帰りって言ってるみたいだから、今日はこれで。ドードーさんは何でもできるんだね?(花抱いた胸もドレスシューズもかのひとと共に向きを変え、あの少女には余計な手間かけさせまいと指先くちびるへ運べばぺろっと有言実行するが如く。心配せずとも、それで滲んでいた紅は止まろう。何度目かの瞬きそのひとへ向けたのは持ち家がない、というはなしの為。)つまり自宅がないの?へえ。ファンタスマゴリアだからこそって感じしますね。…ライは泊めてくれる友達が、たくさんいるんだ。楽しそう。私が行ってお邪魔じゃないなら、一緒にお泊り会させてもらうのもおもしろそうだけど…。(もしかして、寝ている最中に家が走り出したらどうしよう?なんて、ちょっぴり不安そうに言い足しながらも期待を胸に。帰り道にも数々ファンタスマゴリアの特徴見出せるであろうが、少しずつ慣れて来た娘は道々、やっと彼へ微笑み見せる余裕も出て来ようか。名前呼ばれ、掛けられた声に従いあゆめば、変化に富む街並み見渡しながら岐路に着き。たった14日間お世話になるだけ――とは言え、思いもよらない期間になるだろうとはここが不思議の国だから。かのひとの描くやりたいことリスト覗き、良ければ娘も項目を追加しよう。歴史は繰り返し、太陽の下新しきものは生まれぬのかもしれないけれど、いま間違いなく娘の胸にあるものは――ひとつの命賭けた“あたらしい”生活の、隠しようもないはじまりの音色。)
ユメ 2020/01/31 (Fri) 22:50 No.109
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