Mimsy Human's Story
昏く、冷たく、心を芯から凍えさせる絶望のどん底。孤独を知らしめる奈落の底。落ちて堕ちて墜ちきったその後に、待ち受けるものは何であるのか。
これが戯曲やおとぎ話ならば、恐らく救いの手とやらが伸べられるのだろう。物語の主人公には、逆境の後に幸いの階が必要不可欠だろうから。
けれど悲しい哉、ここは現実だった。無慈悲も不条理も簡単に罷り通る、塵芥のような命は呆気なく見放される、現の世界だった。僕とて物語の主人公なんかじゃない、何十億人と生きている人間のひとりに過ぎなかった。
「――誰か、助けて。」
切実な希求は、誰に拾われることもなく空気に溶ける。
応える声などあるはずもなく、ただ虚ろな木霊がその響きを真似るばかりだった。
そうだ、救いの手なんてない。
この耐え難い痛みを理解してくれる相手も、分かち合ってくれる心も。きっと、この世界の何処にも存在しない。
生きていても仕方がない。ならばいっそ自ら、この手で――
「――生を手放したいというのか」
“その声”は突如、脳内で呟きかけた続きを代弁するように降ってきた。寄り添うでも突き放すでもない、純然たる問い掛けの響きをもって。
誰なのか、どこから呼びかけているのか、なぜ心の声に気付かれたのか。そんな当たり前の疑問を抱く気力さえ、今はなかった。
嗚呼、そうだよ。生きていても仕方がない。こんな現実はもう沢山だ。
「行き着いた先が、地獄や悪夢であったとしても?」
声はなおも問うてきた。迎えに来た天使にしては随分冷たく、魂を奪う悪魔にしてはやけに淡々とした音で。
地獄? 悪夢? そんなの、僕が生きているこの世界のことじゃないか。
振り返るだに辛い記憶を一瞥して、静かに、確かに肯いた。
ここから居なくなりたい。消えてなくなってしまいたい。
心の呟きが投げやりなピリオドを打つと同時に、意識がゆっくりと遠のいていった。
絶望に苛まれていた自我が深く深く、微睡みに落ちるように沈下してゆく。
この世との決別を予期しながら、恐怖は微塵もなかった。どうしようもなく昏い安堵だけが、疲弊しきった心を優しく満たしてゆく。
ああ、やっと ――
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男性PCの正体は、女性PCと同じく
「現実世界(現代の日本)に生きている人間」です。生きていた、と言うべきでしょうか。
手酷い侮辱や裏切りを受けた、夢や希望を断たれてしまった、大切な誰かを喪った。理由は様々あると思われますが、何れにせよ「もう生きていたくない」と人生に絶望した男性PC。辛い現実を投げ出し、自ら命を絶とうとします。
そんな時、ふと囁きかける声がありました。現実との別れを示唆する、命令ではなく意向を問う形の静かな声音。驚く気力も失せていたか、幻聴と判断して適当に応じたか。或いは誰とも知らぬその声を信じて希望を託したか、最終的には頷いて身を委ねてしまいます。
次に目を覚ました時、男性PCは地下のおとぎの国“ファンタスマゴリア”に身を置いていました。
そして、
何もかもを忘れ去っていました。心を苛んだであろう痛苦も悲哀も、まるで初めから「無かったこと」のように。
失ったのは、そうしたマイナスな記憶のみではありません。いつ、どのようにしてここへ来たのか。どこで生まれたのか、自分は一体何者なのか、どんな風に生きてきたのか。現実世界で経験した全てが真っ白に塗り潰され、あるのはただ「自分はファンタスマゴリアの住民である」という意識のみ。
元々居た他の住民達とは異なり、生を受けた場所や育ててくれた人の顔も忘れているため「ここではない別の場所から来たのかもしれない」という自覚くらいは、恐らくぼんやりと芽生えていることと思われます。
けれど、それが何だというのでしょうか。
ファンタスマゴリアは楽しい国であり、何の不自由もない優しい世界。飢餓や貧困に喘ぐこともなく、個性豊かな住民達は温かく、いつも確かな幸せが約束されているワンダーランドです。
ずっと此処で暮らしていれば、もう二度と生の苦しみが彼を襲うことはありません。無自覚とはいえ棄ててしまった過去を思い出したいなど、況してや「もう一度帰りたい」などと、平和な日々に充足しているのなら早々願うことはないと思われます。
女性PCとの出会いはそんな平穏の中に突如舞い込んだ、いわば青天の霹靂。彼女と関わっていく中で心持ちに変化が生まれるか否かも、物語のスパイスとしてお楽しみいただければと思います。
時系列としては以下のようになります。
①男性PC:誰かの声に導かれ、記憶をなくしてファンタスマゴリアへ(本編前)
↓
②女性PC:男性PCの声を聞き、記憶を所持したままファンタスマゴリアへ迷い込む(自己PR)
↓
③本編スタート
尚、男性PCは①の時点で「ファンタスマゴリアで数ヶ月~数年程度過ごした」と知覚していますが、現実世界では1日も経過していません。Worldにおいて自由に設定可能としている「住んでいる場所や仕事、普段の過ごし方」については、来た時点で既に環境が整えられている状態です。
周りの住民も、男性PCのことを前々から知っているかのように接してきます。
*お願い
男性PCは現実世界での出来事について、一切の記憶を失っています。本ページの事前情報はあくまでPL情報にのみ留め、ロールなどで描写することはお控えください。願書内の「性格備考」「ロールサンプル」においても、ファンタスマゴリアに来る以前の出来事については触れられないようお願い致します。
ただ、過去の自分を明確に知っている・思い出す等の描写はできませんが、
記憶が曖昧なまま既視感を覚えること、それを台詞やロールに出して頂くことは可能です。例えば世界観ページにおいて「ファンタスマゴリアには存在しない」と明記してある事物(四季や天候、デジタル機器など)或いは昔から嗜んでいた趣味や特技について「(何処で覚えたのか分からないけれど)知っている気がする」などと描写することは構いません。こちらは男性PLさまに一任致します。
追加提出項目
- 【A】 本名(ふりがな)
- フルネームでお願いします。
- 【B】 現実世界での姿(400字以上、制限なし)
- 主に、男性PCが「生を手放したい」と願うに至った出来事についてのご説明をお願い致します。ファンタスマゴリアでの姿と異なった外見的特徴(眼鏡、髪の長さなど)がおありの場合はそちらもご記載いただいて構いません。
上記内容を願書項目に添え、ご提出下さい
※また、サイトトップにおいて対外的に「外見年齢」としている男性PCの「16~26歳」設定につきましては、現実世界における実年齢と捉えていただいて問題ありません。実年齢より大人びて見える、若く見える等の設定付けも16~26歳の範囲内であれば可能ですので、その場合は上記の【B】に実年齢についての記述を入れ込むことも任意としております。
※(01/12追記)男性PC秘匿情報に纏わるご質問は
こちら から回答致します。