Mome Wonderland

アリス! この他愛ない話を受け取って
その手でそっとしまっておいておくれ
思い出の神秘な絆の中に 子どもの日の夢が綯い交ぜになった辺りに
巡礼達が遠い国で摘んできた とうに萎れてしまった花冠のように

――Lewis Carroll “Alice's Adventures in Wonderland”
全国民に告ぐ。赤の女王の命令により今宵、城にて舞踏会を催すこととなった。陽が落ちた後、この国に住まう者は例外なく城へ集うように。背く者は打ち首に処す。以上だ。

 ナイトメアの声が常通り淡々と、拡声の術を纏って国全体に響き渡った。国民達は皆、諦めから成る受容の笑みを零しながら肩を竦める。赤の女王は時折、こうして唐突な命令をするものだった。主に彼女の持て余した退屈が、弾け飛びそうなくらい募っている時。
 西日の橙から黄昏へ、色を変えかけた空を仰いではたと気付く。陽が落ちた後、城へ集うように――…って、まずい。もうほぼ落ちかけているじゃないか。
 慌てて身支度を整える。下弦の月が輪郭を表し始める前に、女王の城へ向かわなければ。

 城門へ辿り着くとトランプ達の歓迎を受け、申し分ないダンスホールとなった大広間へ通される。既に集まっていた国民達が楽しそうに踊る中、僕を待っていたらしい赤の女王からお呼びがかかった。言葉より先に何故か、盛大な溜息でお出迎えされる。

まこと、どこまでも世話の焼ける娘よのう……舞踏会にふさわしいドレスの持ち合わせがないと申しおって。今、前庭の“物言う花園”で装いを整えさせておる所じゃ。

 物言う花園。女性を着飾らせることには目がない、喋る花々の集く場所だ。
 あの子には殊更突然のお達しだったのだから、そんなにすぐ準備が整わなかったのは頷ける。……というか世話が焼けるの何のと口では言いつつ、何だかんだでちゃんと世話を焼く女王も女王じゃないのか。

そなた何を考えておる?わらわはただ、城の舞踏会にみすぼらしいなりで現れられては興ざめゆえ下がらせたのみ。節介な花達のもとへ放り込んでおけば、それなりに映る見目にもなろう。ああまったく、妙な勘繰りはよせ。もう支度も終わる頃であろうから、とっとと迎えに参れ!

 一人で散々まくし立てられた挙げ句、追い立てられるように広間を辞した僕は、とりあえず言われた通り花園の方へ向かう。
 彼女の姿を探すまでもなく「あらまぁ、とっても素敵よ!」「ほらね、私達の見立て通り!」などと、花々の黄色い声が聞こえてきた。女王の言う通り、どうやら準備は終わっているらしい。

 いつものように名を呼べば、人垣ならぬ花垣の向こうから彼女が現れた。こちらへ向かってくるドレス姿を、両の瞳でとらえる。瞬間、――目を瞠ったまま動けなくなってしまったのは、月の魔法か何かだろうか。ただ着ているものが普段と違う、それだけなのに。
 頬に集まる熱を咳払いで誤魔化し、エスコートの手を差し出した。

 ファンタスマゴリアで一番高い時計塔が、宴のはじまりを告げている。僕と彼女の背を押すように、優しく鐘を鳴らしていた。

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鏡の森でのちょっとした事件から、更に5日ほど過ぎたある夜のこと。今回は、女王が催す舞踏会イベントです。
赤の女王はご存知の通り自由かつ我が侭なので、国民の都合など二の次三の次。「退屈だ」とは常に感じていますが、欲求不満が溢れ出すタイミングはまさしく気紛れ。思い立ったが吉日とばかり、即日に舞踏会や園遊会を開催させます。
ファンタスマゴリアに集う人々は全員参加が毎度のルールとなっていますので、勿論“アリス”と青年も強制的に参加させられます。

今宵は城の前庭にある“物言う花園”で、身支度を調え終わった女性PCのロール→女王の命を受け、男性PCが彼女を迎えに行く所からスタートとなり、以降の行動については「城の敷地外へ出ない」ことさえ守っていただければ、お二人の意向にお任せ致します。

尚、城の中では以下のスペースが利用可能です。

*物言う花園
 色とりどりの花々が咲き乱れ、見目も香りも華やかな花園。一つ一つの花が口をきく上、彼女(彼?)達は女性を可愛く美しく着飾らせることに命をかけています。あまり長く留まっていると、更なるお色直しや若い二人への冷やかしを受ける羽目になるかもしれません。
*大広間
 今回のメイン会場。踊る姿が映るほどに磨き上げられた床、宵の空から星を借りてきたようなシャンデリアの煌めき。楽団によるワルツの調べが優しく温かく、或いは静かにしっとりと、一曲ごとに趣向や雰囲気を変えてホールを満たします。踊り疲れたらバルコニーへ出て、夜風で涼みながら一休みするのも良いでしょう。
*中庭
 宵の月光が噴水に反射し、幻想的な光景を形作っている中庭。月下美人やムーンライト・フレグランスなど、宵に咲き匂う花の姿も見えますが、喋る植物は居ないため至って静かです。人の多いホールがあまり好きでない方、ゆったりと月や星を眺めながら語らいたい方はこちらへどうぞ。
*ラウンジ
 女王の趣味を反映させているのか、赤と黒を基調としたゴージャスなお茶会会場。“お誕生日じゃない日”のティーパーティーが今宵も開催され、着席と同時に美味しい紅茶とティーフーズ達がテーブルに現れます。賑々しく和やかな空間で、気取らず楽しいひとときを過ごしたいあなた方に。

【開始】女性 【場所】女王の城
【時間】夜 【期間】02/08~02/14